社説:射撃レーダー照射 一線越えた挑発行為だ

毎日新聞 2013年02月07日 02時31分

 武力衝突を招きかねない、極めて悪質で危険な挑発行為である。

 中国の艦船が1月30日、東シナ海の公海上で、警戒監視中の海上自衛隊の護衛艦に火器管制レーダー(FCレーダー)を照射していたことがわかった。19日にも、護衛艦の搭載ヘリに照射された疑いがある。

 FCレーダーは、ミサイルなどを発射する際、目標との距離や針路、速度などを正確に把握するために照射される。相手は自らが攻撃対象となったと受け取る。反撃も可能だ。

 30日の事案では、中国艦船と護衛艦の距離は約3キロ、FCレーダー照射は数分間に及んだという。護衛艦が自衛措置に踏み切れば、戦闘状態に発展する可能性もあった。

 中国軍が日本の艦船などにFCレーダーを照射したのは初めてだ。小野寺五典防衛相は「極めて特異な事例だ」と強く批判し、政府は中国側に抗議した。当然である。

 今回は自衛隊側の冷静な対応で事なきを得たが、中国政府、共産党指導部は事の重大性をはっきりと認識すべきだ。挑発行為を二度と繰り返さないよう中国側に強く求める。

 FCレーダー照射について、中国側の意図や、政府、共産党指導部が容認していたのか、軍の一部や現場の判断なのかなどは不明だが、日本政府には後者の見方が強いようだ。

 習近平・中国共産党総書記が1月下旬、山口那津男公明党代表と会談し、対日関係改善を模索する姿勢を示したことも、そうした見方の根拠の一つになっているのだろう。

 中国外務省の報道官は6日の記者会見で、「われわれも報道で初めて知った」などと述べた。

 懸念されるのは、軍の突出した行動である。1月中旬には、軍総参謀部が「戦争の準備を」と軍に指示を出したと軍機関紙が報じた。米軍が1月に東シナ海上空に空中警戒管制機(AWACS)を投入し、クリントン前米国務長官が尖閣諸島をめぐり日本側の立場を支持する踏み込んだ姿勢を表明したことに軍が反発しているとの情報もある。

 中国の文民統制(シビリアンコントロール)には疑問符が付くとの指摘がある。日本政府は、同様の事案が繰り返されるかどうかを注視しているが、戦前の日本のように、軍の暴走を政治が追認することになれば深刻だ。

 中国側の行動には、挑発に乗らず冷静な対応が必要だ。同時に、日本政府が挑発行為の実態を正確に国際社会に発信することも重要である。

 また、今回の事案について詳しい説明を中国政府に要求するとともに、不測の事態回避のための「海上連絡メカニズム」構築に向けた日中防衛当局間の協議再開を中国側に求めることも必要だろう。

毎日新聞社のご案内

TAP-i

毎日スポニチTAP-i
ニュースを、さわろう。

毎日新聞Androidアプリ

毎日新聞Androidアプリ

MOTTAINAI

MOTTAINAIキャンペーン

まいまいクラブ

まいまいクラブ

毎日RT

毎日RT

毎日ウィークリー

毎日ウィークリー

Tポイントサービス

Tポイントサービス

毎日jp×Firefox

毎日jp×Firefox

毎日新聞のソーシャルアカウント

毎日新聞の
ソーシャルアカウント

毎日新聞を海外で読む

毎日新聞を海外で読む

毎日新聞社の本と雑誌

毎日新聞社の本と雑誌

サンデー毎日

サンデー毎日

毎日新聞のCM

毎日新聞のCM