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2013年2月3日(日)付

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生活保護削減―歯止めはどこなのか

憲法にうたわれた「最低限度の生活」が際限なく切り下げられるのではないか。そんな懸念さえ抱く。政府が新年度から、生活保護予算を削減する方針を決めた。生活費にあたる「生活扶[記事全文]

病気と人間―学校でヒトの科学を

生命科学の進歩で、ヒトや病気について多くのことがわかる時代になった。それを役立て、よりよく生きるには、生物としてのヒトをきちんと理解することが欠かせない。学校で、正確な[記事全文]

生活保護削減―歯止めはどこなのか

 憲法にうたわれた「最低限度の生活」が際限なく切り下げられるのではないか。そんな懸念さえ抱く。

 政府が新年度から、生活保護予算を削減する方針を決めた。生活費にあたる「生活扶助」を3年かけて、実質的に6・5%減らす。

 今の制度が始まった1950年以来、引き下げは03年度(0・9%減)と04年度(0・2%減)の2回だけ。今回の引き下げ幅はたいへん大きい。

 削減する670億円のうち580億円は、08年から11年までの物価下落(デフレ)分を反映させたという。

 奇妙な話である。

 厚生労働省は、一般の低所得世帯の消費実態と比べ、生活扶助が多すぎたり少なすぎたりしないよう、検証したはずだ。

 審議会の専門家が公開の会合を13回重ね、「生活扶助は子どものいる夫婦世帯では高め、高齢単身世帯は低め」といった結果を公表したではないか。

 この通りに基準を見直して減る予算は90億円。ところが、その6倍以上の金額がデフレを理由に削減される。

 生活保護費を適正な水準にする必要はある。だが、そもそも年金とは違い、生活保護には物価の変動を反映させるルールはない。デフレ要因は、「給付水準の原則1割カット」を掲げる自民党の意向で、急きょ持ち出された理屈にすぎない。

 まず専門家による実証的な検討をすべきだ。それなしに、政治判断だけで生活保護に切り込むのは拙速である。一方で、高齢者医療の窓口負担軽減には1900億円も使うのだ。

 安倍政権の目標である2%の物価上昇が実現したら、生活保護は引き上げるのだろうか。

 今回、明らかになったのは、生活保護の引き下げに明確な歯止めが存在しないことだ。

 経済が成長し、保護水準が引き上げられてきた時代には、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」とは何かを、考え抜く必要性は薄かったかもしれない。

 生活保護の歴史で確認できる「最低限度の生活」の定義は、戦争の傷痕が残るころの「日常生活で寝起きが可能な程度の栄養所要量を充足すること」だけとの研究もある。

 しかし、時代は変わった。

 同じ社会に生きる人すべてに保障すべき「最低限度の生活」とは何か――。

 高齢化と雇用の不安定化が進む日本で、私たちが安心して暮らすために、この問いの重みは増している。

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病気と人間―学校でヒトの科学を

 生命科学の進歩で、ヒトや病気について多くのことがわかる時代になった。それを役立て、よりよく生きるには、生物としてのヒトをきちんと理解することが欠かせない。

 学校で、正確な知識を身につけるようにすべきだ。

 日本の理科の教科書には大きな特徴がある。生物としてのヒトはあまり登場しないのだ。たとえば生物の発生はもっぱら、カエルやウニで説明される。

 欧米やアジア諸国の教科書では、ヒトを素材にしてさまざまな現象を説明し、妊娠や出産、がんや感染症など、ヒトをテーマにした内容が豊富だ。その方が子どもたちも興味を持つし、生きるために必要だからだ。

 たとえば、台湾の高校の応用生物学の教科書を見ると、農業、食品、医薬、環境の4章に分かれ、遺伝子組み換え食品、遺伝子の異常によって起きる病気から体外受精、臓器移植までを取りあげている。

 日本では健康について教えるのは保健体育だが、生命科学の時代となったいま、理科の授業で教えるべきことは多い。

 さまざまな場で、ヒトを理解する必要性がいわれている。

 お母さんの血液でごく簡単に胎児の異常を調べられる、新型の出生前診断技術が登場した。現在、診断する対象はダウン症だが、今後さらにいろいろなことがわかるようになる。

 程度の差こそあれ、だれもが遺伝子の異常を持って生まれてくる。異常と正常の間はあいまいだ。検査結果を理解するにはそんな知識も不可欠だ。

 生殖補助医療が進み、高齢になって妊娠・出産を望む人が増えている。そこで生物としてのヒトは40代になれば妊娠しにくくなり、遺伝子の異常も増えることを知っておけば、納得して人生設計を考えられるだろう。

 患者数が多く、国が重点的に対策を行う病気は従来、がん、脳卒中、心臓病、糖尿病だったが、新たに精神疾患が加わり、5疾病となった。

 今春から都道府県は精神疾患の医療態勢整備に取り組むが、この病気で何より重要なのは、正しい理解だと、専門家は指摘している。だれでもなる可能性があり、生活習慣や身体の病気と深いかかわりがあることを知れば、予防に役立つし、偏見にとらわれず患者と接することもできる。

 人とモノのグローバル化が進むなか、国境を越えて広がるウイルスなどによる感染症の脅威も忘れるわけにはいかない。

 新しい時代にふさわしい、教え方、学び方が必要だ。

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