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復興庁発足1年 現場動かす対策急務 人手、資材乏しく
東日本大震災の被災地再生を担う復興庁が10日、発足から1年を迎える。津波被害からの住宅再建は遅れ、福島第1原発事故の周辺地域は住民の帰還に向け先行きが見通せない状態だ。政権復帰した自民党は予算拡充や組織改編に着手した。自治体の人手不足や資材費、労務費の高騰による入札不調などが顕在化しており、現場を動かす対策が急務になっている。
真新しい「福島復興再生総局」の看板が2日、福島市の事務所に掲げられた。復興局、環境再生事務所、原子力災害現地対策本部の出先機関を一つに統合(図T)。根本匠復興相は「これからが新たなステージだ」と幹部職員に力説した。東京、福島の2カ所に本拠を構える体制は、組織見直しの大きな柱。新年度予算では復興庁の司令塔機能を強化するため、省庁間にまたがる課題に対応する復興推進調整費を100億円計上し、前年度当初比で倍増させた。 復興財源、新年度の予算編成についても、財政出動に積極的な自民党カラーが鮮明になっている。民主党政権時代に「2011年度から5年間で19兆円」と定めた総枠を撤廃し、25兆円への大幅な引き上げを決めた。 被災地向け予算では、地域経済の立て直しや雇用創出への補助金を拡充(図U)。企業立地補助金、造船業者への支援事業を新たに盛り込み、中小企業の施設整備を促すグループ化補助金を継続して措置した。 福島関連は、さらに手厚い。原発事故で長期避難を余儀なくされた住民の生活拠点を形成するため、避難先の市町村に交付金を創設し、503億円を配分。放射線量が比較的低い地域向けにも人口流出に歯止めをかけるため、屋内運動施設、賃貸住宅などの整備に100億円を用意した。 復興庁を組み替え、財源は積んだ。一方で被災自治体は膨大な復興事業を抱え、予算消化に苦しむ。現場が直面する難題への抜本的な策は打ち出せていないのが現状だ。 集団移転や公営住宅の建設が進みつつある中、「国土強靱(きょうじん)化」という政府の公共事業拡大が復旧・復興の遅れに拍車を掛けかねないとの懸念も根強い。 首相官邸で1月29日にあった復興推進会議では、「建設職が不足し、生コンなど資材も現地調達できない。迅速で円滑な復興を図るにはいろいろ手を打たなくてはならない」(太田昭宏国土交通相)との意見が出た。 宮城県沿岸の首長は新政権の復興財源拡充などを評価しつつ「『ハコ』や『カネ』だけで最前線の課題は解決できない。復興の壁を丁寧に取り除いてほしい」と訴えた。
2013年02月10日日曜日
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