ラストショット

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横山さん、全会期終了後の会場にて。
おつかれさまでした!

(美術館 金澤韻)

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最終日、本当にたくさんの方にいらしていただきました。

サインを求めるお一人お一人と、対話を楽しんでいた横山さん。
ぜんぶの瞬間を大事にされていました。

最後はついに、盛況のため30分延長。
閉めるときには、私自身も名残惜しかったです。


広報デザインの服部事務所、展示デザインのトラフ、施工の東京スタデオ、芝ガールズとデータ処理ボランティアスタッフをはじめ、名前を挙げればきりがありませんが、たくさんの方のご協力によってよい展覧会ができました。ありがとうございました。
そして会場にいらしていただいた皆様。この展覧会を共有していただいて、ありがとうございました。心から感謝します。

そしてそして、なんといっても、横山裕一さん。
素晴らしい作品と素晴らしいパーソナリティの、横山さんだからこそ、こういうこと(素敵な展覧会)が起こりました。
横山さん、本当にありがとう。


今日の最後にすごくいい表情の横山さんを撮影できたのですが、コードを美術館に置き忘れてしまい・・・(涙)
明日アップします。
というわけでもう少々エピローグ続きます。

(美術館 金澤韻)

今日のデイリー横山裕一はTwitpicに横山さん本人から投稿されました!

http://twitpic.com/1y20v8


この調子で続いていくかな・・・。

ぜひneomangaをフォローして、デイリー横山裕一を受け取ってください。
http://twitter.com/neomanga


さて、展覧会ラスト2日、さすがにかなりの来場者。
リアルNIWAです。

ミュージアムニュースVol.79、私の前説と横山裕一インタビューが載っているのですが、配布終了しました。
せっかくなのでテキスト全文掲載しておきます。
これから展覧会をつくる意気込みと、横山さんのパーソナリティーが、平明に語られていて、気にいっています。

(美術館 金澤韻)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

未来的な景観、スタイリッシュな人物たち、疾走感溢れるコマ展開―独特の表現で高い評価を得る漫画家・横山裕一。その作品世界は、もしかすると、通常のストーリーマンガを読みなれた方にとっては、最初は入り込みにくい感じがあるかもしれません。「でもいったん入り込むとハマりますよ」と語る金澤韻学芸員が、展覧会をより楽しんでいただくために、横山裕一作品との出会い、そしてその魅力を語ります。そして次ページでは、横山裕一さんのインタビューをお届けします。

 

―― 横山さんの「ニュー土木」を発売直後に読んだんです。これは普通じゃないと思いました。でも、眺めているだけで気持ちがよかった。線がとにかくカッコよくて。音を表す「ドドドド」「ズバー」みたいな文字が、異常な形とサイズで入ってて。普通じゃないんだけど、余計なものも足りないものもない・・・これは完璧な世界だと思いました。

それから何年か経って、横山さんのアトリエを訪ねる機会があったんです。作品にはどこか未来的なイメージがあるので、そういう未来的なアトリエなのかと思ったらまったく逆で、簡素な佇まいの平屋で、そこにはパソコンすらなかった。私は例の、横山さんの描く「ドドドド」みたいな音を表す文字について知りたくて、「どうしてあんな文字が描けるんですか」と尋ねたら「定規で描いているから」と()。定規の直線性がまっすぐに出た「ドドドド」だったわけです。最近は漫画制作のソフトを使って描いている漫画家の方も多いですが、横山さんはすべて手作業。その日いただいた名刺にも驚きました。ボツ原稿の裏に手書きで書いていらして・・・プリミティブかつエコなんです。

他にアトリエで印象的だったのが、一つは友人との会話を録りためたカセットテープの山。それから、学研の図鑑。一緒に図鑑をめくっていたら、地球ができていく過程を描いた図がありました。雨が降って、川ができて、海に注ぐ…その時間の経過が描かれている。横山さんの世界だと思いました。カセットテープも、ご友人とコミュニケートする一瞬一瞬を楽しまれているのだと思う。時間を大切に思い、描く作家。本展のコンセプトはこのあたりで出てきています。

