陸上の熱血先生 原田隆史先生

 「記録に限界はない。誰でも日本一になれる。そんな教育哲学のもと、一人一人のやる気を
引き出し、自立型人間を育てる鉄人。創部6年にして大阪市立松虫中学校の陸上部で種目別
日本一を12回、中学校日本新記録、中学校日本最高記録を誕生させる。陸上競技を通しての
人間教育にも力を入れておられる。また、地元大阪では、「生活指導の神様」とも呼ばれ、荒
れる現場の建て直しにも活躍。そんな先生の紹介記事です。

 致知2002年9月号より 致知出版社 (転載許諾済み)                                   
 インタビュー  心耳を澄ます「生徒の心に耳を澄まし無限の可能性を花開かる」
原田先生に薫陶を受けてがんばっておられる滋賀県の河地先生が率いる大東中学校陸上競技部のHP
       (但し、巨人ファンでおられるみたいですので野球観の違いはご了承ください)

大日本図書 中学校保体の研究 2001年2学期号「 陸上競技と思うな人生と思え」
http://www.dainippon-tosho.co.jp/kikansi/H13_2/hotai/DOC5HARA/index.html
この記事は産経新聞の記事の後に内容のみ転載してあります。

産経新聞2001年12月19日から21日までに教育問題取材班による連載記事がある。
                                              (転載許諾済み)

【第三部 こうすれば現場から】いま学校は(22)教師の力(上)
2001.12.19 東京朝刊 29頁 第3社会 

 ◆顧問の陸上全国レベルに

 この六年間で延べ六十三種目で全国大会や国体などトップレベルの大会に出場。うち四十
三種目で入賞し、個人優勝は十二回−。最近、華々しい成績をあげている公立中学校の陸上
部がある。

 大阪市阿倍野区の市立松虫中学校。昨年は、全国大会の砲丸投げで史上初の同一種目男
女アベック優勝を成し遂げた。平成十年の国体では、女子走り高跳びの選手が高校生のイン
ターハイチャンピオンを破って優勝した。高校生も出場する共通種目での中学生の優勝は国
体初だ。

 ここまで成績が伸びたのは、平成八年に体育担当の原田隆史教諭(四一)が着任し、陸上部
の顧問になってからだ。

            *  *  *

 放課後、グラウンドで陸上部の練習が始まった。道具出し、ライン引きなど一人ひとり役割が
決められている準備作業を行ったあと、リラックスのためのフェースマッサージ、そして発声練
習。「お願いします、お願いします、お願いします…」。周囲のマンションにこだましそうな勢いで
何度も繰り返す。

 五輪百メートルの金メダリスト、モーリス・グリーン選手も取り入れているという特殊な腹筋運
動やバーベルを使った補強運動のあと、種目別の練習が始まった。

 グラウンドが約八十メートル四方と狭いため、野球部と一日おきに使う。「日本一」をねらう運
動部としては練習量は多いとはいえない。それをさまざまな工夫で補っている。

 種目別練習では、種目ごとに責任者を決めて指揮を任せる。そうすることで、各種目で競い
合い、刺激・協力しあって相乗効果を生む。部員たちが代々蓄積してきた「何年生の何月でど
れだけできた」というデータも重要な資料だ。後輩たちはこれを参考に自分の目標を立てる。
そして目標に到達できるまでやる。

 練習が終わるまで教諭の指導はない。時折、拡声器で「声が出ていない」と注意するだけ
だ。

            *  *  *

 体育の授業も同じだった。

 三年生のバスケットボールの授業。五人班に分かれて発声、班長を先頭にしたランニング、
柔軟体操、腕立て、腹筋などの補強運動。ボールを使っての練習も班単位だ。パス、シュー
ト、その組み合わせ。二人組のディフェンス…。メニューやそれぞれに費やす時間は各班で決
めてあり、ストップウオッチを持った班長がリードする。

