質問なるほドリ:「PM2.5」って、どんな物質?=回答・比嘉洋
2013年02月05日
北京市の大気汚染について-微小粒子状物質“PM2.5”とは-(2012年2月7日北京日本人会・中国日本商会共催「生活安全セミナー」における在中国日本国大使館経済部岡﨑雄太書記官講演資料から抜粋)
<NEWS NAVIGATOR>
◇花粉症マスク通す粒子 高濃度なら、ぜんそく・肺がんリスク
なるほドリ 中国の大気汚染で日本にも流れてきている「PM2・5」って、どんな物質なの?
記者 空中を漂うとても細かい微粒子(びりゅうし)のことです。「PM」は英語の「Particulate Matter」の略で、日本語では「微小粒子状物質(びしょうりゅうしじょうぶっしつ)」と言います。「2・5」は直径2・5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)以下の物質であることを意味しています。
Q いつも中国から日本に来ているのかな。
A 日本国内でも都市部を中心に、ディーゼル車の排ガスなどから発生しています。海洋研究開発機構(かいようけんきゅうかいはつきこう)の試算によると、中国・四国・九州地方では、1年間に観測されるPM2・5の5割程度、関東地方は約3割が中国から運ばれていると考えられています。
Q 体に入るとどんな影響があるの?
A とても小さいので肺の奥深くまで入り込みやすく、たくさん吸い込むと、ぜんそくや肺がんになりやすくなります。さらに、不整脈(ふせいみゃく)や心筋梗塞(しんきんこうそく)のリスクを高める可能性も指摘されています。一般的に、髪の毛の太さは約70マイクロメートル、花粉症の原因となるスギやヒノキの花粉の直径は約30マイクロメートルですので、PM2・5がとても小さいことが分かると思います。
Q 規制はないの?
A 米国では97年、欧州連合(EU)では08年に大気中濃度を規制する基準値を設けました。日本では東京大気汚染訴訟で07年8月に、国と原告のぜんそく患者らが和解した際、原告側が国に基準を作るよう求めました。これを受けて環境省は09年9月、大気中の濃度を年間平均1立方メートル当たり15マイクログラム以下、1日平均同35マイクログラム以下とする基準を作りました。現在、全国556カ所で観測が続けられていますが、基準値を超えることがまれにあります。
Q どれくらい心配すればいいのかな。
A 花粉症対策用のマスクは目が粗いため、PM2・5は通り抜けてしまいます。国立環境研究所(茨城県つくば市)の菅田誠治主任研究員は「健康な大人が心配する必要はないが、呼吸器系の疾患がある人は、高濃度になりそうな日の外出を控えるなど、注意してほしい」と呼び掛けています。
環境省は全国223カ所で実施している大気汚染物質の観測データをウェブサイト「そらまめ君」(http://soramame.taiki.go.jp/)で公表しています。また、九州大学応用力学研究所が運用している大気汚染微粒子飛来予測システム「SPRINTARS」(http://sprintars.riam.kyushu−u.ac.jp/)では、大気の動きなどから1週間先までの飛来量を予測し、毎日更新しているので、参考になります。(科学環境部)
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