ヌランド報道官は4日の会見で「宇宙空間に送られたとされるサルと生還したとされるサルが本当に同じか、多くの疑問がある」と強調した。
打ち上げ時と地球に戻ったとされる時で「サルの顔の特徴が異なるようだ」と指摘。発射前に目の上にあった小さなあざが帰還後にはなかった、との例をあげながらイラン側の発表を疑問視した。
イラン国営メディアは1月28日、有人宇宙飛行に向けた準備の一環で、サルを乗せたロケットの打ち上げに成功、ロケットは120キロの高さにまで達し、カプセルに入れられたサルは宇宙空間から無事に生還したと報じた。
しかし“打ち上げ前”と紹介されたサルの姿は、白っぽい灰色がかった毛色で、右目の上に赤いあざがあった。一方、イラン学生通信(ISNA)が“生還後”として公開した写真のサルは、毛色が濃く、目の上のあざもなかった。
欧米メディアはこの違いを指摘し、サルを乗せたロケット打ち上げの成功を疑問視。ネット上でもイランの美容整形熱をからめ、「宇宙であざの除去手術を受けるサル」との写真説明をつけられるなど、早くも冗談のネタにされている。
AP通信によると、これに対しイラン政府は、サルの帰還を伝えるメディアが、予備のサルの映像を使ったことに混乱の原因があると主張。米ハーバード大の宇宙物理学の専門家も、サルを乗せた打ち上げは実際にあったとの見方を示した。
イランのアハマディネジャド大統領は“動物実験”の成功を受け、4日に「イラン人初の宇宙飛行士になり、宇宙に行く用意がある」と、宇宙開発にかける意気込みを示したばかり。米国が即座にかけた“冷水”に、両国間の緊張関係の笑えない現実が映し出された。
★核開発めぐり攻防
イランと欧米諸国の緊張関係は、2002年にイランの核開発疑惑が発覚してから始まった。一度はイランは開発中止を受け入れたが、05年のアハマディネジャド政権発足とともに再開。06年、国連安保理はイランに制裁措置を盛り込んだ核開発禁止を求める決議を採択した。制裁には、核兵器を運搬できる弾道ミサイル技術を使った発射の禁止も含まれている。12年7月からは制裁強化のため、欧米諸国はイラン産原油の輸入禁止を決定。日本などアジア諸国にも、輸入の禁止を求めている。
(紙面から)