原子力規制委員会は原子力発電所の新安全基準の骨子案を公表した。炉心溶融など深刻な事故への対応策を手厚くし、想定外の自然災害やテロ攻撃にも耐えるよう安全設備を多重化する。活断層の真上に重要設備を置かないルールも明確化した。
要求が過大だとの意見も電力業界にはあるが、東京電力福島第1原発事故の教訓を踏まえ、日本が世界有数の地震国であることを考え合わせれば安全基準の厳格化は避けられない。
基準を満たすには原発の設備の大規模な改修が必要となる。原発を保有する電力9社合計で約1兆円の費用がかかるともされる。
しかし放射能を除去するフィルター付きベント(排気)装置や電源ケーブルの不燃化などの対策は欧米ではとうに実施済みの国がある。日本の電力会社はこれらの対策を先送りしてきた。「世界最高水準の安全」の実現には必要な投資といえる。
ただ新基準が求める設備のなかには完成まで3~5年かかるものがある。例えば主にテロ対策として原子炉建屋から離れた場所に設ける「第2制御室」がそうだ。
すべてがそろうまで原発を再稼働させないとなると、運転停止が長期に及び、電力会社の経営に深刻な打撃を与える。加えて電気料金の上昇や化石燃料の輸入増加が止まらない。国民生活や産業活動への悪影響も広がる。
安全性を高めることは何より大事だ。その一方で設備によっては必ずしも再稼働の前提条件にせず、完成まで猶予期間を設ける道も開くべきだ。
事故を二度と繰り返さないため再稼働時に必要不可欠な設備は何か。少し待ってもそれほど大きなリスクをもたらさないものは何か。専門家がよく議論して判断してほしい。無論、なし崩しの再稼働を避けるため猶予の根拠はしっかり説明する必要がある。
骨子案作りの過程では様々な異論も出た。活断層を判定するにあたり40万年前の古い地層まで遡ってみる必要があるのかという議論はその一例だ。規制委は骨子案への意見を広く募り、4月ころにより具体的な基準案としてまとめる予定だ。米仏の規制機関にも説明するという。
6日に国会で答弁した田中俊一委員長は「多様な意見を聞き独善的にならないよう留意する」と話した。ぜひそうあってほしい。
東京電力、原子力規制委員会、福島第1原発、原子力発電所、田中俊一
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