横山さんは漫画だけではない広い世界を見ていて、表現方法としての漫画に行き着いた人です。基本的には現代美術のアーティストといっていいと思いますが、横山さんは現代美術だからとか何だとかいうこともなく、普通に漫画の世界で勝負している。いつもその気概に打たれますね。そんな横山さんの作品は、本来漫画が持っている表現力に気付かせてもくれます。漫画とかアートとかデザインとかいった領域を自然に超える力がある、すごく重要な作家と思っています。そんな横山さんの魅力を伝えられる展覧会を作りたいと思っています。(談)(学芸員 金澤韻)



《横山裕一インタビュー》

 

漫画を描きはじめたきっかけを教えてください。

横山 最初は美大で油絵を学んでいたんですよ。でも、だんだん油絵は日本の住環境に合ってないと思いはじめて。それに画材も高いし、描いたもののために仕事場が狭くなってきて・・・。あるとき引越しをしなければならなくって、それまで11畳くらいの広いところに住んでいたんですが、次は6畳。それでもう大きい作品は難しくなりましたね。小さい作品を考えるようになった。

わりと経済的見地から考えられた路線変更ですね。

横山 そうです。もうひとつ理由があって、一枚の絵を描くということは、場面一つで完結させなきゃならない。それがどうも物足りなくて。色を使いこなすのが難しいと思っていたこともあり、それで白黒で、いろんな場面を描ける漫画にしてみようかなと思ったんです。漫画なら時間が描けますよね。

「漫画家」になった経緯としては異色だと思うのですが。

横山 そうですね。たいてい漫画家の人は漫画が好きで漫画家に憧れて始めることが多いと思うので、珍しいと思いますよ。

漫画家としての商業誌デビューはどんな感じだったのでしょうか。

横山 『ニュー土木』に入っている「もてはやし」が「ハピネス」という映画の本に載ったのが最初ですね。最初の頃は出版社へ営業に行っていたんです。当時、月に二回営業に行くって決めていました。イラストの仕事はもらいましたが、漫画は簡単には載せてくれなかった。そんな状態が何年か続いて。今でもとってありますが、営業用のミニ本を作っていたんですよ、コピーしてホチキスで留めたやつ。そのミニ本をイーストプレスの堅田浩二さんが見たらしく、ある時電話してきて、「次の『コミック・キュー』に載せてくれないか」と。それ以来『コミック・キュー』に三回載りまして、それで何年後かに単行本にしましょうということになったんです。単行本が出たのはフランスの出版社のほうが少し早かったんですけどね。

フランスから出すことになった経緯は?

横山 ブルエールさんというフランスの方が、日本に滞在していたときに『コミック・キュー』を見て、たまたまやっていた展覧会も見に来てくれて。帰国したら夫婦で出版社をつくる、「そこで柔道の本とあなたの本を出したい」と。

柔道の本と同時に語られるのが面白いですね。4冊出ているということはそれなりの反響が・・・。

横山 数的にはそれほどでもないらしいですが、次々と4冊出していますからね、評価されているんだと思います。その後アメリカやロシアからも出て・・・。

海外の展覧会への出品依頼も多いですね。海外から注目されていますよね。

横山 セリフのないのがいいのではないでしょうか。あと日本人にしか通じない内輪ネタのようなことは描かないのでね・・・。反応を見ると外国人のほうが、僕の意図を汲んでくれているような気がしますね。日本人は「絵が細かい」とか、「話が笑える」とか、そういう反応が多くて、「そんなとこ見てほしいわけじゃないんだけどな」と思ったりすることがあります。

なるほど。横山さんの漫画は、通常漫画を読むのとは違う体験だと思います。漫画ってこういうもの、という先入観のない人がすんなり読める作品なのかもしれませんね。ご自分の活躍されているフィールドについてはどう考えていますか?

横山 どういうジャンルで自分は何者、というふうには決めたくないと思っています。どんなフィールドでもいいんです。そのとき自分がやることをやれれば。まあ、できれば漢字で表される職業がいいですね。漫画家とか美術家とか。ペインターやイラストレーターやアーティストっていうとちょっと違うように感じますね。

 

どんなライフスタイルなのか、知りたいという方が多いと思います。

横山 仕事以外でですか? フリータイムのすべてを漫画にあててますよ。釣りとかボディボードとか旅行には行きますが、基本的には気分転換ですね。

作中の音の表現が印象的ですが、音楽は聴くんですか?

