中国海軍:レーダー照射 安倍政権に大きな衝撃
毎日新聞 2013年02月05日 21時08分(最終更新 02月06日 00時52分)
海上自衛隊の護衛艦などに対して、中国海軍の艦船が火器管制レーダーを照射したことが表面化し、日中関係の改善に乗り出したばかりの安倍政権に大きな衝撃を与えた。公明党の山口那津男代表の訪中などで関係改善の模索が始まった中、さらに日中関係が冷え込むのは避けられない。外務省は5日、中国側に厳重抗議したが、防衛省の分析に時間がかかり、外務省への連絡は発生から約1週間が経過していた。
「戦闘機が出てくる映画をみたことがある? あれでロックオンされた(照準を合わせられた)時と同じ状況だ。乗組員からしたら、エーッという感じだろう」。中国海軍のレーダー照射について報告を受けた官邸関係者は5日、そう驚いた。
安倍晋三首相は沖縄県・尖閣諸島への公務員常駐化などにも言及する一方、山口氏に親書を託すなど、硬軟両様で関係改善を模索してきた。中国側も日中首脳会談を「真剣に検討する」(習近平総書記)と改善ムードが出ていただけに、日本政府関係者は「危険な火遊びはやめてほしい」と懸念する。
冷戦時代、自衛隊が他国の艦船から大砲を直接向けられた例もあったが、尖閣を巡る日中対立が起きてからこうした事態は初めて。防衛省関係者によると、自衛隊と中国軍は互いに尖閣至近での行動は控えており、今回の現場は尖閣諸島から100キロ以上あったが、日中両艦の距離は3キロと目視できるほど近く、「にらみ合いが続いていた」(首相周辺)という。
レーダーを照射した中国艦は護衛艦やヘリに直接砲身を向けなかったため、海自は反撃準備せずに動向を見守った。「中国がこちらの性能を試した可能性がある」(同省幹部)ほか、軍の現場の独断との見方もある。
レーダー照射の一報が防衛省から官邸に入ったのは護衛艦が照射された1月30日。同省は電波の受信データを解析し、2月4日に火器管制レーダーと断定した。首相は5日午後、官邸で小野寺五典防衛相から報告を受けて公表を了承。首相周辺は「分析に時間がかかった」と述べ、情報の確定を慎重に待っていたことを示唆した。
岸田文雄外相も5日夜、防衛省から中国へ抗議するよう要請を受けたのは同日になってからだったと明かした。
外務省は前日の尖閣周辺の領海侵犯について5日午前、中国の程永華駐日大使に抗議したばかりで、中国側へ1日に2回抗議する異例の事態となった。