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» 2012年12月07日 09時00分 UPDATE

外れ馬券は経費か否か 担当弁護士に聞く注目の裁判

競馬愛好家の会社員が馬券配当で得た所得を申告しなかったとして所得税法違反に問われた裁判が、競馬ファンらの間で大論争を巻き起こしている。

[ZAKZAK]
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 競馬愛好家の会社員男性(39)が馬券配当で得た所得を申告しなかったとして所得税法違反に問われた裁判が、競馬ファンらの間で大論争を巻き起こしている。焦点は外れ馬券を経費と認めるか否か。男性の担当弁護士は「もし敗れるようなら、怖くて誰も競馬なんかやってられないでしょう」と話す。

 男性は過去10年のレースデータを基に独自の予想ソフトを開発。オッズに対して掛け金の配分を変える多点張りの方式で、レースごとに黒字になるシステムをつくりあげた。大きくは勝てないが、毎レース確実に少しずつ儲ける方法で、競馬ファンにとってはまさに“夢の必勝法”だ。

photo 競馬ファン衝撃の裁判。どんな結末に(写真と本文は関係ありません)【拡大】

 男性はこのシステムで、3年間に約28億7000万円分の馬券を購入。計約30億1000万円の配当を得た。

 これに対し国税局は配当額から当たり馬券の購入額を差し引いた約29億円を一時所得と認定。約7億円を追徴課税した。

 男性を担当する中村和洋弁護士(41)は「まず『何所得』と見るかが問題。この方の場合、偶然の予想ではなく営利目的で継続的に購入し一定の回収率をあげている。内情はFXなどと同じで必要経費が算出できる雑所得。大量の外れ馬券を買わなければ、勝てない仕組みなのに、それがカウントされないのは法的に矛盾がある」と指摘する。

 何より男性の儲けは約1億4000万円。これに追徴課税が7億円とは払いようのない告発だ。

 「稼いだ分の5倍も払えというのは無理難題。税には課税対象者が負担できる『担税力』という前提があるのですが、本件は常識の範囲で考えても不可能な額。租税法の根幹に関わる告発です」(同弁護士)

 外れ馬券が必要経費と認められず、購入総額に課税される状況は、1億円負けて1000万円取り返しても課税されるということ。想像するに、この法律の前提は、配当を得た人間は外れ馬券を拾い集めて虚偽の必要経費を計上するだろうという『性悪説』。ただ、今回のケースのようにパソコンでの馬券購入なら売買金額は正確に把握されるわけで、これはもう法律自体が旧態依然と言わざるを得ない。

 「負けても払戻した分に課税されるなら、誰も怖くて競馬なんかできない。裁判の行方は、競馬界やファンにも大きな影響があると思います。個人的には必要経費云々より、いっそ非課税にすればスッキリすると思うのですが」(同弁護士)

 ファンにとってはもう1点、今回の件ではなぜアシがついたのかも気になるところ。

 日本中央競馬会(JRA)は「係争中の本件に関するコメントは致しかねますが、WIN5なども含めネット投票の情報を他に開示することは一切ありません」と回答。個人情報保護に厳格な銀行が開示するとも考えづらく、第三者による密告も「男性は知人にも競馬で儲けていることを話していない」(同弁護士)だけに何とも解せない。

 とにかく、「課税」の部分と「情報漏洩」の部分がクリアにされない限り、ファンの動揺が続くことは間違いない。JRAにとっても固唾をのむ“審議”となりそうだ。

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