福岡地検特別刑事部は３１日、「ハンド・パワーで病気を治すことができる」と称して有料セミナーをしていた福岡県篠栗町の会社「アースハート」が法人税約１０億円を脱税した疑いが強まったとして、同社と前社長の女（６５）の自宅などの家宅捜索に着手し、前社長ら数人を逮捕した。同社は宗教法人への寄付金が非課税になることを悪用し、受講料の一部を関係する宗教法人への寄付と偽る手口で約３０億円の所得を隠した疑いがあり、福岡地検は福岡国税局と合同で全容解明を目指す。

　福岡地検の捜査員らは３１日午前８時過ぎ、篠栗町内にある前社長宅と近くのアースハートに入り、家宅捜索を始めた。

　アースハートは００年設立。捜査関係者などによると、セミナー受講者の一部に受講料を大分県九重町に本部を置く宗教法人「ひのもと」名義の銀行口座に振り込むよう指示。０７〜０９年度の３年間に受講料として得たとみられる約３０億円を「ひのもと」への寄付金に見せかけ、法人税約１０億円を免れた疑いがある。アースハートの現社長が０６年から「ひのもと」の代表を務めていた。

　関係者によると、アースハート側はセミナー受講者に宗教法人の存在や支払った受講料が寄付金になることについて、説明していなかったという。福岡国税局が査察調査に入り、受講料の振込先などの事実関係を受講者から確認していた。

　アースハートのセミナーには自分や家族の病気に悩む人たちが参加し、数回のセミナーで受講料７０万円を払った人もいたという。

　アースハートを巡っては昨年４〜１１月、高額な受講料をだまし取られたとして、福岡、長崎、愛知各県や東京都などに住む２０〜６０代の男女４７人が慰謝料など計約７０９６万円の賠償を求めて福岡地裁に提訴している。原告側は「手かざしによる『ハンド・パワー』や『マインドパワー』を習得すれば病気が治るとだまして多くの会員を集め、多額の受講料を払わせた」と主張。一方、会社側は裁判で請求棄却を求め、ハンド・パワーについては「科学的なものだ」と主張していた。【川上珠実、尾垣和幸、山本太一】