2008/2/27: メールで情報“共有”するのはいい加減やめにしようよ、とか言ってみるテスト [情報のストックとフロー]
ストックとフロー三題噺、その3。告白します。私は『情報共有』と称して一斉同報的メールを送りまくられるのがどうも苦手です。
むかしむかし、ロータス ノーツを布教していたころ、よく『3つのC』というマントラを唱えていました。『3つのC』すなわち『 Collaborate, Communicate, Coordinate(順不同)』。
- Collaborate は共有の心。共有したい情報を共有場所(Repository)にアップデートしながら溜めておいて、いつでも必要なときに見渡したり(View)、探したり(Search)して、引っ張り出せる(Pull)ようにするべし。これすなわち文書データベース。
- Communicate は伝達の心。相手になにかして(Action)もらいたいタイミングで、そのきっかけ(Trigger)になるように、共有場所にある必要な情報への参照(Link)を添えて送りつけて(Push)知らせる(Notify)べし。これすなわち、電子メール。
- Coordinate は調整の心。定型業務(Workflow)は、情報の蓄え方(Stock)と流し方(Flow)のパターンとルール(Business Logic)を仕組みとして自動化(Program)して、スムーズに流れるようにすべし。これすなわち、スクリプティング。
「ホワイトカラーが情報をやりとりする知的生産を助けるには、この3つのCを実現するための技術要素として、文書データベース、電子メール、そしてそれらをシームレスに組み合わせることができるスクリプティング環境がが必要です、だから、それを備えているクライアント/サーバー型統合環境であるロータス ノーツを買ってください」というのが当時の主張なんだけど、まあ、時代や世間の情報環境もずいぶん変わって私も十分オトナになったので、ノーツを買ってくれとは言わないよ(エンタープライズITのアスベストとか言われてるしね)。でも、このマントラは今でもとても有効だと思ってる。メールは情報を“共有”するツールじゃなくて“伝達・告知”するツール。だから、頼むから『情報共有』と称して一斉同報メールを送りつけるのは、やめてくれ。
メールで『共有』された情報は、送られたその瞬間に作者の手を離れて更新されなくなる死んだ情報。後になって参照しても古い内容になっているかもしれないし、後からチームに参加した人は過去にどういう情報が『共有』されていたのか知るよしもないし、その情報をきっかけに巻き起こる貴重な知識のチェーンであるコメントもccされなければまったくわからない。だいたい、受け側にとって決して必要じゃないタイミングでどかどか大量の情報を送りつけられてもアテンションはそっちに行かないので伝わらないよ。
今は、自由に更新できる文書を一覧性よくまとめておける Wiki という仕掛けも、時系列のジャーナル文書を整理して閲覧してコメントをつけられる Blog という仕掛けも、それを串刺しで探せる検索エンジンという仕掛けも、更新され続ける『生きた』文書への参照をメールに貼り付けて送ることができるハイパーリンクという仕掛けも、全部タダで使える恵まれた時代なんだから。ブラウザとメールソフトとURLによるパーマリンクが理解できるだけのリテラシーがあるのなら*1、情報のフローもストックもなにもかも1970年代のテクノロジーである電子メールに任せきってしまうのはもうやめて
- ストックして共有・更新する情報はBlogやWikiで
- それらを必要に応じてタイムリーにフローさせるのはリンク入りメールで
というところから、始めてみませんか?きっと、気づかないうちに組織の生産性がぐんぐん上がると思いますよ。
*1: そのリテラシーがないようなおじさんホワイトカラーまでも巻き込んだ情報共有環境を作るための20世紀的仕組みがノーツだった、とも言える。
Takahiro Shionumaさんのコメント:
Plaxo見ていただけなんですけどねえ。