メタルマックス
竜退治はもう飽きた!
発売日:1991年5月24日 発売元:データイースト ジャンル:RPG
値段:7800円 おすすめ度:4(男子の心を満たす作品)
今は無きデータイーストにおける、著名シリーズの1つ『メタルマックス』シリーズの第1弾。
このゲームを開発したのは、主に週刊少年ジャンプ内の著名コーナー『ファミコン神拳110番』のレビュアーのきむ皇こときむらはじめ氏とカルロスこととみさわ昭仁氏、そしてシリーズのメインを務めることになるみや王こと宮岡寛氏である。
ファミコン神拳におけるレビュースタンスは、非常に独創かつ独断的であったが、宮岡氏らのレビューはあくまで第3者という感で見ているため、かなり普通であった。
発売元のデータイーストは、『空手道』をはじめとして、『トリオ・ザ・パンチ』、『カルノフ、『チェルノブ』など、様々な得も知れぬゲームを世に送り込んでいた。
通称『デコゲー』と呼ばれたゲームは、奇妙な世界観のほかに、独特なキャッチコピーや荒削りなゲームバランスなど、万人ユーザーから見れば近寄りがたい雰囲気を持っていた一方、それを好むユーザーからは支持されていた。
しかしながら、開発者や社員達にとっては、あまり喜べるものではなかった。
というのも、会社のキャッチコピーである『ヘンなゲームならまかせとけ!』というものにより、ユーザーから変なゲームしか作っていないのではという認識を植えつけられる可能性があったためだ(現にそうなってしまったが)。
宮岡氏も、ゲーム発売前の雑誌インタビューにおいて、データイーストのキャッチコピーに対する批判らしきコメントを出している(ファミコン神拳に対する開き直り的な意図もあった)。
まじめにゲームを作っているのに、変に奇妙なゲームと決め付けられるのは、宮岡氏はもちろんのこと開発者達としてかんべんならかったのだろう。
だが、メタルマックスはヘンなゲームにはならなかった。
データイーストのゲームの中で、驚くほどまともで斬新なシステム、ストーリーもまともな出来で、今までのデータイーストのゲームと比べて、一線を画しているものだった。
幸いにして、この時期に発売されたFCソフトは、SFCの発展に脅かされている上に、昨年のような大作・良作ソフトの大豊作はなかったが、それでも良作ソフトは多く、そのほとんどは今までのゲームでは見られなかったシステムが組み込まれていたために、メタルマックスだけが突き抜けた奇抜なシステムとして見られることはなかった。
今でこそ、メタルマックスのようなストーリーやシステムは、普通にありふれたものとなっているが、当時としては非常に異彩を放っていた。
宮岡氏らが目指したのは、RPGの常識の否定であったといえる。
キャッチコピーの『竜退治はもう飽きた!』というように、一般のRPGには必ずといっていいほど登場するドラゴン系の敵が一切出てこない。
出る敵といえば、環境汚染で変質した異形のモンスターか、戦車やコンピューターといった機械の類ような、近未来にふさわしいものである。
もちろん、それらのみが登場するRPGはいくつかあったが、このゲームの目的は人々の平和を守るものではなく、己の欲を満たすためとなっている。
したがって、このゲームのラスボスを倒しても、すぐエンディングになるわけではない。
エンディングを見るためには、リオラドの町にいる父親に『いんたい』を選べばいい。
すなわち、ラスボスを倒さずともエンディングが見れるのである。
少々ネタバレになるが、エンディングは主にゲーム中に出てくる指名手配犯、すなわちボスを倒したか否かが記される。
ここで登場する指名手配犯は、ストーリーに直接絡むことがなく(アイテム関連は別)、全ての指名手配犯を倒さなくともエンディングは見ることができる。
その一方、あることをしなければ先に進めないという、いわゆる関所ポイントは意外と多く、序盤、中盤に2つ、後半に1つの計5つ。
ただし、中盤の1つ(コロナビル爆破)を除けば、ただ敵を倒せばいいだけのことで、関所自体の難易度は低い。
仲間については、1人の仲間を加えずにゲームを進めることも可能となっている。
このゲームには、2人の仲間が登場するが、ストーリーには関連がなく、1人でラスボスまで進むこともありうるのだ。
もっとも、一人しかいない分苦戦は免れないが、逆にいえばそういった逆行プレイもありで、先に挙げた事例をあわせれば、メタルマックスは当時としては非常に自由度が高いゲームとして、RPGユーザーからの注目を浴びることになったのは当然の成り行きだろう。
続いて、主人公達のステータスだが、魔法と言う概念がないため、MPというものが存在しない。
