市販薬:ネット販売容認 国側の敗訴確定 最高裁判決
毎日新聞 2013年01月11日 13時48分(最終更新 01月11日 23時06分)
医師の処方箋なしで購入できる一般用医薬品(市販薬)のインターネット販売を規制した厚生労働省令は無効だとして、ネット販売2社が販売権の確認などを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(竹内行夫裁判長)は11日、ネット販売を一律に禁止した省令は違法で無効との初判断を示し、国の上告を棄却した。国側逆転敗訴の2審・東京高裁判決(12年4月)が確定し、事実上の販売解禁状態となった。
裁判官4人全員一致の意見。
訴えていたのは規制前からネット販売していた「ケンコーコム」(東京都港区)と「ウェルネット」(横浜市)。判決は2社の販売権を認める内容だが、省令を無効としたことで同業他社も販売が事実上できることになった。田村憲久厚労相は「判決の趣旨に従い、必要な対応策を講じる」と述べ、国は規制の見直し作業に入った。
09年の薬事法改正で市販薬は副作用リスクの高い順に1〜3類に分類された。改正法にはネット販売を定めた条文はないが、厚労省は副作用被害防止のため対面販売を原則とし、同年の省令で風邪薬や頭痛薬などの1、2類のネット販売を原則禁止した。訴訟では行政機関が定めた省令が、改正薬事法の趣旨を超えた制限に当たるかが争点となった。
小法廷は、憲法が保障する「職業活動の自由」の観点から「規制はネット販売を事業の柱としてきた業者の自由を相当程度制約する」と指摘。改正法の条文や立法過程に着目し、「条文に規制の趣旨を明確に示すものはない。法改正の過程で、ネット販売の安全性に懐疑的な意見が多く出された事実はあるが、国会に販売禁止の意思があったとは言い難い」とした。
その上で「薬事法の趣旨が1、2類のネット販売を一律に禁止するほどの省令制定まで厚労省に委ねたと理解するのは困難。一律に禁止した限りにおいて違法」と結論づけた。
1審・東京地裁判決(10年3月)は、規制には合理性があるとして国側が勝訴。これに対し、東京高裁は改正薬事法にネット販売に関する規定がない以上、規制に根拠はなく省令は違法で無効とした。【石川淳一】