[CML 022483] 「森美術館問題を考える討論集会――問われる表現の自由と責任」報告

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2013年 2月 6日 (水) 11:27:43 JST


前田 朗です。
2月6日


昨日、「森美術館問題を考える討論集会――問われる表現の自由と責任」を開催し
ました。簡単な報告です。

私はあいにく風邪をひいていて、しかも、前日から、ネット上ではこの件で私に
対する誹謗中傷が飛び交っていましたし、「潰せ」などという書き込みもあった
ので、やや神経質になりながら開会しました。

途中、会田誠擁護派の男性1名が、パネラーに対する誹謗中傷をしたり、反対意
見の女性に駆け寄ってつかみかかったり(他の参加者2名が割って入って事なき
を得ました)、罵声を浴びせながらカメラを向けるなど、暴力的な行為があり、
騒然とする一幕がありました。主催者の指示を無視し、叫んだり、恫喝をしたり
という、妨害行為です。会田誠派はこういう人たちだと言いたくもなりますが、
この人物個人の問題です。会田誠氏本人とはまったく無関係の人です。

しかし、他の参加者はとても冷静に対応してくれて、最後まで有意義な会を持つ
ことができました。

前半は、個人として森美術館に抗議した宮本節子さん(ソシャルーワカー)、ポ
ルノ被害と性暴力を考える会の森田成也さんから、それぞれ抗議に至った経過や、
ポルノによる性差別と暴力性、ポルノを公共の空間である美術館に展示すること
の問題性についてお話しいただきました。

続いて、私が「芸術とスキャンダル」について、芸術が結果としてスキャンダル
になった時代から、スキャンダルを引き起こしてそれに「芸術」というレッテル
を張る時代への変化に触れ、芸術だから何をやってもいいという「芸術特権論」、
芸術至上主義のもとで自己目的と化したスキャンダル・アート、勘違いお騒がせ
アートの話をしたうえで、森美術館問題については博物館法の基本に立ち返るこ
とを述べました。

後半、会場発言では、11人の発言がありました。3人のパネラーに対する疑問
や批判的立場からの発言を優先したところ、4人の発言がありました。公共空間
を具体的に定義できるのか(電車の中、美術館、一般の出版物など)。スウェー
デンでは漫画は児童ポルノに当たらないという判決が出ている。暴力被害と言う
が、喜んでいる女性もいるではないか。絵画の場合と言葉による表現など、表現
形態によってどこがどう違ってくるのか、などなど。

その後、展示を見た人たちが「犬」シリーズへの批判的感想を述べました。女性
差別問題に取り組んでこられた方たちの発言は、宮本さんの報告を補足するとて
も良い発言になりました。

他方、「15歳の時に初めて見て会田作品のファンになった。東京に出てきて森
美術館の展示を見られてとても嬉しかった。この会で、まったく違う見方をする
人がいることがわかって、良かった」という発言がありました。暴力の後で騒然
とした時に、若い女性がこの発言をしてくれたのはとても良かったです。

終了後、何人もの方から、「こういう時期によく開催してくれた」「とてもいい
集会だった」との言葉をかけていただきました。

今回は、1月31日に準備を始めてわずか6日でしたので、討論としては不十分
ではありましたが、やってよかったとホッとしています。

感情的対立からヒートアップしがちなテーマで、あえて火中の栗を拾って抗議の
声を上げ、パネラーとして発言していただいた宮本さん、森田さんのおかげです。
感謝します。

今回不十分だったのは、美術館とは、という討論を詰めることができなかったこ
とです。学芸員や美術評論家のご意見がほしいのですが、準備期間が短すぎまし
た。次回、なんとか第2弾をやりたいと考えています。





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