現在、「重油を作る藻類」であるオーランチオキトリウムの研究が進められています。
当初は、日本のエネルギー問題はこの藻で解決し、日本は産油国となると騒がれました。現状はどうでしょう。
最新の発表では、2020年頃には1万4千トンの重油を生成する予定となっています。(毎年約1.9億トンの原油を輸入しています。)
これだけ開発のスピードが遅いのは、オーランチオキトリウムには以下の問題点があるからです。
@ | 現在の技術では、1リットルの重油を生成するのにやや楽観的に計算しても約250円の費用がかかるとされています。 (これはボトリオコッカス等、光合成藻類から重油を生成する費用であり、オーランチオキトリウムから生成する費用はまだ算定されていません。大体の目安として参照して下さい。なお、最初は火力発電に使用するため、培養したものをペレットにして使用すればよく、精製費用が不要となります。) |
A | 日本全体の年間石油生産量をオーランチオキトリウムで賄う場合、生産効率を最大化したとすると約2万ヘクタールの培養面積が必要です。 |
B | オーランチオキトリウムの培養には、餌として有機物が必要であり、それをボトリオコッカスという同じく藻類を培養して餌にしようという想定があります。しかし、光合成を行うボトリオコッカスで全ての餌を賄った場合、最大で20万ヘクタールという大規模な培養面積が必要となります。 |
問題点があるために、これだけ有望な産業になると考えられているのに、民間企業も本腰を入れて参入してきません。では、国なら問題点を解決できるのでしょうか。
@の問題には培養施設の建設費用が含まれています。建設費用を国で負担すれば良いのです。オーランチオキトリウムの培養には、雑菌が混入しないように機密性も求められるため、屋外施設ではなく10階建てのビルにすれば、Aの問題も10分の1になります。
では、そんな施設をどこに建設するのでしょうか?
東日本大震災では、大型の施設ほど基礎工事がしっかりしていたため崩れずに残り、屋上で救助された方もいらっしゃいました。また、地震の10%は日本とその近海で起こると言われており、北海道南西沖地震(奥尻島地震)、阪神・淡路大震災、新燃岳の噴火、東日本大震災等から、日本全体が地震の活動期にあるとする研究者の方もいらっしゃいます。
それならば、沿岸部の土地を買収するか、もしくは海岸を埋め立てて、海側に窓の無い10階建てのビルを作り、巨大な堤防にしてはどうでしょうか。堤防の建設であれば公共工事費での支出となるため、問題点@の費用からは外されます。国民の皆様の安全にも繋がります。
そもそも、利用料収入のある高速道路等とは違って、堤防は収益性がありませんので、現在の限られた予算の中では、巨大津波に対応できるような堤防の建設は困難です。「儲かる堤防」を建設する必要があるのです。
大都市の海岸は既に工業団地化されていることも多いので、景観の問題はあまりありません。むしろ、海岸の工業団地にある石油タンクや薬品工場等が津波で破壊されれば、内陸部の復興にも支障をきたすことになります。
10階建てビル(100m×100m) → 400億円で積算 → 年間10万トンの重油を生成 →
2億トンの重油の生成には80兆円必要 → 石油の代金として外国に支払っているのは10兆円
計算上は9年目以降は純利益となるように見えますが、この計算式は単純化されています。重油と石油では単価が違いますし、埋め立て費用は水深によって異なり、どれくらいの地盤強化を行うかで費用も変わります。
石油は、その分留により、天然ガス、ナフサ(ガソリン)、灯油、軽油、重油、潤滑油、アスファルト等へ精製されます。オーランチオキトリウムから生成されるのは単価の安い重油であるため、ガソリン等へ変換するには更に変換費用がかかることになります。
しかし、ここで重要なのは、堤防として公共工事費として支出する場合は、問題点@の費用の大部分を占める設備建設費は0円ということです。
公共工事費は建設国債で賄うとして、十分な利益として戻ってくると考えられます。
東海・東南海・南海地震はいつかやってきます。東日本大震災と比較できないくらいの被害が予想されています。
きちんとした対策を行わず、再び犠牲者を出してしまっては、東日本大震災で亡くなった方々に申し訳が立ちません。
なお、巨大堤防の1階部分には海浜公園へ続くトンネルがあり、その公園の先が海となるイメージとなっています。
計算上分かりやすいように「100m×100m」としましたが、幅を50mとした場合、その延長は400kmとなり、東京から名古屋までの距離に相当します。想定被害が高い地域順に建設していく予定です。
沿岸部に巨大な施設を建設するのは、地盤沈下や環境面で不安だと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
内陸で、地盤がしっかりしていて、地代も安い地域に建設した場合でも、上記の計算式は変わらず、埋め立て費用等が不要になるため、更に建設費用が下がることになります。しかし、内陸部にビル群を建設するよりかは、沿岸部に建設した方が堤防代わりの施設になります。
東京都の港南は、ほぼ全域が埋立地であり、既に巨大なビル群が建設されています。埋め立てや地盤強化の費用を上回る収益が見込まれる場合は、埋め立ては可能なのです。
いろいろなケースを想定していますので、最終的には地域の住民の方々の意見を参照しながら決定していきたいと考えています。
最後にBの問題ですが、餌のボトリオコッカスは1リットル17セントという報告もあり、光合成を行うため培養施設も安価で済むのですが、広大な土地が必要になります。日本の耕作放棄地は約40万ヘクタールとも言われていて、これを利用する想定ですが、できれば耕作放棄地は農地に戻って欲しいと思っています。
代替有機物として、例えば、牛乳や堆肥、海水淡水化、噴火堆積物、パナソニックの人工光合成システム、EM(有用微生物群)等、いろいろな可能性を検討しつつ、将来の大規模生成に備えたいと考えています。
輸入している石油の約10%が重油として火力発電等に使われていますので、まずは、この10%を国内で生産することを目標とし、更なる技術革新を目指したいと考えています。
電力会社へ販売する予定の重油の価格次第ではありますが、電気料金の値下げにも繋げていきます。