ベストセラー本「若者はなぜ3年で辞めるのか?」に面白い記述があったので考えてみます。
体育会系が好まれる理由
著者は「体育会系が好まれる理由」について下記のように述べています。
彼らが企業を魅了してやまない理由とはなんだろう。もちろん、よく言われるように「体力があるから」などという単純な理由ではない。ふつうの会社なら、相手を投げ飛ばしたり、タックルしたり、何十キロもある荷物を担いで回る仕事なんてこのITの時代にはまずありえない。
彼らの(企業から見た)最大のセールスポイントは、一言でいえば「主体性のなさ」だ。
(中略)徹底した組織への自己犠牲の精神、ときには体罰さえも含む厳しい上下関係といったカビの生えたような異物が、いまも多くの体育会では脈々と受け継がれている。
結果として、彼らは並みの若者などよりは、ずっと従順な羊でいてくれる可能性が高い。つまらない仕事でも「上司に言われた以上は」きっちりこなしてくれる。休日返上で深夜まで働きつづけても文句は言わない。
「主体性のなさ」とズバリ言い切ってしまう口調は刺激的。ですが、これは真実だと思います。ぼくが所属していた大企業でも、やっぱり体育会系の人材って、自己犠牲的で、上司に可愛がられていたことを思い出します…素直にすごい才能だと思います。
「言われたことをこなすだけの人材」の価値は下がる
昨今のビジネス環境を考えると、上司から言われたことを「上司から言われたから」という自己完結的な理由で取り組めてしまうような人材は、まちがいなく価値が下落すると思います。
「言われたことをこなすだけ」なら、途上国の人材にも、機械やロボットにもできます。それは日本人が取り組むべき、高付加価値の仕事とはいえません。
ぼくらが今後取り組むべきは、創造力を生かして、慣習・旧弊を打破し、ゼロから新しい価値を生み出していくことだと思います。
高度経済成長期ならいざ知らず、「従順な羊」は今となっては生存戦略としても危険な道でしょう。
上司の言うことをひたすら聞きつづけ、30代半ばになってようやく主任になれるというときに、会社が不況で潰れたりしたら、目も当てられません。転職の面接では「上司の言うことを聞いて、文句を言うことなく仕事をこなしてきました」とでも言うのでしょうか。
体育会系の価値は「我慢」ではなく「戦略性」と「創造性」
城氏が語るように、これまでの「体育会系」の価値は「主体性のなさ」でした。「我慢力」であり、「従順さ」でした。
しかし、「体育会系」の人材は、もっと新しい価値を身に付けることも十分可能だと思います。それが「戦略性」と「創造性」です。
スポーツというものは、おのれと市場に向き合いながら、創意工夫をこらして「自分の限界」に打ち勝とうとする活動です。スポーツに取り組む意義というのは、「壁を”どうやって”乗り越えるか」を、楽しみながら本気で考えつづけられることにあると、ぼくは思います(スポーツはやりませんが…)。
為末さんの書籍などを読んでいると、本当に戦略的かつ創造的で「主体性のなさ」とはほど遠いことがわかります。自分と市場をつねに観察しながら、最適な戦略を、創造的に選択しているわけです。これからのビジネスパーソンに求められるのは、こういう力だと思います。
僕は陸上を続けるという事意外は結構やめまくっている。いつもそう言うのだけれど、どうしてもメディアに出るときは”苦しいときを耐え抜いたからこそ出た結果”になってしまう。ハードルへの転向もハードルに適性を見いだしたからだと今なら言えるけど、当時は100mに限界を感じての撤退だった。
自分と市場を観察せず、上からの命令に対して何ら疑問を覚えることなく、主体性を失ったまま二流で終わった「体育会系」の価値は下がっていくでしょう。
一方で、自分の限界と市場動向にアンテナを張り巡らせ、みずから「やるべきこと」を主体的に選択、実験し、一流を目指した「体育会系」の価値は高まっていくでしょう。
体育会系のみなさん、あなたはどちらの人材ですか?
「若者はなぜ3年で辞めるのか」を読んでそんなことを考えました。これ怨念と問題意識がこもった名著です。未読の方はぜひ。Amazon評価も高いです。