第92回 若年層の利用者が増加? ファイル共有ソフトの危険を知ろう
最近ファイル共有ソフトを使っている方はいますか?
近年、ファイル共有ソフトを利用する中学生や高校生といった若い世代が増えているといいます。
ファイル共有ソフトとは、インターネット上で不特定多数の人がファイルを共有するための仕組みです。特徴は各々のユーザが利用しているパソコンを相互に接続し、それぞれのパソコンが保持しているファイルをやり取りする方式となっている点です。
今回は、ファイル共有ソフトの問題点についてみてみましょう。
一般的にファイル共有というと、サーバを利用したものがあります。サーバ上にファイルが保存されており、ユーザはそのサーバに接続して必要なファイルをダウンロードしたりアップロードを行ったりします。一方、ファイル共有ソフトは前述したとおりパソコンを相互に接続するという方式のため、サーバを利用する必要はありません。このため、ファイルを共有する際にわざわざサーバにアップロードする手間が不要であり、また通信内容の暗号化によってファイルが共有されている事実を把握しづらいといった特性があります。
こうした特性から、手軽に違法ファイルを共有するための手段として悪用されているケースが後を絶ちません。もちろん、ファイル共有ソフトはあくまでも共有のための仕組みを提供しているに過ぎず、違法ファイルを共有するかどうかはユーザ次第です。
またファイル共有ソフトでは、ウイルスを含んだファイルが非常に多く流通していることも問題といえます。G-DATA社の2008年4月の調査結果によると、ファイル共有ソフトで流通するファイルの67%がウイルスを含んでいるものだったそうです。
このように、ファイル共有ソフトによってウイルスに感染したり、本来公開するつもりのないファイルがインターネットに流れてしまったり、といったトラブルがこれまでにも何度も発生しています。
過去には、代表的なファイル共有ソフトである「Winny」で、脆弱性を利用した暴露ウイルスが流行し大規模な情報漏えい事件が発生したり、著作権者の許諾を得ていない違法ファイルを共有していたユーザが相次いで逮捕されたといったことがありました。その影響もあり「Winny」の利用者は徐々に減少していきました。しかし、ファイル共有ソフトは「Winny」以外にも「Share」「Cabos」「BitTorrent」など様々な種類が登場してきており、これらの新たに登場したファイル共有ソフトの利用者の割合は増えてきているようです。2011年12月にはファイル共有ソフトの違法利用者の一斉摘発があり、30人もの逮捕者が出ています。この逮捕のうち26件は「Share」を利用していたそうです。
コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)では、ここにきて中学生・高校生におけるファイル共有ソフトの利用割合が高まっていると指摘しています。コンテンツ海外流通促進機構(CODA)が2010年に調査した結果を見ると、ファイル共有ソフトの「現在利用者」は一般消費者(中学卒業年齢以上の一般消費者)と中学生・高校生のいずれも5.8%でした。しかし2011年にACCSが調査すると、一般消費者は4.7%でCODAの調査よりも1.1ポイント低下していますが、中学生・高校生は7.7%と1.9ポイントも上昇していたのです。
中学生・高校生の利用者は、ファイル共有ソフトの仕組みやその危険性を認識せずに使っている割合が増加しており、今後は一層、若い世代に向けて注意喚起をしていく必要が出てきました。
ファイル共有ソフトは、パソコン内に保存している個人情報を含んだデータが漏えいするといった事態が発生することも十分に考えられます。また、ファイル共有ソフトを利用しているうちに、パソコン内のファイルが自動的にインターネット上にアップロードされ、知らない間に著作権侵害行為をしていた、なんて事もありえます。このような被害に遭わないためにも、ファイル共有ソフトの正しい使い方がよくわからない、というような場合には利用を控えるようにしたほうが良いでしょう。
インターネットを利用する際は、こうしたこともきちんと意識するようにしましょうね。