海外売り込みブランド化
安全・安心な福井の農産物
食に対する安全・安心ニーズの高まりを受け、「農」への関心が高まっている。商工業者との連携でビジネスチャンスを模索する動きのほか、県内産の農産物を輸出して「福井ブランド」を確立しようとの取り組みも活発化している。海外への売り込みによって、県内の農業はパワーアップするのか。現状と課題を追った。 (北原愛)
■現 状
中国の高級スーパーには静岡産のメロン、和歌山産の梅干し、新潟産のコメなどとともに、県内産の農産物が並べられている。海外への出荷を手掛けるのはJA県経済連。食品販売のシティ・スーパー(香港)を通じ、コシヒカリやハナエチゼン、福井すいかやメロン、ミディトマトを香港と台湾に送り出している。
県内産のコメやスイカが海を渡って四年。今春にはJA県経済連、ジェトロ福井などが県産農産物等輸出促進研究会を設け、今後は海外への売り込みを加速させる予定だ。
販売価格は、運送コストなどが上乗せされるために国内価格の二、三倍と高いが、味とともに「食の安全・安心」を求める富裕者層を中心に売れ行きは順調。輸出初年度の二〇〇五年度に比べ、〇七年度の輸出量はコメが二倍、福井すいかは二・五倍に増加。〇六年度から加わったメロンとミディトマトも好評を得ている。
PRと販売相乗効果
■メリットは
海外では高級品に“変身”しても、卸値は国内市場とほぼ同じで生産者に特段の差益はない。量的にもJA県経済連で扱う農産物のわずか数%。それでは、輸出のメリットはどこにあるのか?
同経済連は「『海外でも支持される商品』という力を国内で見せられる」「海外にも福井のコメの良さを知ってもらいたい」と説明する。同研究会が七月下旬に香港で開いた福井フェアでは、福井すいかなどの販売時に「コシヒカリ発祥の地」などとPRし、ほぼ完売の成果を上げるなど、相乗効果も表れているようだ。
『利益出ないが拡販の時期』
コメ輸出などの相談も急増
■展 望
県国際・マーケット戦略課によると、農産物輸出は「まだ利益が出る段階ではない。拡販の時期」という。それでもジェトロ福井には「アジアにコメを輸出したい」などの相談が今年に入って急増しているらしい。
中国・上海では五月、県内企業四社による海産物加工品の宅配サービスが始まった。各産業の東アジア進出を支援する県の「東アジアマーケット戦略プラン」の一環だが、農産物や農産加工品への拡大も検討中だ。
食料自給率の低迷や担い手不足を背景に「地産地消や国内施策の充実を優先させるべきだ」との意見もあるが、県は「需給バランスの問題で相反するものではない」と反論する。海外で福井ブランドを確立できるのか。正念場を迎えている。