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'13/2/2

大津の中2自殺報告書 いじめ対策に重い教訓

 いじめを受けた生徒が、自らの命を絶つまでに追い込まれていった姿が浮かび上がる。全国の教育現場が、これを人ごとだと受け止めてもらっては困る。

 大津市の市立中2年の男子生徒が一昨年10月に自殺した問題で、市の第三者委員会が最終報告書をまとめた。同じクラスの生徒や教員への聞き取りなどを基にまとめた231ページ。いじめが自殺の直接的な要因とし、対応が後手に回った学校や市教委の問題点を指摘している。

 いじめはどの学校でも起こりうる。掛け替えのない児童や生徒の命を守るためにどうすればいいのか。重い教訓を何としても共有しなければならない。

 報告書から見えてくるのは、まず、自殺は対応次第で防げた可能性があることだ。

 男子生徒と、いじめた同級生2人は「仲良しグループ」だった。しかし突然、暗転する。担任は変化に気づいたが、本人に聞くと「大丈夫」との答えだったため、有効な手だてを取ることはなかったという。

 いじめられている生徒は報復への恐れや自尊心のため、自分から教師や親に助けを求められないことが多い。本人が否定しても、周りの話などから異変を察知すれば、早期に対応しなければならないはずだ。

 しかも男子生徒に関する情報は担任と学年主任にとどまり、教員全体で共有されなかった。

 この学校だけの特別な事情とは言い切れまい。担任まかせにせず、全ての教員が協力して解決する体制をどう築くか。

 報告書が問い掛けるもう一つの問題は、生徒が自殺した後の学校や市教委の対応だ。

 学校が直後に全校生徒を対象にしたアンケートでは、いじめの記述があった。にもかかわらず、深く掘り下げないまま自殺との関係を「不明」とした。

 市教委は当初、自ら調査することなく、学校の言い分をうのみにしていた。事実の解明より訴訟対策を重視した可能性もあると報告書は指摘している。

 これでは、事なかれ主義と批判されるのも当然だろう。

 大津市が市教委ではなく市長部局に第三者委員会を設けた手法は一定の効果を挙げたといえる。委員6人のうち3人を遺族の推薦で選んだのも公平性の確保につながったようだ。

 ただ本来なら、教育委員会こそ事実を明らかにして再発防止を図る当事者であるべきだ。

 安倍晋三首相の意向を受け、政府は先月、首相直属の「教育再生実行会議」を発足させた。いじめ対策も主な議題となる。教育現場の実態を直視した議論が求められよう。

 自民党は、いじめ防止対策基本法案を今国会に提出する構えだ。生命の安全が脅かされる際は学校が直ちに警察に通報すると明記し、いじめをした生徒には学校教育法に基づく出席停止の適用も視野に入れるという。

 緊急措置としては理解できる。だが、いじめをする生徒はほかにも問題を抱えている場合が少なくない。その原因に正面から向き合わなければ、根本的な解決にはつながるまい。

 政府は新年度、スクールカウンセラーを中学校全校と小学校の7割に配置するという。教育行政と学校、家庭がそれぞれの役割を自覚した上で十分に連携し、子どもの命を守る体制をつくり上げてもらいたい。




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