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【コラム 撃戦記】

剣豪本や格言には暴力やパワハラ以上の力がある

2013年2月3日

 また柔道が暴力とパワハラ騒動で揺れている。世界という大舞台で、メダルは監督や指導者にもノルマ。重いプレッシャーだ。でも、だからといって暴力やパワハラを肯定はできない。

 私の師の大山倍達は、牛を小川に連れて行く牧童のことわざを引用し、「空手がどんなものかを教えるのは館長である私の役目。だが、強くなるかならないかは君たち自身の問題だよ」と、よく弟子を叱咤(しった)した。私も引退後は指導することが多くなったが基本姿勢は米国大統領リンカーンの言葉にあやかって「私は暴力や暴言で教えを受けたくはない。だから暴力や暴言で指導はしたくない」である。

 一流のアスリートには読書家が多い。きっとプレッシャーの逃げ道が本にあるのだろう。大山倍達は吉川英治の「宮本武蔵」を愛読。道場訓の監修もお願いしたくらいで、いつも「武蔵はね…」が説法だった。練習は“稽古”で稽古は“修行”。メンタル面も武蔵の自戒「独行道」で弟子のやる気を鼓舞していた。

 あの大山倍達も世界大会を前に「外国勢に負けたら腹を切れ」がゲキだった。今なら立派なパワハラだが、それも随分昔の話。私は剣豪本や格言には暴力やパワハラでは及ばない大きな力があると思っている。 (格闘技評論家)

 

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