「上司の言うことが聞けないのか!」—権威主義者を見分ける4つのポイント

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2013/02/05



うーん、これは面白い一冊。よくまとまっているのですが、ところどころ怨念めいたものを感じさせます。特に面白かった「権威主義者の見分け方」から部分的にピックアップ。みなさんの周りにもいますよね、こういう人。


1. 偉人の言葉を引用する人

偉人の言葉や格言をやたらに引用する人は、権威主義である可能性が高い。引用の対象が一人か二人に限られ、引用頻度が高い場合、それが教条になっていることは明らかである。

(中略)多くの場合、そこで引用している言葉は、ほんとうは、自分の意見なのである。自分の意見を言いたいところで、歴史上の人物の言葉を借りてくるということは、じつは「自分の意見に歴史上の人物も賛成している、したがって、自分の意見は正しい」という形で自分の意見を押し付けようとしているわけである

あるあるですねー。自分の主張を「補強」するための引用というのは、基本的に、自信がないことの裏返しです。ぼくもこれはよくやります。本当にフラットな目線を持っており、自分の意見に自信があれば、偉人の名言を引用する必要なんてないんですよね。


2. 言葉遣いで見抜く

権威主義的人物は言葉遣いに特徴がある。

「一致団結して努力する」「誠心誠意やらせていただいている」「死ぬほど頑張れ」「あいつはいい根性をしている」「石にかじりついてでも間に合わせる」「徹底的に調べる」「厳しく取り調べる」「みんな悲しんでいる」などである。

これらは、誇張的であると同時に、単純な認知様式を示している。言語に加罰的要素が若干多いのも特徴である。

これもあるある。著者によれば、権威主義者は「白と黒」をいとも簡単に分けようとしてしまう、単純な認知様式を持つ人物です。本来はもっと複雑で、簡単に言い切れるわけではないのにも関わらず、社内は不和に満ちているのに、「我々は一致団結して頑張ってる」とか言い切れてしまう鈍感な人たちです。


3. 賞罰の激しい人

信賞必罰の差があまりに激しい人は、権威主義者と見てよい。

(中略)賞罰が激しいというのは、それぞれの部下の行為がそれに値するから賞罰しているのではなく、むしろ、賞罰によって自分の価値観などへの同調や同一視を促そうという動機を物語るのである。相手が自分の価値判断に心酔しないので、賞罰によってそれを引き起こそうとしているわけである。

褒める・叱るという行為を、自分に同調させる手段として利用している人たちということですね。「おまえは(俺の気持ちをよく分かっているから)よい人間だ、褒美を与える」「おまえは(俺の価値観にそぐわないから)ダメな奴だ、罰を与える」という具合です。たくさんいますよね、こういう人。


4. 人間関係に家族関係の言葉を適用する人

自分の部下を他者に紹介するときに「俺の舎弟だ」とか「部下だが弟みたいな奴だ」「ウチの部では俺の女房役だ」などと言うような人がいる。本来なら家族関係の呼称を安易に家族以外の人間関係に用いるのは、権威主義的な特徴を示している。

(中略)このような特徴は全体として、権威主義者独特の対人依存的な心理ないしは属人的傾向を示している。仕事や人間関係には、種々の不安や不安定さがつきものである。このような言葉遣いはそれらの不安を、家族付き合いの文脈で捉えることによって解消したいという心情をも示している。

じつは人間関係に不安があるから、こういう言葉を使っている、というのは興味深い指摘ですね。おのれの弱さを、他者を貶めることによって解消しようとしているとも言えるでしょう。


書中では他にも「他者に忠誠心を要求する人」「誰かへの尊敬の念が極端に表に出る人」「やたらとブランドにこだわる人」などなどなど、なんと25のポイントが紹介されています笑 ここは特に、上司に振り回された経験がある人は共感する部分だと思います。


ホロコーストの記述に始まり、権威主義の悪を徹底的に暴いた一冊。これは隠れた名著ですね。おすすめです。古本も安く、Kindle版も用意されています。