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中学生自殺“いじめが直接要因”最終報告
1月31日 20時0分

中学生自殺“いじめが直接要因”最終報告
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大津市で、中学2年生の男子生徒が自殺した問題で、市が設置した第三者委員会は、31日、同級生からのいじめが自殺の直接的な要因だったとする最終報告書を公表しました。

大津市で、おととし、当時、中学2年生だった男子生徒が自殺した問題で、市は自殺したあとの学校や教育委員会の調査がずさんだったとして、去年、第三者委員会を設置して同級生や教師などからの聞き取り調査を進め、31日、大津市の越市長に最終報告書を提出しました。
それによりますと、男子生徒はおととし10月に自殺するまでの1か月間にわたり、同級生2人から殴る蹴るの暴力を受けたり、教科書や成績表を破られたりしたほか、自宅の部屋を荒らされ、財布を隠されるなど19件のいじめを受けていたことが確認されたとしています。
そのうえで「男子生徒は、いじめの世界から抜け出せないことを悟り、生への思いを断念せざるをえなかった。自宅マンションから飛び降りることで、『暗いいじめのトンネル』を抜けようとした」と指摘し、同級生からのいじめが自殺の直接的な要因になったと結論づけました。
また、男子生徒が「同級生から『自殺の練習をしろ』と言われていた」と指摘しています。
そして学校側の責任について「複数の教師がいじめの可能性があると判断したのに、情報を共有できず、最後まで学校全体としていじめと認知しなかった。いじめの存在がマイナスイメージにつながるとの意識があったように思える」と厳しく批判し、いじめの早期発見と有効な対応が積極的に評価される基準を設けるべきだとしています。
さらに、将来的な課題として、いじめを受けた生徒がシグナルを出しやすいよう、教員以外の専門知識のあるスタッフや、いじめの被害にあった子どもが救済を求めることができる第三者機関の創設など、二重三重の救済システムの整備の必要性を指摘しています。
一方、教育委員会や警察がいじめがあったと指摘した同級生3人のうち1人について、報告書は「加害行為の場面にほとんど関わっておらず、自殺した生徒との力関係にも差があったとはみられない」と指摘し、「いじめとは認定しない」としています。

尾木氏“施策のきっかけに”

第三者委員会の委員を務めた、教育評論家で法政大学教授の尾木直樹氏は「どの教師もいじめを見過ごそうと思っていないし、親も気付きたいと思っているのに、なぜいじめを発見しにくいのか、これまで科学的な解明や丁寧な分析が無かった。今回の報告書では、いじめがなぜ発見できず、どうして友人関係の中で不幸な事件が起きてしまうのかが解き明かされていると思う。報告書が、本当に子どもを救うことができる施策を打ち出すためのきっかけになることを願っています」と述べました。

NPO“時間がかかったことに疑問”

31日に公表された最終報告書について、いじめが背景にあるとみられる自殺で子どもを失った親たちで作る、NPOの理事の小森美登里さんは「遺族は皆、子どもが自殺した原因を知りたいと思っている。そういう意味では、いじめが死の原因だと認められたことはよかった。ただ、遺族の苦しみを思うと、この結論を導くまでに、かなりの時間がかかったことについては疑問を感じている」と話しています。
また第三者委員会の在り方について、「遺族が推薦した委員が入ったことはよかったと思うが、本来、調査は事案が起きた直後に行われなければならず、時間がたってから立ち上がった第三者委員会が調査するのには無理がある。だからこそ初動段階での調査が重要で、その調査結果を検証するのが第三者委員会であるべきだ」と指摘しました。
さらに、今回の最終報告書で「複数の教師がいじめの可能性があると判断したのに、教師全体で情報を共有できず、最後の最後まで学校全体としていじめと認知しなかった」とされていることについて、小森さんは「教師がいじめの対応を知らなかったことが最大の問題点で、教師が親と連携し、解決に導けるスキルを身につけることが必要だ」と話しました。
そのうえで、みずからも娘を亡くした小森さんは「いじめによる子どもの自殺が一向になくならないのは、大人たちが1つ1つの事例に学んでいないからだ。なぜ命を守れなかったのか、その事実に向き合えるシステムを確立することが、いじめによる自殺を防ぐ第一歩だ」と話しています。

大津市長“常設機関設置を”

第三者委員会の報告書を受け取った大津市の越直美市長は記者会見で「自殺から時間がたつなど限界はあったと思うが、徹底的な調査をしてもらった。学校や教育委員会に対する厳しい指摘もあったので、大津市として真摯(しんし)に受け止めることが、いじめ対策の第一歩だと思う」と述べました。
そして、第三者による調査を速やかに行うため今後、常設の機関を設置することを明らかにしたうえで「いじめによる自殺が繰り返されてきたのは、徹底的な調査が行われてこなかったからだ。今回の調査と公表が、今後、同じような悲しい事件をなくすための一助となってほしい」と述べました。

父親“命が失われない世の中に”

自殺した男子生徒の父親は報告書を受け取ったあと、記者会見しました。
この中で、父親は「警察の捜査が入らなければ事実は明らかにできない。中立な委員会がなければ真相の究明はできない。不利な事実を公表しない。これが今の教育現場の現状だと分かった。学校と教育委員会の可視化は絶対に必要だと思う。報告書には、日本全国の学校現場への提言と強い思いが込められている」と話しました。
そのうえで「学校関係者や教育委員会、生徒や保護者など多くの人に読んでもらい、いじめの問題について深く考えてほしい。子どもの命が一人として失われない世の中になり、いじめに不安を抱えて学校に行かない子どもがいなくなるための報告書となってほしい」と目に涙を浮かべながら話していました。

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