奈良市:環境部職員の出退勤、静脈認証でサボり監視−−4月導入へ
毎日新聞 2013年02月08日 大阪朝刊
奈良市は7日、廃棄物処理などを行う市環境部職員の出退勤時のチェックに静脈認証のシステムを4月から導入すると発表した。業務中に職場を抜け出す中抜けや勤務時間の不正な申告を防ぐのが狙い。総務省公務員課によると、同様の例は「聞いたことがない」と話している。
奈良市環境部職員の勤務を巡っては、06年、病気を理由に5年間で8日間しか出勤しない職員がいた問題が発覚。07年12月には勤務中の中抜けで職員5人が懲戒処分を受け、職員の勤務実態を正確に把握できるシステムの導入を求める声が庁内で上がっていた。
さらに、市が昨年5月、全職員を対象に実施したアンケートでは、環境部で「残業をしていないのに、同僚に頼んでタイムカードを不正に打刻し残業手当を受給した」との報告があった。同年末にも、外部から環境部職員の中抜けの指摘があった。
現在、奈良市では全職員の出退勤は、IDカードを機械に通して管理している。これに加えて、ごみ焼却施設「環境清美工場」(奈良市左京5)に勤務する環境部職員については、手のひらを機械にかざして認証を得るシステムを導入する。また、同工場敷地の入り口と出口、駐車場の計3カ所程度に監視カメラも設置する予定。
静脈認証のシステムは、個人個人で異なる指先や手のひらの静脈のパターンを読み取り、本人確認を行う技術で、人体の特徴を利用する「生体認証」の一つ。銀行のATM(現金自動受払機)などで導入が広がっている。変えることのできない生体情報を扱うため、いったん情報が漏えいした場合の対応などを問題点として指摘する声もある。
仲川げん市長は7日の定例記者会見で「今まで環境部職員の仕事ぶりには(外部から)厳しい意見をいただいてきた。(新システムを)抑止力にして、職場離脱を撲滅することが大事だ。年度内には職員を対象に、意識を変えるための研修も行いたい」と述べた。
これに対し、環境部の現業職員らで作る市従業員労働組合の大橋浩治執行委員長は「認証は気持ちのいいものではない。まるで犯罪者扱いだ。お金もかかる。管理を強化するなら他にもっと方法があるのでは」と反発している。【釣田祐喜】