横山 寝るときに現代音楽を聴いたりしますが・・・あまり重要じゃないですね。それより、友人との会話を録りためているんですが、それを聴くのが楽しいです。自分が過ごした楽しい時間の思い出を味わっているんですよね。

今日も録音されてますよね。

横山 はい。こういうのを聴きながら作業すると楽しいですよ。

パソコンをお持ちでないそうですが、ポリシーですか。

横山 ポリシーというか合理的な判断からです。持ってる理由がない。高いし・・・30円とかだったら持つかもしれませんけど・・・いや、やっぱり買いませんね。何に使うんですか、あんなもの。使いにくいし。マウスも嫌ですね。漫画だの絵だの描いてる人は一刻も早くゴミ捨て場へ持って行ったほうが、いい絵が描けると思います。

今回、美術館での初めての個展になりますね。

横山 僕のこれまでのすべてを見せる展覧会にしたいですね。かなり初期のものから出ます。一番古いのは・・・小学生のときに描いた漫画とか。これは恥ずかしくてあまり見せたくないんですけど…。(終)
多くの人々の間で話題になりましたが、トラフ建築設計事務所の展示デザインは本当に素晴らしかったです。

楕円形のテーブルに、漫画原画を連続的に並べると、私たちは自らの足で移動しながら、作品の時間と空間をなぞっていくことになりました。
横山さんの旅の漫画を、旅をするように読む。なんて素敵な体験だったのだろう、と思います。
人が多くなるとテーブルの周りを列になって歩く私たちは「リアルNIWA」。
訪れた人が、どこまでも作品世界に没入できる仕掛けにあふれています。

やはりトラフと仕事をされた皆川明さんが「僕から新しい提案をすると『難しい』ということをまず言うのではなく、一緒に面白がってくれた」(『デザインの現場』2010.4)とおっしゃっていたのには、うんうんと頷きました。私もトラフとの楽しいミーティングが忘れられません。横山さんも一緒に、何時間も「こうしたらどうか?」と提案し、話しあう。受け止めて次を出す。気がつくとすごく時間が経っている。この柔らかなコミュニケーションの空気が、展覧会場にもあふれているのだと思います。

この展覧会は横山裕一とトラフが作りだしたひとつの世界です。
「化学反応」という言葉はこういう時のためにこそあるのだと思う。

たくさんの方に体験してほしいと、心から願っています。


ついに、会期あと2日間となりました。

土日両日、横山さんも会場にいらっしゃいます。
お天気があまりよくないかもしれませんが、その分来場者サービスしなければ、と、作家はやる気満々です。

お待ちしていますよ!

(美術館 金澤韻)

横山さんより

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「昨日はギャグ漫画「売名と善行」の下描き作業をする 理想の実現のためさまざまな課題にとりくむ男達を描き自己と他者について考える内容である 暑さで作業は進まず理想の実現には不向きな気候である 写真は小学校で撮影 右の男はスーツを着て女に触り鳥を持っている グルからの指示により明日と明後日美術館で最後の読者サービスを行う」

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横山さんより

↓↓

「読者から琵琶湖の郷土料理フナ寿司が届く(有難うございます)腐ったチーズ状の食品だという。淡水魚の食味は一般に不人気だがなぜか 私は海水魚よりも面白みを感じる 食品には旨さ栄養価以外にそうした面白みも大事な要素であり考えたり笑ったりしながら行儀わるく食 うことになる 参考図版は回転寿司店で撮影 ここに入ったわけではない。」

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今日発売の『美術手帖』7月号に、横山裕一展レビューが掲載されています。
テキストは都筑潤さん。横山裕一の芸術を正面から語る濃いレビューです。
http://www.bijutsu.co.jp/bt/

また、電子書籍「AiR」巻頭グラフに横山裕一展と横山作品、インタビューが掲載されました。
この書籍自体、出版社発ではなく、作家が自分たちでつくる日本初のオリジナル電子書籍ということで、新しい試み。注目されています。その巻頭とは、素晴らしいです!
http://electricbook.co.jp/

