マダム不二子の宝石鑑定学


 

 

 あら、いらっしゃい。

 あなたね?アタシの話を聞きたいっていうのは。

 そうね、今は悪い気分じゃないから、チョットだけなら話してあげてもイイわ。

 それじゃ、今日は『世界の有名なダイヤモンド』について話してア・ゲ・ル・・・・・・

 

 

 

<ブルー・ダイヤ> 

 これ、アタシいい思い出ないのよね。一度は手に入れたんだけど、ルパンのせいで結局手放す事になっちゃって。

 『ブルー・ダイヤ』、通称『呪いのホープ・ダイヤモンド』。どうしてこのダイヤが『呪いのホープ・ダイヤ』なんて言われるようになったかご存知?

 ・・・・これはね、元々はインドにあったの。ヒンズー教の女神像の目だったのよ。それを1人のフランス人が盗み出したのだけど、狼に襲われて無惨な最期を遂げた・・・それを皮切りに、次々と持ち主に不幸が起こるようになったのよ。フランス王ルイ16世と王妃マリー・アントワネットは断頭台の露と消え、また別の大富豪の1人はタイタニック号と共に大西洋に沈み・・・何でも、あのマリリン・モンローも映画の中でホープ・ダイヤを身につけたとか。だから、「呪われたダイヤ」ってワケ。

 ・・・・・って、ねえ、ちょっと。コレ、信用しないでよね!?

 アハハハ・・・・本気にしちゃったの?バッカねえ、呪いなんてあるわけないじゃない。これはね、あのカルティエが捏造した作り話よ。当時、お得意さんにそういういわく付きのモノが大好きな女性がいたんですって。その彼女になんとか買わせようと企んだカルティエが作った、いわばキャッチコピーみたいなモノね。フランス人が盗み出したのは本当だけど、彼は別に狼になんて襲われちゃいないし、マリー・アントワネットがホープ・ダイヤを好んだなんて記録は残っていないわ。まあ、どう捉えるかはアナタ次第だけれど、ね。

 これ、本物はワシントンのスミソニアン博物館に展示してあるのよね。ああ、もちろん飾ってあるのはレプリカよ。本物はどこかに仕舞われてるってワケ。まったく、可愛くないことするんだから!

 このダイヤモンド、本当に真っ青なのよ。サファイヤかと見紛うぐらい。普通、ダイヤモンドっていうのは無色透明であればあるほど、価値も上がるんだけど、中には色の付いたダイヤモンドもあるのよね。それをファンシーカラーダイヤモンドって言って、とても希少価値が高いダイヤなの。普通は赤、黒、黄色、緑の順に価値があって、このブルー・ダイヤは色としてはそう珍しいタイプでもないんだけど、素晴らしいのはその大きさよ。なんと言っても45.5カラット、時価210億円ってのは、とても魅力的でしょ?

 

 

<リージェント・ダイヤ>

 何だか、こんなのが続くわねえ・・・・ま、いいわ。『リージェント・ダイヤ』はね、『叶わぬ夢を囁く魔の宝石』とも言われているの。主立った持ち主にマリー・アントワネットだとか、ナポレオンなんかがいるせいでしょうけど。

 これはね、インドから出た最後の大粒ダイヤなの。これが発見されたのは1701年なんだけど、当時はダイヤと言えばインドでしか見付からない、と思われていたのね。おかげで世界中からダイヤを求める宝石商が殺到して、国内ではあらかた掘り尽くされてしまっていたの。そんな中で出たのが、このリージェント・ダイヤって訳。発見された当時は410カラット、グラムにして約82g。大きさで言ったら、そうね・・・・・直径4cmぐらいのボールと、大体同じかしら。
 これを発見した鉱夫は、自分の腿に穴を空けてそこにダイヤを隠して鉱山から脱走し、海岸まで逃げて、そこに停泊していたイギリス商船の船長に、ダイヤと引き替えに自由の国へ連れて行って欲しいと頼んだのね。ところがその船長は、船が沖まで来ると、さっさと約束を反故にして、その鉱夫を殺して海に投げ込んでしまったのよ。
 その後ダイヤはインドの商人からマドラスのイギリス人知事サー・トーマスの手に渡り、研磨されて今の大きさになったわ。今の大きさは約140カラット。大きさは半分以下になったけれど、とにかく美しいダイヤに仕上がった。それを、今度はフランスの貴族オルレアンズが買い取ったのね。このダイヤの名前、リージェントっていうのは、このオルレアンズがフランスの摂政(リージェント)だった事から付いた名前よ。

 その後フランス革命のどさくさに紛れて一時期盗難にあっていたのだけど、こんな大きなダイヤモンド、そもそも捌こうと思う方が間違いなのよ。よほど特殊なルートでも持っていない限り、どうしたって目立ってしょうがないわ。いくら警察がドジだって、一発でアシがついて終わりよ。泥棒達も同じ事を考えたのか、結局見つかって、今は王冠にはめ込まれた姿で、ルーブル美術館に展示してあるって訳。

 この『リージェント・ダイヤ』、ルーブル閉館後は自動的に地下の保管庫へ収納されるのよね。見てらっしゃい、そのウチ絶対アタシのものにしてみせるから!

