安倍首相:「北方領土」解決に意欲 4島一括では隔たり
毎日新聞 2013年02月08日 01時48分(最終更新 02月08日 02時43分)
安倍晋三首相は「北方領土の日」の7日、東京都内で開かれた北方領土返還要求全国大会であいさつし、領土問題の解決に改めて意欲を示した。日露外交の立て直しに本腰を入れるため、今月下旬には森喜朗元首相を事実上の首相特使としてロシアに派遣する。一方、ロシアにも経済を中心に関係強化を図る機運が高まりつつある。だが、領土問題で両国が納得できる解決策を見いだすのは容易でなく、進展が図れるかは不透明だ。
首相は大会で、「6年前の大会で、北方領土問題を解決し、平和条約の締結に全力で取り組むと述べた。決意にいささかも変わりはない」と強調した。
日本政府は、北方四島の日本への帰属を確認できれば、返還時期などについては柔軟に対応する方針。首相は北方領土問題のトゲを抜き、「最も可能性に富んだ2国間関係の一つ」と位置付ける日露関係の発展につなげたい考えだ。
ロシアが領土問題の最終決着に意欲を見せていることも、首相の意気込みを後押ししている。昨年12月、首相と電話協議したプーチン大統領は「平和条約に関する作業を活発化するよう、両国の外務省に指示を出す必要がある」と指摘。外務省幹部は「会話のキャッチボールになっている」と期待を寄せる。
4日にモスクワを訪問した河相周夫(ちかお)外務事務次官は、8カ月ぶりとなる次官級の戦略対話に出席し、北朝鮮問題での連携を確認した。ともに国境を接する中国の台頭を警戒する思惑でも、日露の利害は一致している。
プーチン大統領と親交がある森氏は21日にプーチン大統領と会談する予定。首相としては、4月末〜5月の連休を軸に検討している訪露へつなげたい意向だ。
しかし、プーチン氏が1期目の大統領に就任した00年以降、ロシア政府の一貫した姿勢は歯舞・色丹2島引き渡しによる決着。4島返還が公式見解の日本との隔たりは埋まらず、「中身に一歩踏み込めば、厳しい状況に変わりはない」(日露外交筋)。
森氏は1月、BSフジの番組で、択捉島を放棄し、国後、歯舞、色丹の3島返還による解決に言及、菅義偉官房長官が火消しに走る場面もあった。ただ、かつて「3・5島返還」に言及した谷内(やち)正太郎元外務事務次官が内閣官房参与に就任。首相の盟友、麻生太郎副総理は外相だった06年、北方領土の面積等分論を国会で答弁しており、日本側にはロシアの軟化を誘いたい思惑も見え隠れする。