国会図書館の本など電子書籍に 配信実験2月1日 23時11分
スマートフォンやタブレット型の携帯端末などの普及が進むなか、国立国会図書館にある本などのデジタル化された資料の活用策を探ろうと、「電子書籍」として無料で配信する実験が1日から始まりました。
日本でただ1つの国立の図書館、国立国会図書館には、去年3月末時点で本や雑誌など3841万点を超える蔵書があり、去年11月末時点で、そのうちの216万点余りはすでにデジタル化されています。
今回の実験は、スマートフォンやタブレット型の携帯端末などの普及が急速に進み、端末で作品を読む「電子書籍」を利用する人も今後、増えると見込まれるなか、これらの大量のデジタル化された資料の活用策を探ろうと、文化庁が始めました。
配信されるのは
配信は合わせて13作品の予定で、このうち7作品が1日から配信が始まりました。
作品は、芥川龍之介や宮澤賢治といった著名な作家のものをはじめ、海外の童話の翻訳や幼児用の写真の絵本などさまざまで、中には、当時の社会風俗を知る資料として戦前の発禁本も含まれています。実験では、活字を補って読みやすくしたり、絵巻物は、その特徴を生かして端末の画面でスクロールできるということです。
著作権を処理し電子書籍化
電子書籍にするには、作者などの著作権の処理が必要です。
すでに作者が死亡している場合、著作権は法律で死後50年で消滅すると定められていますが、50年たっていなければ、遺族など関係者の連絡先を調べるなど、権利者についての調査が行われ、許諾を求めることになります。
文化庁によりますと、今回の実験で配信される作品の著者は、ほとんどが死後50年たっているということですが、あとがきや写真の解説を書いた人などについては、遺族に確認する作業を行ったということです。
そのうえで、著作権処理が終わった作品について、電子書籍化して配信されます。
配信実験のねらいは
配信実験は、紀伊國屋書店のホームページやアプリを通じて、来月3日まで無料で行われる予定です。
文化庁は、実験を通して、権利者を探したり著作権を処理したりする際の方法や課題を明らかにしたいとしています。
そのうえで、将来、民間企業や公立の図書館などが、同じようにデジタル化された資料を電子書籍にして配信するためのガイドラインなどを作って、電子書籍の流通や利用を促したいとしています。
配信資料一覧
1日から配信が始まった資料は、次の7作品です。
(1)「絵本江戸紫」(1765年、浪花禿箒子著・石川豊信画)。
(2)「平治物語〔絵巻〕」(第一軸:三条殿焼討巻)(1798年、住吉内記写)。
(3)上田萬年訳(グリム原著)「おほかみ」(1889年、吉川半七)。
(4)竹久夢二「コドモのスケッチ帖 動物園にて」(1912年、洛陽堂)。
(5)芥川龍之介「羅生門」(1917年、阿蘭陀書房)。
(6)芥川龍之介「河童」(1927年、直筆原稿)。
(7)酒井潔「エロエロ草紙」(1930年、竹酔書房)。
今月8日から配信される予定の資料は、次の6作品です。
(8)柳田國男「遠野物語」(1910年、自費出版)。
(9)夏目漱石「硝子戸の中」(1915年、岩波書店)。
(10)永井荷風「腕くらべ」(1918年、新橋堂)。
(11)宮澤賢治「春と修羅」(1924年、関根書店)。
(12)宮澤賢治「四又の百合:宮澤賢治童話集」(1948年、百華苑)。
(13)「きしゃでんしゃ」(1953年、(株)トツパン)。
|
[関連リンク] |
|