近未来の神戸<ネオ・コウベシティ>を舞台にした捜査型アドベンチャー。主人公のギリアン・シードを操って人型兵器「スナッチャー」から人々を護り、その正体を突き止め、打倒するのが目的。「メタルギア」シリーズ、「ポリスノーツ」で有名な小島秀夫氏が手がけた初期作品である。80年代末に各種パソコン版が大ヒットし、その4年後にPCエンジンのCD−ROMで移植・完全版が発売された。現在も購入しやすいのは、96年に発売されたプレイステーション版。アドベンチャーゲームのファンなら一度はプレイして欲しい傑作だ。
2040年代の日本の未来都市が舞台ということで、美しい高層ビル街から、薄汚れた繁華街まで、多彩な場面で物語が展開。住環境、文化、政治面など一見眼に見えないような舞台裏までがしっかりと設定されていた。映画『ブレードランナー』の影響を強く受けたらしく、ゲーム全体が、あのちょっと暗くて格好いい、独特な世界観に彩られている。
それほど多くないが、各々魅力ある人物が物語を盛り上げる。
基本的に、昔流行ったコマンド選択式のゲームだが、敵との戦闘シーンでは、ミニゲーム的なシューティング(モグラ叩き式)をこなす必要もある。また、場所を移動する際には専用車に乗って移動先を指定するので、本当に街を捜査しているような臨場感も楽しめた。慣れると少々面倒になってくるが、車に乗ることがゲーム後半では重要な場面につながるなど、ひとつひとつのシチュエーションにきちんと意味があったのがすごい。
先輩の刑事(ジャンカー)が殺害されるというショッキングな事件に始まり、容疑者との駆け引き、薄暗い病院や地下道の捜査など「ハラハラドキドキ」の緊張感が連続。唐突に女性キャラのスリーサイズを質問されたり、敵だと思って身構えたら、タダの●●●だった…など笑いどころもある。主人公ギリアン・シードには、助手代わりに専用のナビゲーターロボ「メダルギアmk.2」が付くのだが、そいつと主人公の掛け合いがまた面白い。終盤は泣けるシーンもしっかりある。
プレイヤーの意表をつくような仕掛けも。(写真はすべてPC88版)
最初に出たパソコン版は「ACT2」までしか収録されていなかった。だから物語は完全解決しないままに終わり、その続きをプレイするまでには随分長らく待たされたものである。冒頭に書いたように、結局「ACT3」を含めた完全版が登場したのはその4年後、PCエンジンのCD−ROM2というハードだった。(その前にストーリーの続きが収録された「SDスナッチャー」というRPG版がパソコンで発売されたが、さほど話題にならなかった)
PCエンジン版では、CD−ROMという媒体を活かしてプロの声優を起用。物語の主要部分に音声が追加された。今では当り前になったが、冒頭からCD音源による本物のBGMとナレーション、登場人物がガンガン喋りまくり、とにかく驚かされた。とくに、クライマックスからエンディングまで40分ほど「しゃべりっぱなし」のシーンは圧巻で、映画なのかゲームなのかよくわからなくなった。当時、ボイスに慣れていなかった私は友人ら数名とともに、「すげー」と驚き、冒頭からエンディングまでの半日、釘付けになりながらプレイしたものである。数年前にパソコンでプレイした懐かしさと新鮮な驚きを同時に味わうことができて、そういう意味でも印象深い。
そして、96年にはリメイク版がセガ・サターン、プレイステーションで発売。音声部分がさらに追加され、ほぼフルボイスになったほか、グラフィックも新たに描き起こされた。しかし、PS版、サターン版は制作スタッフが変わったせいか、グラフィックの質感やアニメーションなどにかなり手が加えられ、パソコンやPCエンジン版とは若干雰囲気が異なっている。とくにPS版は死体のグラフィックにモザイクがかけられるなど、かなりテンションが下がった感がある。BGMもアレンジされて別物に。だから、今もPCエンジン版が最高傑作という声が高いし、私もそう思う。
舞台は2042年、クリスマスを間近に控えた神戸。
私は最初MSX2でプレイしたのだが、ボイスなど無くても充分に楽しめたし、充分に恐怖も感じた。SCC音源という付属のカートリッジを使用することで実現した、MSX2とは思えないほどの素晴らしいサウンドは、今でも耳に残っている。『ブレードランナー』冒頭のシーンにあった屋台のうどん屋(2つで充分ですよ)のパロディ、「ネオコウベ焼き」という美味しそうな食べ物、パブで飲み食いしすぎて局長に怒られた…など、思い出を挙げるとキリがない。(04.10.26 哲坊)
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