放射線医学県民健康管理センター:あなたの健康、見守ります。



甲状腺検査についてのQ&A


甲状腺検査の目的はなんですか?

チェルノブイリ原発事故後に明らかになった健康被害として、放射線ヨウ素の内部被ばくによる小児甲状腺がんがありました。そこで、原発事故時0歳から18歳までの福島県民の皆様を対象に甲状腺の検査を実施しています。

現在推計される被ばく線量はチェルノブイリに比較しても大幅に低く、さらに甲状腺がんの潜伏期を考え併せると、現時点で仮に甲状腺がんが発見されても、それは今回の被ばくの影響によるものではないと考えられます。県民健康管理調査ではこの期間に対象の皆様の甲状腺の状態を把握しておき(=先行調査)、そして、平成26年度以降の検査(=本格検査)の結果と比較することで放射線の影響がないか見守ってまいります。

嚢胞、結節(しこり)とはなんですか?

「嚢胞」とは甲状腺にできた体液の貯まった袋状のものです。健康な方でも見つかることの多い良性のものです。嚢胞の中には嚢胞の中に結節(しこり)を伴うものがあります。県民健康管理調査では、これを敢えて嚢胞とせず、結節(しこり)と判定しています。

コロイド嚢胞

コロイド嚢胞

コロイド嚢胞多発

コロイド嚢胞多発

「結節」(しこり)とは甲状腺の一部にできる充実性の隆起です。超音波検査機器の精度が上がったことで、見つかることが多くなっています。

結節(良性腫瘍)

結節(良性腫瘍)

結節(悪性腫瘍)

結節(悪性腫瘍)

今回の甲状腺検査では、「5.0mm以下の結節」が認められた子どもについても、原則として「二次検査不要」として平成26年度以降まで経過観察するとしていますが、こうした判断はどのように決めたのですか?

甲状腺超音波診断ガイドブック改訂版第2(南江堂2012年発行)に準じて対応しています。

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5.0mm以下の結節は嚢胞(体液の貯まった袋状のもの)と区別がつかないものが多く、超音波所見上良性と判断されています。嚢胞で20.1mmを越えるものは、そのものによる圧迫症状が出現する可能性があります。こうしたことを背景として、甲状腺がんの臨床特徴を理解している甲状腺学会その他専門医からなる外部の甲状腺専門委員会の検証を受けて決定しています。

なお、A2判定の5.0mm以下の結節であっても、次回の甲状腺検査が平成26年度の本格調査時まででは間隔が空きすぎると判断した場合には、二次検査を要するB判定での通知をしております。こうした判定については、複数の専門医により行っているところです。

こうした小さな結節や嚢胞については、超音波診断装置の進歩により探知できるようになったものであり、通常の診療でもその存在自体が異常あるいは、治療を要する所見とはされておりません。

どうして超音波検査だけなのでしょうか?血液検査はしなくて大丈夫ですか?

低線量被ばくによる甲状腺への影響は、血液検査では分かりません。そのため、いわゆる小さな病変(しこり等)を見つけるためには、精度が高く痛みも伴わない超音波検査が適しています。

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県民健康管理調査における甲状腺検査では、一次検査で一定の所見が認められた受診者には、二次検査を実施し、その中で必ず血液検査を実施しています。超音波による一次検査の段階で全ての受診者に針を刺すよりは、必要な場合にのみ限定して血液検査を実施するようにしています。

甲状腺に異常がないとわかっている受診者にまで、侵襲性のある血液検査を行うことは、逆に受診者、特に乳幼児にとっては身体への負担を高めてしまうためです。

甲状腺検査については「20歳までは2年ごと、それ以降は5年ごと」とされています。放射性ヨウ素による内部被ばくの実態が明らかでないことから、「甲状腺検査についてはできるだけ早急に、かつ最低でも1年に1度は実施すべき」ではないでしょうか?

