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【現場の人材足りない】 40市町村住宅除染に遅れ 市町村「技術職欲しい」 業者「正社員雇えず」 住民「一刻も早く...」

住宅で除染した土を運搬する作業員。人手の確保などが課題になっている=福島市、2日

 汚染状況重点調査地域に指定された県内40市町村の福島民報社の調査で、住宅除染が進んでいない現状が明らかになった。各市町村の担当者は作業を急ぎたいのにもかかわらず、「仮置き場が決まらない上、人手も足りない」と頭を悩ませている。除染に携わる地元業者は作業員を確保できない状況を訴え、今後計画通りに除染が進むか懸念する。比較的放射線量が高い地域の住民や自主避難者からは一刻も早い実施を求める声が相次いでいる。

■ギリギリ
 福島市で除染が完了したのは3734棟。県内で最も件数が多いが、平成24年度の計画1万9619棟には程遠い。25年度はさらにスピードアップする方針だが、職員の人材不足が課題になっている。
 24年度は36年ぶりに10月の新規採用に踏み切り、技術系職員らを増やした。全国の協力自治体から職員派遣の応援を得るなどしてギリギリの状態で対応している。現場監理業務に民間委託を取り入れているが、市民から職員の立ち会いを求められるケースも多い。担当者は「国や県など積極的な人的支援が必要だ」と訴える。
 郡山市は県内で初めて導入した吸引式高圧洗浄機の研究や実証に時間がかかり、住宅の本格除染がスタートしたのは昨年11月末と、計画に遅れが生じた。除去土は敷地内への埋設かコンクリート製の容器で囲う地上保管で対応しているが、いまだに仮置き場が決まっていない。市原子力災害対策直轄室の担当者は「中間貯蔵施設の設置が決まれば、住民に対する仮置き場設置の説明も容易になるのだが」と話す。
 今冬の大雪も影響している。白河市は24年度に1100戸を計画している。ただ、除染が終了したのは29戸にとどまっている。大信地域で先行実施しているが、担当者は「例年以上に多い積雪が作業を阻んでいる」と明かす。発注したが、ほとんど作業できず対応に苦慮している。

■四苦八苦
 作業員不足は現場で深刻になっている。除染業務を受注した大手ゼネコンなどは、契約期間の24年度内に作業を終了させるために県外から多くの作業員を確保して、対応しているのが現状だ。
 福島市は24年度当初は大手業者に発注していたが、最近は地元業者への発注を増やしている。しかし、除染作業を希望する地元の人が少なく、各業者とも作業員を確保するのに四苦八苦している。除染作業に携わる同市の男性は「建設業者は作業員を正社員で雇用したいと思っているが、経営の先行きを考えると難しい。短期的には何とかなるが、その先は安定的に対応できるか分からない」と打ち明ける。
 伊達市などで作業する業者も「今後、現場が広がれば、作業員がさらに不足し、計画通りに進まない恐れがある」と危惧する。「本来は地元の事情をよく知る作業員が理想」としながらも現在は地元をはじめ、全国から呼び寄せている。
 ただ、「各地で除染が本格化すれば、作業員の"取り合い"となることも想定され、人員確保が難しくなるかもしれない」と指摘する。

■いつになったら
 住宅除染が思うように進んでいない状況に、郡山市の主婦遠藤亜希子さん(38)は「一刻も早く始めてほしい」と望む。小学2年生の長男がいるが、市内の他の地域に比べて放射線量が比較的低いため、市による自宅の除染は手つかずのまま。「低いからといって安心できない」と気をもんでいる。
 福島市から山形市に避難する会社員女性(36)は「一体いつになったら自宅の除染が始まるのか」と語気を強める。長男(13)、長女(7つ)との避難生活は1年半が経過した。
 放射線を気にするストレスも薄れ、子どもたちは友達が増えるなど安心して生活しているが、福島市で暮らす夫との二重生活が家計に重くのしかかる。福島に戻りたいと考えており、「除染終了の時期が、はっきりしないと生活拠点も決められない」と不満を漏らす。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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