 班別練習が終わると、原田教諭の前に整列する。班長が「1班、忘れ物、遅刻なし、欠席〇
〇」「2班異常なし」と報告する。

 「きょうはゲーム二十分、そのあとミーティングは三分や」。原田教諭のこの日初めての指示
だ。あとは、拡声器で「声が出ていない」「ぼやっとすんな」などと注意するだけ。

 「ここまでの授業ができるようになるのは三年間かかりますが、これも大きな目標です」と原
田教諭。二十時間の枠があるバスケットボールの最初の数時間は細かい指導もするが、あと
は生徒たちに任せている。

 「厳しいけど、自分なり、班ごとに目標を立てて取り組んでいるので達成感もある。下手とかう
まいとか関係ない。みんな『原田先生の授業は面白い』って言っている」とある生徒は話した。

 陸上部はいま、全生徒三百八十人のうち、八十人が所属するという人気ぶりだ。強さへのあ
こがれだけでなく、原田教諭の指導を受けさせたいと保護者が入部させるケースも多い。

 変わったのは、陸上部だけではない。

 学校を訪ねると、「こんにちは」と声をかけてくる生徒の多さに驚かされる。服装が乱れた生
徒もいない。「原田先生が来てから生徒は礼儀正しくなりましたね。いじめもなくなったと保護者
は話していますよ」と学校近くに住む女性(四七)は言う。

 だが、生徒や保護者の信頼を得るまでには曲折があった。


【第三部 こうすれば現場から】いま学校は(23)教師の力(中)
2001.12.20 東京朝刊 29頁 第3社会  

 ◆子供の生き方変える指導

 陸上部を短期間で全国トップレベルにまで押し上げた大阪市立松虫中学校の原田隆史教諭
(四一)。松虫中に赴任した平成八年四月の中旬、原田教諭は前任校での離任式で、同僚や
教え子たちとの別れを惜しんでいた。そのとき、「学校がたいへんです」と連絡が入った。マス
コミが取材に押し寄せているという。

 原因は、数日前の原田教諭の授業だった。遅刻した生徒三十五人ほどを約十分間正座させ
た。保護者には前日にプリントを配って「遅刻したら正座させる」と知らせていたが、だれかが
「けしからん」とマスコミに知らせたらしかった。

 「正座強要」「体罰」。こんな見出しの記事が、いくつかの新聞に躍った。数日後、緊急保護者
会が開かれた。

 「体育の授業では緊張感がないとけがをするし、へたをすると命にかかわる。それなのに、三
分の一が遅刻し忘れ物をしてくる」

 荒れを立て直した前任校の取り組みも話し、理解を求めた原田教諭に賛同する声もあった
が、批判も多かった。「体罰教師」と声を荒らげる保護者もいた。

 記事では、いじめはあるが落ち着いている学校と書かれていた。だが、着任間もない原田教
諭の目前で生徒に別の教師が殴られたこともあった。精神的に追いつめられた教師もいた。

              *  *  *

 原田教諭には苦い思い出がある。

 教師になった昭和五十七年。校内暴力が全国の中学校で問題になっていた。初めての勤務
先も、「楽しい授業をしよう」「生徒に好かれる優しい教師になる」という理想が一瞬にしてつい
える状況だった。がむしゃらな生徒指導で効果も上がったように見えたが、家庭内暴力を振る
っていた生徒が、耐えかねた親に殺される事件が起きた。

 「今なら、そんなこと起こさせない自信はあるんですが。子供の生き方まで変えんと本当の生
徒指導やないと思い知らされました。中途半端やったんです」

              *  *  *

 マスコミで取り上げられたあとも、信念は曲げなかった。

 「皿洗いやりました」「風呂洗い終わりました」。毎日午後八時をすぎるころ、生徒から携帯電
話に次々と連絡が入る。ときには深夜になることも。「心のふらつきを直すため」(原田教諭)家
事の手伝いを義務づけている生徒たちからだ。連絡は、多いときで日に十五件になる。