その代わりとして、登場したのが戦車であり、乗ることで作動する。
そして、戦車を成り立たせるパーツは、シャーシ、エンジン、Cユニット、主砲、副砲、SE(特殊武器)の6種類で、戦車を動かすにはエンジンとCユニットが必要、攻撃を行うには主砲と副砲、SEが必要となり、攻撃の手段をそろえても、弾がなければ攻撃できない(副砲は弾が無制限)。
戦車のHPは、『SP』で表されており、0になっても壊れることはないが、ダメージを受けるたびに様々なパーツが壊れる(破損)ことがあり、最終的にはシャーシが破壊されて(大破)使用ができなくなる(肉弾戦に移行)。
これを防ぐには、SPを上げることが重要で、その重要な役目を果たすエンジンは、SPとリンクしている積載量によって、戦車の耐久力が決まるのである。
当然、SPを上げることが一番いいのだが、戦車のパーツは重量と言うステータスもあるため、重量が多い分積載量で増えるはずのSPも減ってしまう。
しかも、強力な攻撃を行う分、重量はより重くなり、耐久力を選ぶか攻撃力を選ぶか、プレイヤーの悩みどころとなった。
このゲームの重要な肝となる改造も、シャーシの守備力と弾倉、武装の穴を開けることが可能。
武装の穴というのは、先に挙げた主砲、副砲、SEの3つで、各戦車に最低1つずつ取り付けられている(強い戦車は2つずつある)。
例えば、SEで使うべき穴を主砲として開けることができ、主砲を3つそろえたり、最後に手に入る戦車にSE全て取り付けることもありである。
そのSEは、強力なものが多い反面、重量はとてつもなく弾数も少ない。
その上、SE1発の値段は、主砲1発の値段よりも高い。
ちなみに、SPや砲弾を回復させるには、街のいたるところにある満タンルームでできるようになっており、全回復はもちろん数指定の回復もできる。
ところでその主砲だが、普通に主砲を撃つだけではなく、特殊砲弾を使って撃つこともできる。
これは、街のいたるところにある戦車用の自販機で売っている。
特殊砲弾は、戦車系のパーツを破壊できる鉄甲弾やグループ攻撃できる榴弾など様々である。
ただしそれには、戦車のステータスの1つである弾倉、すなわち戦車内に積むことができる特殊砲弾の数が鍵を握っており、弾倉の規模が大きいほど積める特殊砲弾の量が多くなる。
なお、特殊砲弾1発の値段は、性質ごとに違うために値段も様々である。
私は、リアルタイムでプレイしていたとはいえ、ゲーム前半までしか進んでおらず、継続してまでプレイしていなかった。
当然、発売から15年以上も離れているわけだから、ゲームのシステムなど忘れてしまった。
むしろ、リメイク版の『リターンズ』を長くプレイしたこともあって、FC版とリメイク版の内容がごちゃまぜになってしまった。
FC版をプレイするとき、それがためにFC版とリメイク版との違いに気づいたとき、大きな衝撃を受けた。
性能を弱体化しての軽量化や、エンジンの積載量しか改造できないということの他、ショートカットルートがなかったり、バギーを手に入れる工場のセキュリティが全てONにしてある点など、FC版のほうがかなり難しいことを思い知らされた。
ただ、1つレベルを上げた後に、わざわざ父親に顔を合わす必要がなかったり(修理を学ぶ必要がなかった)、改造のバリエーションが少ない分、それにかかる費用が少なくて済んだことなど、個人的にリメイク版より良い点はある。
しかしながら、やはりシャーシの改造は、当時の男子の心を十分満たしてくれたと思う。
最初に手に入る戦車は、本当に頼りない性能しか持っていないが、改造を重ねるごとに強敵と十分渡り合える力を持つ。
それが、パイロットの運転レベルが高ければなおさらで、MSに例えるならばフルチューンしたザクUにベテランパイロットが乗ったものだろう。
それから2年後の、1993年7月に発売された『第3次スーパーロボット大戦』で、ユニットの改造が可能になったことは、少なくともメタルマックスの精神に影響を受けたのではないだろうか。
リターンズでしか進んでいないところをFC版でプレイしているうちに、ようやく(リターンズで)懐かしい思い出が蘇ってきた。
ちなみに今回は、メカニックとソルジャーを仲間にしたが、1人でラストエリアに進むことも不可能ではない。
さすがに私には、そういったことは到底無理だし、せっかく手に入った多くの戦車が無駄になってしまう。
さらに、なんといっても序盤の難敵であるビッグキャノンがとてつもなく強かった。
ボスと対面するまでに受ける砲撃が半端ではなく、対面したとしても2体同時に戦わなければならない。
改めて、リメイク版における設定変更は、本当に素晴らしかったと思う。
本日のまとめ