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事件
【新帝国時代】第2部 インテリジェンスなき国(2) 李春光・中国元書記官スパイ疑惑「捜査は見送ったんだ」
しかも、コメ農業は日本の政治の急所。李元書記官は農水関係者に「中国は必ず食糧不足になる。日本のコメがどうしても必要だ」とも働きかけていた。
中国がだぶつき気味の日本のコメを買ってくれるなら、中国主導のFTAに乗ろうという機運も生まれてくる。
日本の弱みを材料に、日米を分断させる巧妙な対日情報工作-。そんな側面が浮かび上がる。
◆政策・世論ねじ曲げ
確かに工作は実を結びつつあった。
筒井信隆元農水副大臣が主導していた中国への農産物輸出事業に李元書記官が深く関与。その結果、23年12月に訪中した野田佳彦前首相の日程に、日本産の農産物を北京で展示する「日本産農水産物展示館」の視察がねじ込まれた。筒井氏は3日までの産経新聞の取材に応じていない。
そうこうするうち、TPP参加交渉は遅れる一方、日中韓サミットは24年5月に北京で開催され、同年11月には日中韓FTA交渉が開始された。
TPP交渉に前向きだった野田政権を牽制(けんせい)し、中国に有利な方向に誘導する工作が行われていたことは想像に難くない。
中国のインテリジェンスは、ロシアや欧米のように金銭や脅しで情報収集するのではなく、目的を悟らせずに緊密な人間関係を構築、知らず知らずに、日本の政策や世論を中国の国益に沿うようねじ曲げ、中国の政策の浸透を図るのが特徴とされる。
佐藤氏は「第2、第3の李春光はいる。中国の諜報活動への警戒が必要だ」と指摘している。
◇
【用語解説】李春光事件
在日中国大使館の李春光・元1等書記官側に農林水産省の機密文書4点が漏洩(ろうえい)したとされるスパイ疑惑。警視庁は昨年5月、外国人登録証を不正に更新したとする容疑で李元書記官を書類送検したが、直前に帰国しており、起訴猶予処分となった。
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