NTTドコモがポケットベルサービス(現クイックキャスト)をこの3月末で終了する。1968年7月にスタートしているので、まもなく39歳になろうというところでの引退だ。携帯電話の前身である自動車電話が1979年に始まっているので、10年前先輩ということになる。携帯電話に移動通信の主役を譲るまで、長らく移動通信市場を牽引してきたので、本当にご苦労さんと言いたい。
通信分野では、主役の座が電報から電話に移行したのに続くパラダイムシフトといえる。移動通信の今後を考える上で、今回のパラダイムシフトは重要な意味を持つと考えられる。ポケベルが携帯電話に至るまでの単なる通過点であったのか、その遺産が携帯電話に引き継がれたのか――緊急特集「さらばポケベル」(全5回)で考察する。
読者の多くがポケベルのことをすっかり忘れていると思うので、最初にポケットベルサービスとは何かということで、簡単に説明しておく。ポケベルは受信専用の携帯端末で、各端末に電話番号が割り当てられていた(海外では特定の番号に電話をかけ、ピンコードを入力するところもあった)。
最もシンプルなサービスでは、図1のように、その番号に電話すると無線呼出装置などと呼ばれる制御装置につながり、そこから複数の無線基地局を経由してポケベルを呼び出す。ポケベル端末は自分宛の呼び出し信号を受信すると“ビー”とか“ピッピッ”と鳴らすという仕組みになっている。当初は、単に呼び出し(トーンオンリー)だけであったが、その後、電話番号から英数字表やカタカナ文字、定型文まで送信できるように進化し、最終的には、仮名漢字まで送信もできるようになった。
今回は、サービス開始当初のポケベルがどのようなものであり、その後いかに進化していったか概観する。なお、筆者は1990年以前にはポケベルに全くかかわっていなかったので、それ以前は資料ベース(「ポケットベル・サービス30年の歩み」NTTドコモ)になっている。ご容赦願いたい。
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