柔道パワハラ告発と全日本柔道連盟
全日本柔道女子の強化選手15名が、トレーニング中に暴力行為を受けたとして、日本オリンピック委員会に告発した問題を受け、2013年1月31日(木)、全日本柔道女子の園田隆二監督が監督辞任の意向を示した。
また、2月4日(月)には、同15名が全日本柔道連盟(以下、全柔連)に対して、「指導体制の抜本的な見直し」などを求める声明文を代理人を介して公表。
翌5日(火)、全柔連の吉村和郎強化担当理事、及び全日本柔道女子・徳野和彦コーチが一連の問題の責任を取る形で辞任の意を表明している。
その一方で、告発側の女子選手15名は日本オリンピック委員会の意向で氏名が伏せられており、一向に素顔が見えてこない。
また、15名という人数の真相にも疑問が残る。15名という人数が、でっち上げの捏造なのか真実なのか?当事者以外の我々には、まったく知る由も無い。
これでは選手たちの訴えも真実味を帯びて伝わってこない。世間に姿を見せ、改めて暴力行為の具体的な内容を明らかにすべきではないか。
現状は、ITの「なりすまし」のように覆面をかぶった状態で、全柔連に対して一方的な非難・中傷を繰り返す状況は、異常とも思われる。
この不透明な状況では、誰が告発者なのかといった疑問を選手・関係者を含め多くの人が抱き、疑心暗鬼で組織内の人間関係をも壊しかねない。
本当に暴行・暴力といわれる程の厳しい行為が行なわれたのか? それは、真実か? 園田前監督は、「暴力という認識はなかった」と断言している。
指導上に頭をたたいた、尻をけった程度のことまで暴力となるのか。ここの判断は難しい。しかし、体罰は絶対に許されるべきことではない。
告発自体に問題はないが、告発者(当事者)の名前を隠さなければならない理由が存在するのか?
名前が出ることで、何か不利益が生じるのか?全柔連という組織全体の責任追及をしているのであれば、なおさら名前は公表すべきだ。
告発という行為には、自己責任への自覚が必要だ。告発者は被害者であるが、手段・方法によっては加害者にもなり得る。
なぜならば、人の人生をも変えてしまう多くの犠牲者(辞任者)が、出ている現実を真剣に受け止めなければならないからだ。
選手思いで実直な徳野コーチまでをも辞任に追い込んだ今回の騒動そのものが非情に思える。
また、今回の告発は選手だけの力で行なわれたものではなく、これを利用した第三者の利害関係者が関与し、用意周到に進められたと推測される。
日本オリンピック委員会の橋本聖子理事は、「選手には訴えた責任がある。あまりにもプライバシーを守りすぎると改革ができない」とし、告発を行なった選手たちの名前を公表し、表に出てくるように促している。(2013年2月6日現在)
暴力行為の有無を論じて、全柔連を非難することはたやすいが、それよりも今回の騒動をいち早く収めることこそ急務と言えるのではないか。
強化担当理事を辞任した吉村氏も、「一連の騒動が早く沈静化して、半年後に迫った世界柔道選手権大会で選手が100%の力を出せるようになってほしい」とコメントし、速やかな事態の収拾を求めている。
くしくも、昨年のロンドンオリンピックにおける全日本柔道女子のメダル獲得数は、公開競技として実施された1988年のソウルオリンピック以降、24年間で最低(最少)となる3個であった。ここに、今回の問題点と原因が隠されている。
オリンピック敗退の責任は選手、監督・コーチいずれにあるのか。男子の篠原監督は、自ら責任を取り身を引いて、監督を辞任した。
女子は選手側から、監督の暴力を理由に辞任を求めたが、これは責任をすり替えていないか?ただし、この問題の発端を起こした選手は、オリンピックの代表選手ではない。
歴史的敗退を喫した日本柔道が、再び世界にその存在感を示すためにも、今年8月に開催される世界柔道選手権大会で、ひとつでも多くの実績を残してほしい。
4年後のリオデジャネイロオリンピックを見据えるならばなおのこと、偏った報道に惑わされることなく、粛々と日本柔道再建への道のりを進むべきではないか。
その取り組みと改革に注目しつつ、日本柔道の飛躍に期待したい。
柔道チャンネル報道編集チーム