シート打撃で本塁打を放った阪神・新井良=宜野座(撮影・岡潤一)【拡大】
沖縄民謡のように、心地よく耳に残る『音』だった。カーン。宜野座に豪快な打球音が響き、白球は低い弾道のまま、左翼フェンスを軽々とオーバーした。パワーが違う。気合が違う。新井良が初のシート打撃で、エース能見の直球を一閃。最高の結果を出した。
「(本塁打は)よかったですね。まあ、いいところもあったし、課題もありました。能見さんの力のある真っすぐを引っ張れてよかったんですけれど、変化球とかまったくダメだったので…。それが課題ですね」
練習後は反省も忘れなかったが、雲にさえぎられた南国の日差しの分まで、背番号32が輝いた。午後1時。シート打撃のマウンドに能見が上がると、一番最初に打席に入った。1打席目は一飛に打ち取られたが、2打席目に真価を発揮した。
カウント2-1から、内角139キロの直球をフルスイング。ライナー性の打球は瞬く間に左翼芝生席に消えた。予想だにしていなかった!? 一発に、エースは「打てるところに投げてやった」と“弁解”。虎の元気印も「まさしくその通りです」と控えめに笑った。
オフの猛練習で、体重は5キロ増の101キロ。最強ボディーで成長をアピールした若虎に、和田監督も、「一発回答というか、最初のシートで、あれだけのものを見せてくれた」と目を細めた。速球に力負けしないというチームのテーマを即、実践したことを評価すると「昨年4番を打った自信もあるだろう。打席でのオーラ、気迫、『打ってやろう!』という気持ちが出ている」とも-。指揮官の脳裏には、鋭さを増したスイングが確実に焼き付いたはずだ。
「低い弾道でも入るようになったというのは、あの本塁打だけでいえば(体と連動が)できたのかもしれないけど、まだまだ課題がある。これからも継続していきたい」と新井良。手応えもあるが、納得もしていない。三塁なら新助っ人・コンラッド、一塁なら兄・貴浩と争うが、決して引けは取らない。良太が声で、バットで、存在感を発揮していく。(西垣戸 理大)
(紙面から)