 「指導の目標は、子供たちに自信を持たせ、社会性と自立心を育てること。陸上部も授業も
日ごろの生徒指導も同じです」

 原田教諭の授業の基本方針は「基礎・基本」の徹底と、生徒自ら考え課題を解決する「生き
る力」を養うこと。今の学習指導要領に沿ったものでもある。

 基礎・基本はバスケットにたとえればシュート。ドリブルは教えない。あとは、どうすれば有利
な地点からシュートを打てるか、打たれるのを防ぐか−を考えさせる。

 「生きる力」の一つは、礼儀作法や生活習慣だ。忘れ物や遅刻がひどい生徒には、昼休みに
草むしり。あいさつにも力を入れている。体育の授業では、入り口で生徒一人ひとりが「失礼し
ます、こんにちは」と頭を下げて体育館に入る。陸上部では、原田教諭の前を通る部員は「失
礼します」と必ず一礼する。

 もう一つは個人や班で目標を立てて実践し、チェックするという流れを覚え込ませること。企
業が作業能率向上のため徹底する「Plan(計画)・Do(実践)・See(反省)」と同様なものでも
ある。

 陸上部ではこれが徹底され、部員たちの日誌や計画表は細かな記述で埋め尽くされる。授
業の班別練習もそうだ。

 「陸上と思うな、人生と思え」「授業と思うな、人生と思え」。原田教諭が繰り返し生徒たちに言
い聞かせている言葉である。

 【第三部 こうすれば現場から】いま学校は(24)教師の力(下)
2001.12.21 東京朝刊 29頁 第3社会 

 ◆文武両道で社会性育てる

 全国トップレベルに達した大阪市立松虫中学校(阿倍野区)の陸上部には、受験を控えて多
くの同級生が引退した今も、練習を続ける三年生が何人かいる。前キャプテンの大西裕子さん
(一五)もその一人だ。

 放課後の練習のほか、自由参加の早朝練習にも午前六時半から毎日、姿を見せる。起床
は五時。グラウンドですぐに動けるよう、ストレッチをして体をほぐしてから家を出るという。

 「すこし眠いです」。照れくさそうな笑みを見せたが、すぐに「もう慣れました。勉強と両立でき
ないようでは陸上も伸びない」と言い切った。中学三年間で果たせなかった「日本一」にいつか
なると心に決めている。

 「彼女は母親を病気で亡くすなどたいへんだった。それでも、そんなことをおくびにも出さず後
輩たちの面倒をみるし、練習は絶対休まない。大きく成長してくれた」と顧問の原田隆史教諭
(四一)は言う。

               *  *  *

 松虫中は、大阪有数の繁華街「天王寺」に近い街中にある。入学してくる生徒たちは、突出し
た才能を持っているわけではない。家庭環境に恵まれない子もいる。よほどの心の強さがない
と、部活動で全国レベルに達することはできない。

 そのために原田教諭が心がけているのが、「できること」を休まず続けさせることだ。日誌書
きや家事の手伝いは、風邪をひいても試験があっても休ませない。日誌の文章がまずければ
何十回、ときには百回でも書き直させる。校内清掃などそれぞれが決めた自主的な奉仕活動
も毎日続けさせている。

 部員たちは教諭や先輩から指導されたこと、考えていることや体の調子などを細かく書きと
める。「記録が伸びるほど、なぜかたくさん書けるんです」と大西さん。「いまではノート一枚にび
っしり書けるようになったけど、一年生のときの日誌は空白だらけ。そのころはやはり未熟で、
勉強もさぼったりしていました」

 繰り返し書くことによって、指導されたことややらなければならないことが徹底される。原田教
諭は陸上部だけでなく、体育の授業で受け持つ生徒たちにも反省や目標を書かせ、すべてフ
ァイルにとじさせている。


               *  *  *

 「いまでも試合に勝ってまず感謝するのは原田先生です」。松虫中時代、砲丸投げで全国優
勝したOBの橋口徳治君(一六)は話す。「レベルの高い目標を達成するには自分で頑張り抜く
しかないということを身をもって教えていただいたから」

