Q:ベトナムの法律では漢越語というものが利用されていると聞いたのですが、それはどのようなものでしょうか?
A:法令や契約書などに用いられる単語の大多数は、漢字で表記できる「漢越語」(漢字の熟語)です。
たとえば、企業法(No. 60/2005/QH11)2条2項;
Điều 2. Đối tượng áp dụng
2. Tổ chức, cá nhân có liên quan đến việc thành lập, tổ chức quản lý và hoạt động của các doanh nghiệp.
の漢越語部分をそのまま漢字に変換すると;
「条2 対象 圧用
2.組織、個人 có 連関 đến việc 成立、組織 管理 và 活動 của 各 営業」
となります。
(アセアンセンター/JICAによる日本語訳では「第2条. 適用対象 2. 企業の設立、管理組織及び活動に関する組織及び個人」)。ベトナム語表記のまま残った部分は、純ベトナム語(日本語で言えば大和言葉)にあたります。それぞれ英語でhave, to, to(do), and, ofにあたる基本的な単語ばかりになります。
権利quyền lợi, 義務nghĩa vụ、所有sở hữu, 投資đầu tư、民事Dân sự、刑事hình sự、訴訟tố tụng,など、日本語と共通の用語が多いが、契約hợp đồng「合同」、会社cong ty「公司」など、日本語とは異なり中国語と同じ文字を使う単語も多いです。
興味深いことに、日本語の固有語であり訓読みされる「場合(ばあい)」、「手続(てつづき)」が、音読みの「ジョウゴウ」「シュゾク」に対応するベトナム式音読みである「trường hợp」「thủ tục」となって、法令や契約書に頻繁に使われています(中国や韓国でも同様の用法があるとのこと)。
なお、ベトナム語の文法は、中国語のように、主語・述語・目的語、と順に並んでおり(ただし形容詞(句・節)は後ろから前にかかっていく)、各単語は独立していて、語形変化はしません。そこで、ベトナムの法律文書は、ベトナム語表記から該当する漢字を探り当て、漢文を読むように、返り点・一二点・上下点を打ちながら読めば、(理屈上は)ほぼ読めるはずなのです。