管理人隠れコラムその2(笑) 知名度No.1――ルパンと愛銃
ルパン三世の愛銃として知らぬ者はいない「ワルサーP38」だが、知っているのは名前だけで、実態については意外と知らない方も多いのではないだろうか。「実銃・ワルサーP38」についてについては多くの専門家が述べているので、ココではあくまでも「ワルサーP38・ルパン三世仕様バージョン」という視点から考えることにする。
と言っておきながらいきなり実銃の話で申し訳ないが、果たして実際の「ワルサーP38」はどんな銃なのだろう。 「ワルサーP38」は『オートマチック』と呼ばれるタイプの半自動拳銃である。ちなみに『自動拳銃』といえば、現在では『フル・オートマチック』と呼ばれる連発タイプの銃を指す(マシンガンやサブマシンガンなどがソレに当たる)。 「ワルサーP38」の故郷ドイツでは、大きく3つのタイプに分けられるという。まず「9mmパラベラム弾」を使用する一般的なタイプ。そして「38口径弾」を使用するタイプ。3つ目は「45口径弾」を使用するタイプである。だが、現存する「ワルサーP38」の殆どが一番最初の「9mmパラベラム弾使用タイプ」であることを考えると、2番目と3番目のタイプはほとんど市場には出回らなかったようである。 ココでちょっと話が逸れるが、この『口径』とは一体なんぞや、と思われた方が多いのではないだろうか。以下、興味のない方はサクッと読み飛ばす事をオススメする(笑) さて。 公式設定によれば、ルパンの愛銃は一番最初の『9mmパラベラム弾』使用タイプ、となっている。いかな大泥棒でも『38口径』や『45口径』モデルを入手するのはさすがに難しかったのだろうか、一番ポピュラーなタイプである。ちなみにこの『9mmパラベラム弾』、先ほど例に出した『9mmショート』と名前は似ているが別モノである。念のため。ちなみに何が違うのか知りたい方もいないだろうが、一応説明しておくと長さがたったの2mm違うだけなのだ。『9mmパラベラム』は9×19(mm)、『9mmショート』は9×17(mm)。定規などで実際に長さを確認して頂ければ、弾の意外な大きさに驚かれる事と思う。 次に大きさだが、次元の持つリボルバーと違って、ワルサーに代表されるオート拳銃はバレル交換が簡単に出来る訳ではない。従って、『ワルサーP38』といえばこの大きさ、と決まっている。それによればワルサーのバレル(銃身)は12.7cm。総重量は960g。次元の愛銃と比べれば若干バレルが長いが、グリップ(握り)の部分は『S&W M19』の方がゴツいため、銃全体を見れば次元の愛銃の方が大きい。 そして、ルパンの愛銃ならではの特性に、『装填弾の一発目は、護身と敵を無闇に殺さないために麻酔弾になっている』という設定が挙げられる(アニメ・ルパン三世パートVより)。それ以外にも、作品によっては水銀弾を使用していたりする。麻酔弾や水銀弾が実在するかどうかの論議はさておき、通常ワルサーに代表される『オート拳銃』は弾の応用がきかない場合が殆どである。何故なら、強度や耐久性にかけては、オートはリボルバーに劣るため、規定の弾薬以外の弾を装填すれば壊れるか暴発するか、ともかく無事じゃすまないのだという。
こうして比較してみて、ルパンの愛銃『ワルサーP38』がどんな銃だか、大体お分かり頂けただろうか。 ルパンのワルサーP38がどんな風に弾を発射するのか興味のある方は、アニメ・旧ルパン第11話「七番目の橋が落ちる時」をご覧頂きたい。驚くほど詳細に、本物そっくりに描かれている。
ルパンの使っている『ワルサーP38』は、第2次世界大戦中、ナチス・ドイツに制式採用されたことでも知られている。事実、あのヒトラーがピストル自殺をするのに使用したのもこの『ワルサーP38』だと言われている。 現在、ドイツ・ワルサー社は『P38』を生産していない。大戦においてドイツが敗北したとき、生産中止になったからである。そのかわりワルサー社は、『P38』にかわる新モデルを発表し続けてきた。現在一番新しいのは『ワルサーP99』と呼ばれる銃である。 モンキー・パンチの原作では何の銃を使用しているのか不明だったり、山上正月の『ルパン三世y』では『ワルサーP99』を使っていたり、と紙面においては一貫性のないルパンの愛銃だが、ことアニメになると、彼は昭和46年の登場時から一貫して『ワルサーP38』を愛用し続けてきた。 なにか理由でもあるのだろうか、とも思う。ところが、ルパンはガンマンでも無ければ殺し屋でもない。殺しの腕は超一流だが、それで飯を食っているわけでもない。ルパンはあくまでも『泥棒』であり、銃は『己の護身用』に身につけているにすぎないのだ。 もちろん、ルパンはルパンなりの『こだわり』があるに違いない。ルパンの銃の使い方は実際かなり荒っぽいのだが(あれほど頻繁に仕掛けを施していたら壊れない物も壊れるだろう。オート拳銃というのは以外と繊細な仕組みになっているのだ)、それでも壊れずルパンについてくる。女性に例えれば『どんな目に遭わされても絶対に裏切らない、一途にルパンを愛する健気なオンナ』とでも言おうか。 いくら『英雄色を好む』を地でいくルパンとはいえ、そこまで自分に惚れ抜かれては男冥利に尽きるというものではないだろうか。管理人は生憎と女なので、男性諸氏のそこら辺の気持ちは想像する他ないが。 一言で言うなら、次元と銃の関係が『じゃじゃ馬馴らし』なのに対し、ルパンと銃の関係は『黙って俺に付いてこい』的なモノなのだと思う。ルパンにしては珍しくアナログな関係。一見遊び上手で洒落っ気があってスマートで、そんな亭主関白的なモノとは無縁に見えるルパンだが、こういった細かい部分に普段は見られない、次元とは同じようで違う、『漢』なルパンが存在していて、なかなか面白い。 それに、大体亭主関白な男にはプライドの高い男が多いモノである。ルパンもプライドの高さ、誇り高いという点にかけては相当のモノがある。ルパンのプライドの高さが、こういう部分にまで見え隠れしているようで、非常に興味深い。
<蛇足> 元々アメリカ人はリボルバーを好む。西部劇なんか見ていただくと分かると思うが、西部劇では銃と言えばリボルバーである。それに対して、ヨーロッパではオートマチックが主流だという。アメリカで銃の腕を磨き、マカロニ・ウェスタンが好きだと公言する次元がリボルバーを好み、フランスの大泥棒アルセーヌ・ルパンの血を引くルパンがオートマチックを好むのも当然かと思われる。 (2003/12/18改訂 Destroyer様、ご指摘有り難うございました) |