 原田教諭は、子供たちを引き付けるための質の高い授業や練習メニューの研究を惜しまな
い。生徒指導主事も務め、生徒一人ひとりに何時間もかけて話す。部員の日誌には必ず目を
通し、アドバイスのためコメントを入れる。合間をぬって、企業経営者らが集まる勉強会にも参
加して指導法を研究する。社会情勢に敏感でありたいという思いからだ。

 「陸上日本一」という夢のほかに、原田教諭にはもう一つの夢がある。「文武両道で子供たち
に社会性を身につけさせる」という教育方針を掲げたチャータースクールをたち上げることだ。

 「保護者や地域、生徒、教師が同じ目標に向かって一体となる。そんな学校をつくりたい」

 チャータースクールは、自治体が地域住民や教師に学校の設立権を与え、費用も負担する
制度である。アメリカで始まり、国内でも兵庫県教委が研究を進めるなど導入の動きがある。

 子供たちをきちんとしつけ、社会性や自立心を育てようとする教師はいま、萎(い)縮(しゆく)
しがちだ。「子供の自主性尊重」「個性を大事に」−の社会風潮に同調する教員も多い。失敗し
たり行き過ぎたりすると、学校外からの批判の矢面に立たされる。

 「新しい学校で実績を上げれば、頑張っている教師たちへの大きなエールになる」と原田教
諭は考えている。

大日本図書 中学校保体の研究 2001年2学期号「 陸上競技と思うな人生と思え」
              大阪市立松虫中学校 陸上競技部監督         原田隆史 
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 1 はじめに
 昨今少年の犯罪・非行は激化の一途をたどり,殺人事件も日常茶飯事になってきました。目
を被わんばかりの惨状に,現場を預かる私達教師も驚き,悩んでいるのが現状です。
 私も生徒指導主事という立場で,生徒の生活全般を指導していますが,20年間の教師生
活,経験の中から見つけ出し,現在効果をあげている指導方法の一例を,陸上競技,部活動
指導を通して紹介させていただきます。読者のみなさまの参考になりましたら幸いです。
   
 2 中学生らしさの追求
 生徒を指導している中で痛感することは,我々教師が最大努力しなければならないのは,中
学校の全ての活動(各教科・クラブ・総合的な取り組み等)において,生活指導を基本に据え,
生活としつけ指導を行わなければならない。ということです。「中学生らしい,子供らしい生徒に
育てなあかん」と考えています。
 具体的には,(1)敬語,(2)あいさつ,(3)清潔な服装,頭髪,(4)清掃,(5)学習,(6)感謝の気持
ちを持つ。であります。最近は,保護者の中にも毒された,誤った思考の者がおり,「マユ毛を
そる。ピアス・化粧は,子供の個性だ」と公言し,はばからない者も出て来ました。個性とは,そ
の人が死ぬ気で,懸命に努力した結果身につけた,その人の生き様であり,即席に身につけ
たファッションとはまるで違います。
 我々指導者は,間違っても,ピアス・変形服・茶髪・ため口など絶対に許してはいけません。
また,警察白書からも明らかなように,上記の乱れは,万引き・暴力・盗み等の犯罪に発展し
ていく可能性がある。ということも心しておかなければなりません。 

 3 現在の中学生の心理と現場の様子
 中学生の心理を分析し,わかったことは,
@何かの目標をめざしてまじめに努力するよりも,現在の自分でいかに楽しむかということに
価値を見いだしている。この様な現象をまじめの崩壊と呼ぶ。
A何をやっても,「どうせ無理,無理,私にはできない。」と初めから決めつけ,あきらめ,自分
自身を納得させている。すなわち,自分の可能力を信じず,自分の器を,中学生ですでに決め
ている。自分を見限っている。
 これらを自己完結と呼ぶ。
B努力,向上,勤勉志向型の生徒,保護者の減少。
Cしかし,本校陸上部の生徒の様に努力志向,全力投球型の者には「たいへん強い充実感,
満足感」があるのに対して,無目的,のんびりただよい型の者には「充実感」が薄く,物足りな
さを感じ,戸惑っている様子が見られます。
 この様な無気力・無関心・無興味の状態で学校に来ている生徒には,学校が「教育の場」と
いう感覚がなく,日常生活(飽きたらしゃべる,騒ぐ,立ち歩く,寝る)の感覚のままで学校に登
校する。→生徒の持っているエネルギーが過剰になり→放っておくと問題行動・いじめ・非行に
発展し,荒れているのが今の現場の状況です。 

