持ち主不明の覚せい剤「返す」 静岡地検が還付公告

(2013/2/ 9 09:30)

 事件の捜査で見つかった持ち主不明の押収物をめぐり、思わず首をひねりたくなるような還付公告が静岡地検に掲示されている。返還されるのは「覚せい剤」と「大麻」。法律上、押収物の返還は捜査当局の義務とされ、今回の地検の対応にも全く問題はないが、違法薬物が対象だけに、掲示を見た市民は「名乗り出る人なんて、いないのでは」と首をかしげる。
 この還付公告が始まったのは1月28日。静岡市葵区の駿府城公園内堀に面した地検出入り口西側の掲示板に張り出されている。いつどこで、どのように押収されたかなど、具体的には明らかにされていないが、覚せい剤取締法違反事件で押収した覚せい剤0・107グラムや注射器などと、大麻取締法違反事件で押収した大麻1袋をそれぞれ還付するとしていて、持ち主に今月12日までに名乗り出るよう求めている。持ち主が現れなければ、いったん国庫に納められて処分される。
 覚せい剤も大麻も違法薬物ではあるものの、今回の公告は刑事訴訟法で規定された正当な手続きだ。同法では、中身を問わず押収物の持ち主が不明な場合、検察官や司法警察官が14日間にわたって還付公告をするよう義務付けている。一般的に、被害者を特定しにくい女性下着の窃盗事件などで公告されるケースが多い。
 違法薬物の還付を公告する意味について、地検関係者は、事件の容疑者が「見知らぬ人から渡された」と主張するケースや、持ち主が研究目的などで許可を得て所持していたケースがあり得ることを指摘する。「違和感があるかもしれないが、勝手に処分することはできない」という。
 もっとも、今回の公告で名乗り出た人はいない。この地検関係者も「うっかり名乗り出たら、その持ち主も取り調べを受けることになる。自ら捜査当局に申し出たなんて、聞いたことがない」と“本音”をちらり。地検周辺を散歩していた60代男性は「これまで掲示に全く無関心だったけど、考えてみれば不思議。本当に持ち主が現れるのかな」と興味深そうに眺めていた。

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