甲状腺検査の頻度については、甲状腺がんの臨床特徴を理解している甲状腺学会その他専門医門医からなる外部の甲状腺専門委員会の検証を受けて決定しています。

甲状腺がんの発がんリスクは、放射線外部被ばくによる場合は100mSv以上で、内部被ばくの場合は臓器等価線量(※)100mSv以上で、増加が観察されています。また、潜伏期(被ばくした時点から甲状腺がんが発症するまでの期間)は、前者が10~15年以上、後者が4~5年以上です。

※ 臓器等価線量:臓器そのものが受ける実質的な被ばく線量

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従って、今後数年間で発見される甲状腺がんは自然発症、つまりは今回の被ばく影響によるものではない発症であると考えられます。

臨床医学的にも疫学的にも、発がんまでの潜伏期を考えれば、本来5年に1度でも十分な検査間隔ですが、県民の皆様の不安を考慮し、先行調査終了後、対象者が20歳までは2年おき、それ以降は5年毎に検査を実施することとしています。

すでに実施した調査では、嚢胞・結節が認められた子どもに対して、ほとんどの先生は「良性所見」とのこと。また、B判定とされた子どもについて、福島原発事故との関係はあるのでしょうか?

現在行われている先行調査で認められた嚢胞・結節などの良性所見は、放射線被ばくによるものではありません。B判定自体もC判定と異なり、強く「がん」を疑うものではありません。推計される被ばく線量と甲状腺がんの潜伏期を考え合わせると、仮に現時点から数年の間に甲状腺がんが発見されても、それはスクリーニング効果とも呼ばれ、放射線によるものではなく、自然発症の頻度と考えられます。

診断に用いた画像や詳しい検査結果、医師による所見は、受診者に交付されるのでしょうか?

現在実施している一次検査は集団検診であり、多くの他の方がその場におり、プライバシー保護の観点からも診断結果のご説明は控えております。また、より多くの方が、より早く受診できるように、という理由もあります。さらに、判定(一次検査では良悪性判定ではなく、それより前段階のあくまでもマンツーマンで説明やさらなる検査が必要なかたを選別するものです)は後日複数の専門医によるチェックを経て決定し、説明文を加えた結果通知を送付しております。結果通知においては、説明文書を添付しておりますが、A2判定との通知を受けた保護者等から結果通知の内容が分かりにくいとのご指摘を受け、その内容を刷新しお送りします。この更新された通知書は、先行:平成23年10月~、全県民:平成23年11月~に甲状腺検査を受診し、A2判定の結果通知書が送付された方にも再度発送する予定です。

さらに、二次検査を受診されている方には、診察室において、最初の検査の画像も含めてお示しし、マンツーマンで専門医が丁寧に所見を説明しております。

甲状腺がんに対する有効な検査として超音波検査で十分でしょうか?

一次検査の超音波検査で一定の所見が認められた方(B判定の方)には、検査結果通知後、改めて二次検査のお知らせをお送りしています。現在は福島県立医科大学にお越しいただき、専門医が診察をしております。二次検査では問診、詳細な超音波検査、血液検査、尿検査を行います。(必要があれば甲状腺細胞診検査を行う場合もあります。)この二次検査では甲状腺の専門医が、一次検査の時の超音波画像も含めて詳細を説明し、皆様の疑問にも丁寧にお答えしています。

成人の検査は必要ありませんか?

チェルノブイリ原発事故後に明らかになった健康被害として、放射性ヨウ素の内部被ばくによる当時小児(15歳以下)であったひとに4-5年後から甲状腺がん発症の増加を認めていることが問題とされたため、万一のことを考えて年齢幅を大きくとり、事故当時18歳以下の全県民を対象に、この検査を行い、さらに彼らが成人後も長期的に見守っていくこととしました。

「チェルノブイリでは子どもの甲状腺がんが多く発症した」ってよくニュースで聞くが、福島県は本当に大丈夫なのでしょうか?

今回の福島の原発事故は、よくチェルノブイリの原発事故と比較されますが(原子力安全・保安院が国際原子力事象評価尺度として、同じレベル7として評価しました)、放出された放射線量はかなり少ない(およそ7分の1)とされています。

さらに、実際の甲状腺被ばく線量はチェルノブイリと比較し、極めて低いと考えられています。

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甲状腺は体の表面に近いところにありますので、外部被ばくの影響を受けやすいと言われています。しかし、チェルノブイリの原発事故でも甲状腺の外部被ばくによる健康被害は認められなかったことから、福島県でも外部被ばくの影響により甲状腺に健康被害を及ぼすとは考えにくい状況です。

さらに、チェルノブイリでは多くの方に内部被ばくによる甲状腺への影響が認められましたが、福島県では、放射性ヨウ素の影響が考えられる食物等の出荷規制や摂取制限が早い段階で実施されたので、内部被ばくによる甲状腺への影響も考えにくいとされます。ですから、現時点においては、放射線による甲状腺の健康被害はないと考えられております。