 4 指導の方向性
 では,どうすればよいか?
@多くの仕事・活動・役割りを与えそれをやらせ切る。(指導者は生徒がやり切るまで,成果が
出るまで指導し切らないとだめである)→Aやり切れた生徒は充実感と満足感を持つ→B@と
Aの繰り返し,すなわちリピートにより成功体験を多く積ませる。→C仕事,自体を自分から見
つけ,取り組むようにしむける。→D責任感を生む。→Eクラブに組織性と目的性を持たせ
る。(例として,大阪府大会で総合優勝しよう。文化祭を成功させよう。ということを目標に立て
る。クラブでは部長・パート長を作り指導者と連携し活動させる。学校では,生徒会,委員会,
クラスの係を中心に活動を運営させる)→Fこのような組織的な集団の中で生徒を育てれば,
生徒に社会性が身につく。→Gその結果本来生徒が持っている,エネルギーを正しい方向に
使うことができる。
 現在の状況を好転させるためには,この法則に従い,生徒の社会性向上にすべてをかける
以外に道はありません。導く方向を努力・向上・全力志向からいたずらに他の安易な方向に転
換してはいけません。実践の検証と確信なき安易な転換は「中学校における社会性の育成放
棄につながり,大混乱を生みます。私は,幾度もそのような失敗例を見てきました。 

 5 生きる力を育てるために
 先に述べましたが,神戸事件や黒磯の女教師刺殺事件を契機として,現場の中学校教育の
中で「生きる力」を身につけさせることが急務となってきました。さて,生きる力とは,@自分で
目標を立て,達成のための方法を考え,達成しきる力,A礼儀作法,基本的生活習慣の指導
に始まる倫理,道徳の向上,B健康と体力の向上をはかる力をさします。
 これらを見ていくと,我々が日々指導している運動部活動,陸上競技部指導はまさに生きる
力を身につけさせるのに最適の方法であります。
 今一度,ポイントを確認すると,@生活指導の徹底,A心づくり指導として「ありがとうござい
ます」「おかげさまです」の感謝の心を育てる。B日々の練習の中で,個人別課題をやらせ切
り,満足感・達成感・充実感を感じさせる。Cそれぞれの運動に関する知識と理論を教える。と
いうことになります。 

