海上自衛隊の護衛艦に対し、引き金を引く一歩手前の「レーダー照射」を行った中国は、今年に入り尖閣諸島周辺海域での挑発行為をさらに悪質化させている。以前は海上保安庁の巡視船が警告すると、それなりの反応を返していたが、いまは完全無視。今月4日には尖閣周辺の日本の領海に中国国家海洋局所属の海洋監視船「海監」2隻が侵入し、過去最長の14時間以上に及ぶ居座りを行った。軍事衝突の“最後の一線”を越えるのは、もはや時間の問題か。
昨年9月の日本政府による尖閣諸島国有化以降、中国は連日のように尖閣周辺の領海侵犯を繰り返し、4日にはついにその数が25回に及んだ。
当初は10隻程度の船団を組んでの航行も確認されたが、最近は2、3隻程度の航行が目立つ。規模を縮小したかのようにもみえるが、実情は違う。領海での示威行動は、「以前と変わらないどころか、むしろ悪質化している」(海上保安庁幹部)というのだ。
「領海侵犯する中国公船は、以前は海保の巡視船による警告に対し、無線で中国側の言い分を伝えるなど呼びかけに応じていた。ところが、最近ではそれさえも無視し、わがもの顔で航行を続けている」(同)
今月2日には、東シナ海を管轄する福建省の部隊に高圧放水銃などを備えた新型巡視船「海艦8002」を追加配備。挑発行為がさらにエスカレートする危険性も高まっている。
中国軍が“攻撃”を先鋭化させた背景には、軍全体を指揮する総参謀部が先月、全軍に対して出した指示が関係しているとみられる。
「総参謀部は2013年の任務について『戦争の準備をせよ』との指示を出した。尖閣諸島周辺での自衛隊との軍事衝突を意識したもので、習近平新指導部が『尖閣については日本に譲歩しない』との姿勢を明らかにしたものだ。この指示以降、中国軍の挑発は明らかに悪質になっていった」(外交筋)
今回、レーダー照射という戦闘一歩手前の危険行為に及んだのは軍部の暴走である可能性が高いが、その狙いが日本による反撃を引き出すことにあるのは明らかだ。現場では、“次の一手”を危惧する声も上がっている。
「海保は、あるシナリオを警戒している。国際法上、海保は漁船に対しては放水できるが、公船にはできないことになっている。これを悪用し、漁船に紛れて監視船などの公船を繰り出してくることが考えられる。放水されている漁船の陰から姿を現し、わざと放水を受けて因縁を付けるつもりだ。“当たり屋”の手法と一緒だ」(防衛省関係者)
日中戦争の直接のきっかけとなった1937年7月の盧溝橋事件では、関東軍(当時)が中国共産党軍からの発砲を受け、戦争に踏み切ったとされる。尖閣奪取をもくろむ中国も同じパターンを狙っている。
「中国軍は『日本が先に攻撃した』という既成事実を何としても作りたい。それまでは何度でも挑発行為を続けるつもりだ」(中国事情に詳しいジャーナリストの宮崎正弘氏)
海保や自衛隊には緊張の日々が続く。
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