通学路アドバイザー:自治体派遣 専門家、足りない 280人想定、1.5億円計上…でも研究者は78人のみ

毎日新聞 2013年02月04日 東京夕刊

 昨年4月に京都府亀岡市で集団登校中の小学生ら10人が死傷するなど通学路での事故が相次いだことを受け、文部科学省は13年度から、通学路の安全対策が急務の自治体に「通学路安全対策アドバイザー」を派遣する。専門知識を基に効果的な対策を実施するのが狙いだが、一方で国内には通学路を含めた生活道路の在り方を専門的に研究する学識経験者が少ない。安全の実現に向け、アドバイザー確保が大きな課題になっている。【馬場直子】

 文科省によると、アドバイザーは道路行政や交通規制に詳しく、改善策を助言できる専門家で、警察官OBや交通計画、都市計画を専攻する大学教授らを想定。約280人を派遣するとして13年度予算案に約1億5000万円を計上した。

 候補に挙がる専門家の中でも「交通工学」を専攻する研究者が中心的な役割を果たすとみられる。しかし、公益社団法人・土木学会が発行する「全国土木系教員名簿」によると、交通工学を掲げる研究者は78人にとどまる。通学路を専門分野とする研究者となると更に限られ、生活道路対策の第一人者、久保田尚(ひさし)・埼玉大大学院教授は「全国でも数人程度だろう」と推測する。

 久保田教授によると、過去の交通事故は幹線道路を中心に起きていたため、交通工学で「安全を考える」と言えば幹線道路対策を意味することが多かった。幹線道路対策は1960年代から研究が始まり歴史も長い。半面、生活道路対策の研究は広がっていない。

 生活道路の研究者を育成する環境も不十分だった。車道に凸部を設けて車のスピードを落とす「ハンプ」の設置は01年に法的に認められたが、約20年前までは警察が「危険」と考え、実証実験も行われなかったという。生活道路の研究は、海外の先進事例の視察や書物の翻訳にとどまっていたとされる。

 しかし、10年の警察庁統計によると、交通死傷事故の発生件数は生活道路と幹線道路でほぼ同数。生活道路の交通工学を専攻する研究者の育成は急務だ。久保田教授はアドバイザー確保について「交通工学以外でも交通計画や交通心理学などを研究する人たちに講習を受けてもらえば派遣事業は進められる。ただ、生活道路の研究は時代の要請で、育成を推進すべきだ」と話している。

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 ■ことば

 ◇交通工学

 土木工学の一分野で、交通が安全・円滑になる仕組みや技術などを研究し考察する学問。交差点の形や信号、交通規制など日常生活で身近な交通対策は、交通工学の成果に基づいて考えられている。

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