昨年4月、数十年間にわたって父親の暴行に苦しめられていた母子が、父親の口をビニールテープでふさぎ、窒息死させる事件が発生した。父親は酒に酔っては家族に暴力を振るい、脳障害1級の長女の髪の毛をつかんで振り回したこともあった。家族は父親の暴力について周囲に話すことができなかった。家族の問題だから、家庭内で解決すべきと考えていたためだ。そして、家庭内で苦しみ抜いた末、最悪の事態に至った。裁判所はこのような事実を考慮し、母子に対し執行猶予付きの判決を下した。
昨年9月、男が父親を殺害し、遺体を埋める事件が起こった。男は10年前から家出を繰り返し、親に反抗した。親は脅威を感じていたが、自分の息子であるため追い出すことはできなかった。だが男は「叱りつけられた」という理由で親に暴行を加え殺害した。これもまた、長期間にわたる家族間の問題が悲劇につながったケースだ。
先月30日、24歳の男が両親と兄に睡眠薬を飲ませ、練炭によるガス中毒で死亡させた事件について、警察は親の資産を狙った犯行と推定している。警察は「男が犯行の3週間前、同じ手口で殺害を実行しようとし、殺人の練習までしていたことが分かった」と説明した。韓国で初めて「家族殺し」が人々を震撼(しんかん)させた1994年の「パク・ハンサン事件」も、賭博や風俗に溺れた息子が、資産を狙って親を殺害した事件だった。資産をめぐる対立や欲望が家族間で増幅し、悲劇につながったケースだった。
「家族殺し」が韓国で増え続けている。大検察庁(日本の最高検察庁に相当)によると、2008年から昨年までの5年間で、同居する親族が加害者となった殺人事件は163件から195件に増えた。また、尊属(親や祖父母)殺人事件は08年の44件から、11年には68件と、54%も増加した。これは殺人事件全体の発生件数の6.3%に相当し、その比率は外国に比べ3-4倍高い。米国連邦捜査局(FBI)によると、米国で直近10年間に発生した尊属殺人事件は、殺人事件全体の2%程度だという。
動機はさまざまだ。08年以降、18カ月間に発生した尊属殺人事件の動機について調べた警察庁の資料を見ると、精神的な問題が43.1%、偶発的な事件が19.4%、常習的な暴行や家庭不和が原因となったものが13.8%という順になった。