長崎高齢者施設火災:内部「迷路のよう」 密集地に悲鳴
毎日新聞 2013年02月08日 21時53分(最終更新 02月09日 00時57分)
介護が必要なお年寄りが暮らす施設でまたも悲劇が起きた。8日夜、長崎市内で発生したグループホーム火災。現場は傾斜地にある住宅密集地で、救助活動は難航、複数のお年寄りが亡くなった。
「1階中央部分から炎が上がっているのが見えた。こちらに燃え移るか心配だった」。グループホームの近くの病院に勤める女性職員は出火直後の恐怖を振り返る。グループホームの隣に住む会社員男性(55)は、グループホームの窓越しに中で真っ赤な炎が燃え上がっている様子が見え、高齢女性の「キャー」という甲高い悲鳴を聞いた。
また、近所の女性は「施設の近くで職員とひなたぼっこをしているおじいちゃん、おばあちゃんの姿をよく見かけていたのに……」と声を落とした。
現場は観光地として有名なオランダ坂沿いにあり、周辺の道幅は狭い。このため消火活動に手間取ったとみられ、東山手町自治会長の野村孝一さん(60)は「施設の裏手はがけで、通路は狭い。消防隊員がなかなか入れないようだった」。近くの病院職員も「向かいのビルから誰かが消火活動していたが、うまく火を消せないようだった」と話した。
ベルハウス東山手は06年4月にグループホームの指定を市から受け、定員は9人。家族が入所したことがあるという男性は施設内部について「迷路みたいなつくりで、エレベーターもない。高齢者には大変だなと思っていた。廊下は人一人がやっと通れるぐらいの狭さだった」と話した。
◇防火対策、後手に
福祉施設の防火対策に関しては大規模火災のたびに不備が指摘され、スプリンクラーの設置義務も含めてその後に国が改善に動き出すなど、対応が後手に回っている。
06年1月に7人が死亡した長崎県大村市のグループホーム火災を受け、09年4月に消防法が改正され、延べ床面積275平方メートル以上の施設にはスプリンクラー設置を義務づけた。
しかし、10年3月には札幌市の認知症グループホームで火災が起き、7人が死亡した。スプリンクラーの設置対象外の小規模施設で、スプリンクラーや自動的に119番通報する火災通報装置はなく、職員も少ないなどの問題が浮上。関係者からは設置費用などの課題が指摘された。
これを受け、厚生労働省は同年6月、認知症グループホーム向けの防火設備の助成拡大を決定。小規模施設もスプリンクラー設置の補助対象に含めたほか、火災報知設備についても補助対象とした。