 

 

<コイヌール>

 これはね、『男には災いをもたらし、女には幸福をもたらす』という伝説を持つダイヤなの。といっても、このダイヤの場合はウソじゃないわ。そのあまりの美しさに、何千年もの間、血で血を洗う抗争に巻き込まれ続けてきたダイヤモンド・・・・それが『コイヌール』なのよ。『コイヌール』っていうのは、古代インドに伝わるサンスクリット語で『光の山』という意味ね。
 このダイヤが歴史の表舞台に登場したのは1304年の事だけど、本当はもっと古いと言われているわ。詳しい事は定かじゃないけれど、一説によると3000年前とか5000年前とか。だから、歴史上最も古いダイヤモンドと言われているの。

 このダイヤ、1526年まではインドのマハラジャ同士で争いの元となっていたのね。だけどその年、隣からムガール帝国(現在のアフガニスタン)がインドに侵攻してきて、『コイヌール』を押収してしまうの。そして更に200年後、今度はそのムガール帝国が隣のペルシャから攻められて負けてしまう。そこで『コイヌール』の所有権はペルシャ王の手に渡ることになったの。

 ペルシャ王の手に渡っても、『コイヌール』を巡る争いは終わらなかった。何世代にも渡って、身内で権力闘争が続くのね。『コイヌール』の持ち主となった王は、例外なく悲惨な最期を遂げたのよ。最後には、第二次シーク戦争によって侵攻してきたイギリス軍に破れ、とうとうイギリスの植民地となってしまったの。

 このダイヤを献上されたのは、あのヴィクトリア女王。彼女は随分と迷信深い人だったらしくて、死に際に『男の王はコイヌールを身に付けてはいけない』って遺言を遺すのね。実際、『コイヌール』のために命を落としたのは男ばかりで、女は逆に救われる事が多かったというから、あながち迷信でもないのかも知れないけれど・・・・・とにかくそれが今でも守られていて、現在はこの『コイヌール』、女性しか持つことを許されていないって訳。普段はあのロンドンタワーの宝物館に厳重に仕舞われているわ。
 このダイヤ、世界最初の万博、ロンドン万博で展示されたのね。だけど当時の『コイヌール』はインド式のカットが施されていて、見た人に随分不評だったの。当時のインドっていえばイギリスの植民地でしょ?当然といえば当然の反応よね。

 そこでコレ、どうしたと思う?なんと再カットしてしまうの。おかげで、カット前は186カラットもあったダイヤが、カット後は108カラットよ!まったくもう、なんてもったいない事をしてくれたのかしら!

 でも、本当に『コイヌール』ほど凄惨な歴史を辿ってきたダイヤも、他にないのよね。どう、なかなかドラマチックでしょ?

 

 

<オルロフ・ダイヤ>

 最初に話してあげた『ホープ・ダイヤ』のロシア版とも言われているのが、この『オルロフ』よ。コチラのダイヤも『死をもたらすダイヤ』と言われているの。

 これは最初『ムガールの星』と呼ばれていて、ムガール帝国(現在のアフガニスタン)の王子のモノだったの。信心深い王子は、自分の信仰する寺院にこのダイヤを奉納し、「この石に手を掛ける者は神の怒りに触れるだろう」っていう予言をしたのね。

 その後、このダイヤは1人のフランス人によって盗み出され、あるイギリス人の手に渡ったの。だけど王子の予言が本当に当たったのか知らないけれど、とにかく持ち主が次々と横死を遂げるのね。このダイヤを盗んだフランス人は殺されダイヤを買ったイギリス人は発狂死し、更にはこのダイヤを扱った宝石商までが強盗に射殺され・・・・他にもこのダイヤを盗んだ強盗は捕まって死刑になったり、とにかくこのダイヤに関わった人間にロクな事が起こらないって訳。

 結局このダイヤはオランダでオークションに掛けられる事になったのだけど、それを買ったのがロシアの貴族オルロフよ。このダイヤの名前の由来は、彼の名前から来てるのね。

 オルロフは、小国を買えるほどのお金を注ぎ込んでこのダイヤを買い、それを当時のロシアの女帝エカテリーナ2世にプレゼントするの。オルロフは、エカテリーナ2世の恋人だったのよ。ね、素敵な恋人だと思わない?

