社説:武器三原則とF35 なし崩し形骸化は反対
毎日新聞 2013年02月06日 02時32分
政府は、航空自衛隊の次期主力戦闘機F35の国際共同生産に関連して、日本企業が国内で製造した部品の対米輸出を武器輸出三原則の「例外」として認める方針のようだ。近く官房長官談話として発表する。
三原則は、民主党政権下の11年12月に緩和されたが、「国際紛争を助長することを回避する」という理念は堅持された。F35をめぐる今回の措置が、この理念をなし崩しに形骸化するようなことになってはならない。明確な歯止めが必要だ。
三原則は、平和国家の立場を明確にするため、佐藤内閣が1967年に表明、政府方針となった。その後、対米武器技術供与や、ミサイル防衛(MD)の日米共同開発・生産などが例外扱いとされてきた。
今回、問題となっているのは、三原則が「国際紛争の当事国やそのおそれのある国」への武器輸出を禁止していることと、イスラエルのF35導入計画との関係である。
米国の同盟国・イスラエルは、核開発を進めるイランを先制攻撃する可能性が指摘され、イスラム原理主義組織ハマスやシリアを空爆するなど周辺国などと緊張関係にある。
日本企業が約4割の部品製造に参画するとされるF35が、米国からイスラエルに渡れば、国際紛争助長回避という理念は有名無実となる。
11年の三原則緩和にあたって、日本が開発や生産にかかわった武器を「第三国」に移転する場合、日本政府による事前同意など「厳格な管理」が条件になっていた。F35部品の対米輸出でも、これを適用することが最低限、必要である。イスラエルが現在の政策を維持したままであれば、F35供与の日本同意は三原則の理念に反することになろう。
また、今回の第三国移転の議論とは別に、共同開発・生産の相手国が「紛争当事国またはそのおそれのある国」となる可能性を指摘し、共同開発・生産に参画するために三原則の見直しを求める意見もある。
たとえば、米国や英国もイラク戦争のように紛争当事国になりうるのだから、紛争当事国などへの武器禁輸方針そのものを破棄すべきだ、という考え方だ。
しかし、これでは武器開発の経済性や軍需産業の基盤整備を優先して、平和国家としての立場を捨て去ることになる。
政府の対応について、石破茂自民党幹事長は「三原則の趣旨を逸脱すべきでない」と語り、公明党も三原則を尊重するよう求めている。
装備品(武器)が防衛的なものかどうかをはじめ、その性格・使用目的によって共同開発・生産への参加を判断するなど、あくまで三原則の理念を堅持することを前提に、対応方針を検討すべきである。