ドアノックは3回の理由
社会人になってから先輩に教わったり、また会社から機会を与えてもらい、
ビジネスマナーを中心とした教育・研修を随分と受けた。
接遇が主たる仕事上、必要不可欠だったからである。
そして気が付けばいつの間にか僭越ながら、ビジネスマナーの教育、
研修に携わる仕事を手がけるまでになっていた。
今日はそんな経験から話を一つ。
新入社員として身に付けるビジネスマナーは、
最初はどこの会社でも先輩をお手本として見よう見真似である。
その内、社内・外の研修に参加させてもらったり、または転職を経験したり
すると、今までの会社で学んだやり方やマナーが通用しないこともあるのだ
と知ることになる。
その都度、自己流だったり無知だったりすることに恥じ入ることになるが、
学べば学ぶほど幾つか方法があって、本来のやり方や正しいマナーとは
どれなんだろうかと考えて悩むことになった。
研修や講習で幾人か素晴らしい先生にも出逢ったが、それでも正解を
見つけられずにいた。
例えば標題の、『ドアノックは3回』の理由。
ビジネスマナーでは、「2回」はトイレノックだからダメだと教えられる。
にもかかわらず、数社の転職を経験しているが、勤めた会社では圧倒的に
日常は2回で済ませているのである。3回を貫くところに特に意味は無いよう
に思われた。
では3回と教えているマナー講師から見たら、2回は無作法なのかというと、
ビジネスマナーは臨機応変、郷に入れば郷に従えで、時には周りに合わせ
2回で済ませるのはよしとされる。それでは3回と教えている意味が無いで
はないかと突っ込みをいれたくなる。
ところが自らがビジネスマナーを教える講師となると、やはりお手本として
日常も3回ノックの基本を示すことになる。だがそれにしても正しくは3回と
教えるのはなぜか?説明ができない。と、随分悩んだ。
別段質問を受けた訳でも、誰に問われた訳でもないのにずっと疑問として
持ち続け、機会を作ってはネットや雑誌、書物に参考文献は無いものかと
あたった。それでもなかなか答えを見つけ出すことができずにいた。
ならばドアのノックの習慣がある欧米ではどのようにしているかと、映画や
ドラマの中からも参考を探した。3回どころか観た映画やドラマはどれも
素早く「コンコンコンコンコン」と5回くらい叩いていて、ますますわからなく
なった。
そんな時、『ビジネスマナーとは』という原点に立ち返ってみることにして、
図書館で本を探した。
するとドアノックの回数について言及された書物こそ見当たらなかったが、
数種の良書に出会えた。
主に日本の伝統的な和の作法や、幾つかの有名なデパート・航空会社の
サービス、ホテルマンの接遇、心理学やマーケティングの本などである。
そこからビジネスマナーに限らず、マナーとは、『相手を思う心』であると
再認識させられた。相手を思う心があって、そしてそれを形にすること。
そこから考え抜いて、自らの求める答えをやっと見つけ出したのである。
『ドアノックは3回の理由』。
今年新社会人になる皆さんにはこれから、この先の長い社会人生活を
通して、自らによって考え、ぜひ答えを見つけ出して欲しいと願う。
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