ソロスは円を買い煽るか? ─それはないだろう
点数稼ぎか否かは知らないが、竹中さんがジョージ・ソロスに電話して、円安誘導ではなくドル高是正だと説明したそうだ。大英帝国イングランド銀行に立ち向かってポンドを売り浴びせて、一相場で2兆円儲けたと言われたクオンタム・ファンドを率いるジョージ・ソロスだ。円を買い上がって円暴騰相場などを演出されたらたまらない。それを防ぐために竹中さんは電話したのかどうか知らないが、ジョージ・ソロスはハンガリー大学の教授だから、竹中さんは同じ教授仲間で話し会ったという気かもしれない。
ソロスの手口はポンドといい、マレーシア・リンギといい、常にカラ売りから入って売り浴びせて儲ける、というやり方だ。円を買い煽って儲けるということはしないだろう。
それに、もともと彼の運用哲学はナチス支配下のハンガリーから英国に亡命した際に名門LSE(ロンドン・スクール・オヴ・エコノミクス)でカール・ポパーの可謬論(ファラビリズム)を体得し、「人は市場で誤りを免れ得ない。故に市場はねじれ現象を起こす。だが、ねじれた物はもとに復元するものだ」という市場観が基礎に在る(詳細に関心がある方は、拙著「投機学入門」講談社文庫、2007年刊、第6章「ヘッジファンドと可謬論」御参照)。
ねじれた物がもとに戻る、その復元力を利用して儲けるのだ、というのだから「円は安すぎるという捻じれ現象がある」「それを在るべき状態に戻しているだけだ」という市場観がソロスになければ、円買いには手を出してこない。彼が英ポンドやマレーシア・リンギをカラ売りして売り浴びせた際は、「元々高すぎたというねじれ現象だった、それが本来の状態に戻っただけだ。言わば自然発火だ。それが悪いと言うならば、可燃物をそこに放置しておいた者が悪い」とうそぶいた。マレーシアのマハティール首相の名ざしの非難に対しては沈黙を守って何も語らなかった。1997、8年のことだった。その頃、円は148円の安値を付けたが、彼は円には手を出さなかった。
ドルは09年の99.63円、ユーロは09年7月の133円くらいまでは、誰が見ても「自然な状態」だろうし、安倍さんが第1次安倍内閣の時は、円は120円前後、日経平均は18,261円の大天井を付けた後だが、17,000円前後だった。彼の脳裡にはそれがあるかもしれない。
|
 |
 |
▓ 山崎 和邦
慶應義塾大学経済学部卒。野村證券、三井ホームエンジニアリング社長を経て武蔵野学院大学名誉教授に就任。投資歴51年に及び野村証券時代の投資家の資金を運用から自己資金で金融資産までこなす。
|
| |
|
|
| |
|
|
|