【茨城】「給食検査費11年度限り」 原発事故 東電の損害賠償方針
東京電力福島第一原発事故を受け、東電が自治体向けにまとめた損害賠償方針に県内自治体から反発が強まっている。これまでに示された賠償範囲は、上下水道や廃棄物の検査・処理費用と食品検査だけ。ただし、人件費などは認められず、対象自治体や期間も限られる。賠償をめぐって民間から不満の声が絶えないが、自治体との間でも紛糾が予想される。(井上靖史、坂入基之) 学校給食について、東電は「事故発生から一二年三月末までに要した学校給食の検査機器の購入・検査の委託費用」に限るとし、検査の人件費なども認めていない。 戸惑う自治体も多い。神栖市は一二年五月、給食用の検査機器を複数台購入したが、東電に賠償請求すると「対象にならない」とはねつけられた。市の担当者は「一二年四月から食品の基準値が厳しくなり、精度の高い検査器を購入したのに」と嘆く。北茨城市の担当者は「一一年度内に限ったことはもちろん納得できないし、検査で掛かった人件費も認めようとしない姿勢はどうか」と憤る。 取手市の藤井信吾市長ら県南四市の市長は一月三十一日、東京電力に連名で要望書を手渡し、四市が負担している学校給食食材の放射線量測定の検査費用について「子どもたちの内部被ばくへの関心は増大している」と継続して賠償の対象にするよう求めた。取手市の場合、給食食材の検査費用は年間約九百万円で一三年以降も継続する。 これに対し、東電は「一一年度分は文部科学省の指示もあり、損害賠償の対象にした」と説明。しかし、一二年度以降については「(賠償の)必要かつ合理的な範囲に入るのか、どうか」と消極的な姿勢を示した。 学校給食以外では当面、食品衛生法に基づいて検査計画をしている都県や保健所を設置している大規模市、東京二十三区に限り検査費用を補償する方針だ。しかし、安全PRや風評被害払拭(ふっしょく)のため、農協と連携して農産物などの出荷前に放射性物質を自主検査する機器を購入した県内の市町村は対象に入らなかった。神栖市の担当者は「県が検査しているのだから必要ないと言うつもりか」。 損害賠償は東電が民間を優先して賠償したこともあり、自治体向けは遅れている。東電は今月中にも県内で自治体向けの説明会を開く予定だが、反発も予想される。 東電に約九億一千八百万円を請求した県も、上下水道の検査や処理費用など約七千二百万円の支払いは受けたが、「人件費が認められていない。東電は原発事故で掛かった費用を全額支払うのが筋」と粘り強く交渉する。一方、賠償費用が膨らめば結局、電力会社の電気料金に転嫁される理不尽さがつきまとう。 東電は県内の自治体から請求された賠償の総額について「明らかにできない」と回答を拒否。市町村から聞き取りしている県のまとめでは、一二年十一月時点で潮来市を除く県内の全市町村と県、十六の一部事務組合が計三十億七千万円を請求。支払い済みは二億七千万円にとどまる。 PR情報
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