 6 強化について
 私は松虫中学校に赴任した,6年前より,前述のことを指導の理念・基本として指導するよう
になりました。その結果,日本一をかけて戦う大会(全日中・国体・ジュニアオリンピック・日本ジ
ュニア等)に53種目で出場し,40種目に入賞を果たしました。内12回の優勝を成し遂げていま
す。(とりわけ平成12年度長崎全国大会では男女砲丸投げで日本中学史上初の「同一校,男
女ダブル優勝」を達成しました。また,神奈川国体では少年共通種目,女子走り高跳びで倉本
福子が,インターハイチャンピオンを破り,奇跡の優勝を果たし,これも陸上競技史上初の快
挙となりました。)
 強豪ひしめく大阪府では,団体総合の部で活動2年目より,男子が9連続総合優勝を成し遂
げ,平成13年度は,大阪陸上競技史上初の男女ダブル総合優勝を達成しました。(近畿大会
では,H12年度,男子総合優勝。H13年度,女子総合優勝,男子準優勝を達成しました。)
 指導の際には(1)心づくり指導として@心を強くする指導→困難で達成しにくい課題への挑戦
ではなく,それぞれが,今の力でできる事の継続。A心を使う指導→目標を事前に立てさせ,
その達成に向けつつ具体的方策,問題点,そして解決策,優先順位等の指導を通して,自分
の未来をいじれる力を高める。B心を整理する指導→最近のキレル子供を見ていると,Aの
心を使う指導,すなわち目標を立てて,着実に歩んで行くような行動がにが手なことと,過去の
自分の犯した失敗をいつまでもクヨクヨと後悔し,心を解放できていないこと。未来の自分で
は,どうすることもできない不安に悩んでいるという姿が見えてきます。そこで,大切なことは心
を整理しなければなりません。すなわち,後悔と不安から解放するために,「出来る事」と「出来
ない事」を仕分けさせるテクニックを指導します。具体的には,毎日,日誌を書かせます。その
日誌を翌日に提出させ,指導し,心の整理の仕方を教えます。C心をきれいにする指導→毎
年日本一を手に入れた瞬間,まず第一に頭に浮かぶのは感謝の気持ちです。「オレが勝たせ
たんだ」「私が勝ったんだ」という様な気持ちは今はありません。
 出て来るのは「ありがとうございます」の心です。またそうならなければ教育陸上の意味があ
りません。そこで,中学生に感謝の気持を育てるために,奉仕活動を行わせます。具体的には
おもに清掃活動を行います。
 (2)基礎基本重視 ノウハウはさほど重要視していません。難解で定着させにくいハイレベル
の技術より,教科書に出ている程度の初歩レベルの技術をおとし込みます。
 (3)心・技・体のバランス。体力の向上に気を配るとともに,心の教育,心のトレーニングが必
要であると思います。前述の心づくり指導と共に,試合で100%実力を出すため「メンタルトレー
ニング」を行っています。
 (4)短時間で練習を終了し,生徒を陸上漬けにしないように配慮しています。 

 7 選手の勧誘,獲得
 生徒数390名中陸上部で85名が活動しています。生徒が入部してくる条件は@保護者から真
の信頼を得るために,生徒指導を徹底し,中学生らしい生徒に育てる。→保護者が「陸上部に
入ると,礼儀正しくなるから入りなさい」と進めてくれる。A進路保障→強いからではなく,がん
ばった者にむくいる。B陸上競技の本当の楽しさに触れさせる。→ダベッテ楽しい。カラオケで
歌って楽しい。TVゲームをして楽しい。メールを打ち合って楽しい。などの目的と向上のない
「せつな的な楽しさ」ではなく,陸上競技の持つ,本当の楽しさ=特性に触れさせる。(試合に出
て他の競技者と競争することが楽しい。自分が目標として立てた記録に挑戦し,達成していくこ
とが楽しい。先生や友人といっしょに活動し,心の交流を深めていくのが楽しい。) 

 8 指導信条
陸上と思うな人生と思え。

受身な極悪。

敵はだれですか?
 「自分です」
 要約すると,失敗は全て自分のせい。生徒ではない。同じ失敗は2度と繰り返さない。すべて
に目標認定ありき。→ハッキリとした目標と達成のための方法を立ててから全力で取りかか
る。
 
 9 指導者の資質
生活指導ができること。 
常にオンリーワンを目指す情熱を継続できること。 
演技ができること。 
ユーモアがあること。 
清潔で年齢より若々しいこと。 
元気が人一倍あること。 
病気をしないこと。 
家族にささえられていること。 
職場の仲間から高い評価を受けていること。 
教師以外の職業との接点を多く持つこと。
以上の様なことを自戒しながら指導しています。また,今まで述べました事は,「教育陸上」と
呼ばれ,現在大きな反響を呼び,広がりを見せ,成果を上げています。これからも,陸上指導
の志に従い,全力で指導をしていきます。がんばります。成果を見ていて下さい。ありがとうご
ざいました。 
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                                       (大日本図書転載許諾済み)
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