 もちろん、コレを貰ったエカテリーナは狂喜乱舞よ。彼女は自分の笏にそれを付けて、長いこと愛用するの。

 だけど、ダイヤの呪いは終わらないのよね。結局その後、貴族オルロフはエカテリーナ2世に捨てられて発狂死し、彼女の死後皇位を継いだ皇子達も次々に怪死し、最終的にロシア革命でロマノフ王朝が滅びるまで続くのよ。ロシア革命では皇帝一家はもちろん、皇帝の親戚から重臣、家来、下働きやペットの犬に至るまで皆殺しにされたっていうから、もしダイヤの呪いが本当だとしたら凄まじい力よね。

 今現在、この『オルロフ』はクレムリン宮殿の中にある博物館にあるわ。見つかった当時は500カラットという巨大なダイヤだったんだけど、長い間に研磨を繰り返されて、現在は約195カラット。それでも、時価30億円は下らないって言われているわ。形がちょうど、ゆで卵を半分にしたような形をしている事から、かつてムガール帝国にあったとされる280カラットの大粒ダイヤ『グレート・ムガール』ではないかっていう噂もあるのよね。

 それというのもこの『グレート・ムガール』、消息不明なのよね。形がちょうど、卵を半分にしたような形って記録が残っているだけ。だから、『オルロフ=グレート・ムガール』じゃないかって言われてるんだけど、噂は噂よ。本気にしないでね?

 

 

<カリナン・ダイヤ>

 このダイヤは1905年、南アフリカのプレミア鉱山で見つかったの。発見した鉱夫は、最初は何かの悪戯だと思ったらしいわ。ところが掘り出してビックリ、サイズが5×6×10cm3106カラット(621g)、その上ほぼフローレスっていう、巨大なダイヤモンドの原石だったんだから、驚かない方がどうかしてるでしょ?これ以上大きなダイヤモンドは、今でも見つかっていない。文字通り、世界最大のダイヤなのよ。

 このダイヤの名前は、鉱山の持ち主だったサー・トーマス・カリナンにちなんで名付けられたの。ダイヤ自体はこの後南アフリカ政府に売却され、それからイギリス国王エドワード7世のバースディ・プレゼントとして献上されるのね。ああ、エドワード7世ってのは、『コイヌール』の話に出てきたヴィクトリア女王の息子よ。

 この巨大ダイヤをプレゼントされたエドワード7世は、ダイヤの研磨をあの『ロイヤル・アッシャー・ダイヤモンド社』に依頼したのね。『ロイヤル・アッシャー・ダイヤモンド』、皆もテレビのCMで聞いた事あるでしょう?

 アッシャー社は以前にも、『エクセルシオー』という、995カラットのダイヤを研磨した実績があったの。だけど、ここまで大きなダイヤは流石のアッシャー社も初めてで、研磨の仕様がなかったのね。だから原石を割るしかなかったの。

 これは皆も知ってるかしら?ダイヤモンドはね、この世に存在する物質の中で一番硬いと言われているの。だから、そう簡単に割れたりしないわ。何度も何度も挑戦して、ようやくダイヤが割れた時、社長のアッシャーは緊張のあまり気絶したと言われているそうよ。だって、依頼主はイギリス国王よ?もし失敗して粉々になってたりしたら、下手をすれば重罪、会社は倒産。この『カリナン』の研磨は、アッシャーにとって人生最大の賭けだったのよ。その賭けに勝った事で、アッシャーは後にオランダのユリアナ女王から、一業種一社しか名乗ることを許されないという『ロイヤル』の称号を与えられるのよ。現在の社名が、『ロイヤル・アッシャー・ダイヤモンド』なのは、実はそういった理由ってワケ。

 結局『カリナン』は9つの大きな固まりと、96個の小さな石と、その他合計19.5カラットの未研磨ピースに分けられたの。中でも9つの大きな石は全て、『カリナン1世』から『カリナン9世』の名前が付けられ、イギリス王族の所有になっているわ。

 このうち、一番大きいのは『カリナン1世』と呼ばれるダイヤよ。これは別名『偉大なアフリカの星(The Great Star of Africa)』とも呼ばれていて、世界最大の530.2カラット。これだけでも充分スゴイと思わない?これは王笏に飾られているわ。

 他にも『カリナン2世』(317.4カラット)でイギリス国王が被る王冠に、『カリナン3世』(94.4カラット)、『カリナン4世』(63.6カラット)はスコットランド女王メアリーの王冠、とそうそうたるモノよ。

 現在はあの『コイヌール』と並んで、ロンドンタワーに仕舞われているわ。展示してあるモノもあるから、機会があれば行ってみたらどうかしら?もちろん、アナタが見るモノが本物だって確証はないけれどね、ウフフ・・・・

 

さあ、こんなモノでいいかしら?

次があるかどうか分からないけれど、もしアナタが次を希望するんだったら、ココの管理人にそう言っといて頂戴。

ココのサイトの管理人ったら怠け者なんだから、アナタが言わないと、きっと永遠に続きを書かないわよ?

それじゃあ、バイバイv

 

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