また、12日付の西日本新聞に、記者の塚崎謙太郎さんが大きな記事を書いてくれました。
「ぼくの漫画が100年後どうなってるか分からないけど、そういうステージで勝負しないとやってる意味はないなと思うんです」(インタビューに答えて、横山さん)。

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横山さんが、この間しみじみと「いやーこの方にポスターを頼んでよかった」とおっしゃっていました。
服部一成さんデザインのポスター、ほんとうにどこで見かけても異彩を放っています。
真っ白な紙に、黒、そして蛍光インクで赤と緑。版画作品のようです(というか版画作品ですね。ポスター芸術ってそういうこと)。
絵柄や文字などそれぞれの要素が軽やかに浮いている。でもがっちりと結び合っている。
横山さんが漫画を描いている人だ、ということが分かるように作っていただいたことも、学芸員としては忘れることができません。すごく完璧なポスターだったと思います。

アンケートから、このポスター、チラシを見て「横山裕一が何者か知らなかったけど来た」という方も少なくないことを知りました。
A4チラシは館内でもほとんど配布が終了、残部あとわずかとなりました。

服部一成さん、そして服部事務所の田部井美奈さんが手がけた展覧会記録集は650部限定です。まだ残部ありますが、予算上この記録集の増刷はどうしても不可能です。いま、このとき、この場所でのみ可能となった印刷物。終わったら消えてしまう展覧会の姿が収められています。どうかこの機会にお求めいただければと思います。


会期、あと4日間です。

今日は遠方からのお客様、またリピートでいらっしゃったお客様にお会いしました。
嬉しいですね。

まだご覧になっていらっしゃらない方、なんとかあと4日のうちに、都合をつけていらっしゃれることを祈っています。

(美術館 金澤韻)

横山さんより

↓↓

「日中高温となった昨日近所の川で狂ったように泳ぐ不良青年男女の一団を見る多量の生活排水が流入し遊泳には向かない河川であるが納涼にはなる 不良青年とともに泳ぐ2尾のブラックバスも確認 ブラックバスは夏の季語である(ちがいます)」

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いい天気ですね。
週末にかけて雨が降るかもしれないので、都合のつく方は今日あたりお越しいただいたらよいかも。

横山さん、ツイッターを引き継いでくれそうです。
テクニック的に問題がなければ。
というわけで今のうちからフォローしておいてください>みなさん
https://twitter.com/neomanga

(美術館 金澤韻)

横山さんより

↓↓

「埼玉県下の私の事務所には植樹した記憶はないがある時期からとつ
ぜん何かの広葉樹木が生え三年ほどでたちまち写真のような樹高に成長。毎年この時期だけ何かの実がなり鳥類らが集まってくる 概ね植物には興味がないが好きなものもある(例外→苔)過去2度こうした庭鳥類の雛が巣から落下しウロウロしているのを捕獲し飼育を試みたが失敗。雛はものすごい勢いで終日食物を要求する」

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横山さんより

↓↓

「きのうはギャグ漫画「海洋」の下描きをする 洋上を小船で漂う男達の物語である 地球表面の70パーセントは海洋であり海に思いを馳せる物語でもある 従来のフランス版単行本「Travoux  Publics」に「ニュートン記念堂」4pを加えた増刷版が作られ12冊が手元に届く」

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会期は残すところ、あと一週間となりました。
明日の休館日をはさんで、火曜~日曜の6日間で終了です。
終わってしまえば、この展覧会場はもう二度と見ることができません。。。
(なんか本当に残念。。。)
せめてみなさん、その目で見て、心に焼き付けていってくださいね。

(美術館 金澤韻)

横山さんより

↓↓

「ワールドカップをみるために年明け以来電波が絶縁し受信不能状態のテレビアンテナを針金や壊れた傘などで自作。脚立がないためアンテナを屋根に投げ上げるなどしたがこのような点描画風の映像しか映らず (有効な方法を知る方は情報提供を,または脚立を貸してくれる方)音だけはふつうに聞こえるので試合経過を音で想像することは可能。想像力は無限だ」

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