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難病治療薬 臨床試験で病院が連携
2月1日 18時37分

難病治療薬 臨床試験で病院が連携
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患者が少なく治療の難しい難病の薬の開発を進めるため、各地の病院が連携して臨床試験を行うネットワークが1日、発足しました。

東京・千代田区で開かれた発足式には、臨床試験のネットワークに加わる各地の大学や国立病院機構の病院などから医師らが出席しました。
設立を呼びかけた国立精神・神経医療研究センターの小牧宏文医師は、「全国で臨床試験を協力して行い患者さんに薬を早く届けられるようにしたい」とネットワークのねらいを述べました。
ほとんどの難病は、専門の医師が少ないことなどから臨床試験がなかなか進まず、有望な薬の候補が見つかっても実際の治療に導入して試すことのできる患者はごく限られています。
ネットワークでは、参加した全国27の医療機関で臨床試験を実施しやすくなるよう、病院医師や看護師などの研修を行ったり、患者のデータをまとめて管理したりするということです。
まずは、全身の筋肉が徐々に失われる「筋ジストロフィー」で全国の患者の登録を行い、薬の開発を進める態勢を整えることにしています。
小牧医師は「ネットワークによって全国で質の高い臨床試験を早く実施できるようにして薬を開発したい。さらに筋ジストロフィーだけでなく、患者数の少ないほかの病気の治療法の開発にもつなげていきたい」と話しています。

より効果のある治療法を求めて

難病の患者の中には、より効果のある治療法を求めて、開発中の薬の臨床試験に参加する人がいます。
群馬県渋川市に住む小学6年生の筋ジストロフィーの男の子は、臨床試験に参加するため、毎週、父親の運転で東京・小平市にある国立精神・神経医療研究センターに通っています。
男の子は、5年前、小学1年生の時に筋肉が徐々に失われる筋ジストロフィーの中でも最も症状が重い「デュシェンヌ型」と診断されました。
これまでの薬で症状が和らぐことはあるものの、病気の進行は止まらず、今では車いすを使わなければなりません。
少しでも症状を改善する薬を求めて、男の子は、おととし臨床試験に参加することを決めました。
毎週、注射で投与を受けるのは、遺伝子に働きかけて筋肉を動かすたんぱく質を作る、これまでにないタイプの薬です。
うまく効けば、動かすのが難しくなった足を再び動かせるようになると期待されています。
男の子はリハビリを続けながら、新しい薬に治療への希望を託しています。
しかし、この薬の臨床試験を行う医療機関は全国で4か所に限られるため、試験への参加を望みながら断念せざるをえなかった患者もいるということです。
男の子の父親は「これまで治らない病気とされてきたが、臨床試験に参加できて光が差したように感じる。どんどん新しい薬を試せる環境ができてほしい」と話しています。

ネットワーク整備に期待

患者が少なく、治療の難しい、いわゆる難病は500近くに上り、患者数は、それぞれ数十人から数万人程度と見られています。
有望な治療薬の候補がなかなか見つからず、専門の医師が少ないこともあってほとんどの病気で臨床試験が進まない状況にあります。
一方で、海外の製薬企業の中にはそれぞれの国で患者が少なくても世界中で薬を販売できれば十分に収益を上げられるとして、難病の治療薬の開発に力を入れる動きが広がっています。
臨床試験のネットワークが整備され、各地の難病の患者が臨床試験に参加できるようになれば、国内の製薬企業や大学などの研究者も新しい薬を開発しやすくなる、と期待されています。

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