リグネットの報告は、中国がさらに核戦力を大幅に増強させながらも、核軍縮や軍備管理の国際的な取り決めにはまったく関わっていない事実を強調していた。
米国、ロシアという核兵器の超大国は相互の核軍縮の取り決めをまだ生かしており、その結果の制限や誓約が厳存する。無制限の核戦力を増強することはできないのだ。しかし中国にはその種の規制はまったくないのである。
政治状況を見ても、いまの中国が米国やロシアを相手に核兵器の削減の交渉に臨むはずがない。宿敵だったインドが最近、核戦力を強めている事実からも、中国の核軍縮はないと見てよいだろう。だからこそ、中国の核軍拡は米国にとっても、日本にとっても危険なのである。
日本にとって決して別世界の出来事ではない
リグネットの報告は結論として以下のように総括していた。
・中国が着手した大規模な鉄道利用の核ミサイル移動・発射の計画が実際に機能するまでには数年を要するだろうが、この動き自体が中国の核戦略全体の重要な新事態である。中国の核戦略は多弾頭化された弾道ミサイル、潜水艦発射ミサイル、固形燃料ICBM、地上移動ICBMなどを主体に、さらにこの鉄道利用ICBMが加わって、米国やアジア地域の安定を脅かす形で拡大している。特に鉄道利用ミサイルは中国側の発射準備の体制の証拠を得ることが非常に難しい点に注視すべきだ。
中国の核戦力や核戦略、そして米国側の対応となると、「核」に関わる安全保障の一切をただ忌避するというわが日本にとっては、最も理解の困難な領域だと言えよう。まして、そうした事態の展開への日本としての対応となると、もう別世界の出来事としか受け止められないという向きも多いだろう。しかし、日本への影響が避けられない米中関係の軍事面では、こうした事象もまた現実の出来事なのである。
-
東南アジア諸国は日本の改憲に賛成している (2013.01.30)
-
北朝鮮奪取を目論む中国の野望 (2013.01.23)
-
米中が余儀なくされる「ぎこちない抱擁」 (2013.01.16)
-
悩ましい中国との関係構築、日本がまず行うべきは日米同盟の強化 (2013.01.09)
-
なぜ「憲法が日本を亡ぼす」のか (2012.12.26)
-
右傾化ではない、日本は「真ん中」に戻っていくだけ (2012.12.19)
-
日本にも米国にも脅威となる北朝鮮のミサイル発射 (2012.12.12)
-
戦いの火蓋が切られた米中の無人機開発競争 (2012.12.05)
-
第5世代ステルス戦闘機を開発、空でも日米を威嚇する中国軍 (2012.11.28)