2013年02月02日

F1マシンのつくり方 1: コンセプト設計の段階

How to make an F1 car, Part 1: the conceptual design stage

F1マシンのつくり方 1: コンセプト設計の段階

F1シーズンが終わると、世間はおそらくチームは当然数週間の休暇をとると思うだろう。しかし、それは全くの見当はずれである。

昨年ブラジルでの最後のレースのずっと前から、全チームは2013年に使うマシンを開発している。すでに集中的に行われている開発作業は、それまでのシーズンが終わるや、集中度がさらに増す。

2月初旬に新しいF1マシンがスペインのトラックで走るまでの、長く、複雑で、込み入ったプロセスについて解説する。

まず最初に取り上げるのは、新マシンの設計における最初の段階である。皆さんは驚くかもしれないが、昨年、マシンがトラックで走り始めるとすぐに、次年度のマシンの開発作業が始まっているのだ。

弱点の解消
チームが新マシンのテストを始めると、彼らはシーズン後半に「B」バージョンを導入しても解消できない弱点を特定しようとする。つまり、大きな弱点を探すのだ。

シーズン中に調整して改善できる部分を特定しなければならないが、変更できないものの次のマシンでは変えたい大きな部分も特定しなければならない。

エンジニアは、ギアボックスの底部がもう少し小さければ、もっとよいディフューザーを設計してリアのエアロダイナミクスを改善できることに気づくかもしれない。

彼は、キール部分(ドライバーの脚の下にあるシャシー)がもっと前あるいは後ろにあれば、あるいはもっと高ければ、あるいはもっと狭ければ、エアロダイナミクスを改善できることに気づくかもしれない。
2007年02月13日
F1:ゼロ・キール、V キール、シングル・キール、ツイン・キール 写真画像

だから、レッドッブルの技術最高責任者のエイドリアン・ニューウィなどがテストで持ち歩いているノートには、問題がたくさん書かれている。

このプロセスは、翌シーズンに参戦する初期マシン・パッケージのまさにスタートである。

新マシンが地面に置かれるとすぐに、そのマシンのアップデートのために「今やること」リストができ、「来年すること」リストづくりが始まる。

このふたつのリストは、時間の経過とともに項目が追加される。そして7月の初めまでに、「来年」リストは新マシンの目標をまとめた仕様シートに編集される。

つまり、この段階ではコンセプトを明確にすることが重要なのだ。詳細な空力学的性能の作業は、もっとあとから始まる。

コンセプトワークは非常に重要である。というのも解決するのに時間がかかるため、1月に新マシンを組み立て始めるときに正しいコンセプトを持つ必要がある。

ここで取り上げているマシンの部分は、基本的なサスペンション設計、燃料タンクのサイズ、ギアボックスのサイズと設計、KERSのサイズと位置などである。

空力学的パッケージ、サスペンションのジオメトリ、ダンパーのパッケージングなどはすべて、その大きなパッケージング・コンセプトから生まれる。

決断を下すと、7月上旬頃にチームの一定比率のスタッフに新マシンを担当させ、計画をスタートさせる。

その後、彼らがパッケージをエアロダイナミシストに渡すと、エアロダイナミシストはそのパッケージ周囲のボディワーク最適化を始めることができる。

2013年については、これはそれほど大仕事ではない。規約はほぼ安定しているので、作業としては細かい変更だけである。しかしそれでも、大きな決断を下さなくてはならない。

その一例は、基本的なサスペンション・レイアウトだろう。昨年フェラーリは空力学的理由から、ユニークにもフロントにプルロッド・サスペンションを採用した。

今年は2、3のチームがこれを試すのではないだろうか。しかしシーズン中に変更することはできない。これを変更するにはダンパーとトーション・バーをシャシーの下から上に移動しなければならないので、パッケージの問題になり、マシンの最初のレイアウトで決めなければならないからだ。
2012年03月31日
プッシュロッドとプルロッド・サスペンション解説とフェラーリF2012の問題点

もうひとつの例は、ウィリアムズの超小型のギアボックス製造の模倣だろう。

チームは、こういったことを検討し、搭載した場合としない場合で大きなアドバンテージがあるかどうかを分析するだろう。

風洞

空力学でレースに勝つ
複雑になるのは、マシンのこれら基本的機械パーツが、空力学的細部と連携しはじめるときである。

例えば、ディフューザーを見て、ギアボックスとどう組わせるかを考える。これは空力学的パフォーマンスにとって非常に重要な部分である。昨年のレッドブルを見れば、サイドポッドから空気を通すダクトが、ディフューザーの中心部に延びている。

そこで、エアロダイナミシストは、マシン全体のレイアウトの担当者のところに行って「こうすれば今よりもマシンをもっとよくすることができるが、機械的にパッケージすることは可能かな?」と尋ねるだろう。

空力学はラップタイムを短縮できる。機械面は、一般的に裏切ることしかしない。レースに負ける。レースに勝つのは空力学的パッケージである。

このふたつは補い合うが、ギアボックス設計、サスペンション、キールなどの部品のパッケージングは、優れた空力学を生み出すための基本であり、開発の余地を残してくれる。しかし、リードタイム(製造期間)が最も長いため、まずギアボックスやシャシーなどから着手しなければならない。

最高のチームでさえ、シャシーの製造を始めてから完成するまでに12週間かかる。

最初のテストは2月初旬に行われるため、1月中にマシンを完成させたい。そんためには、9月中旬にシャシーとギアボックスの製造を始めなくてはならない。

つまり同時に前後に行ったり来たりすることになる。最初のテストからさかのぼり、マシンの最初の提案から前に進むのだ。

チームが新しいシャシーを製造すると、テストの前にクラッシュ・テストを受けなければならない。

この手続きを容易にするため、チームは並行プログラムを立ち上げる。最初のシャシーは衝撃テストに使用し、2台目のシャシーを組み立て始める。

同じように、最初のテストに1基だけのギアボックスで臨むことはできないので、トラブルに備えて2、3基用意しなければならない。

だからこそ、こういった部品は最初に製造しなければならないのだ。これらはマシンの背骨である。これらを時間通りに用意できなければトラブルになる。

また、その設計がシーズン後半に重要な影響を持つこともある。

その実例は二層ディフューザーが圧勝した2009年である。最初からマシンにその設計を組み込んでいたのは3チームのみだった。二層ディフューザーが合法とされたあと、これを組み込む必要があった残るチームのうち、ギアボックス・パッケージが二層ディフューザーとうまく融合したチームもあれば、そうではないチームもあった。

フェラーリは、ギアボックスのせいで二層ディフューザーを最適化できなかったチームのひとつだった。

彼らは、全く新しいギアボックスの製造を検討したが、製造する価値はないと判断した。というのも、用意できる頃にはシーズンがかなり進んでおり、チャンピオンシップで巻き返せないほど後退している可能性があったからだ。そのため、彼らのシーズンは4月あるいは5月の時点で、事実上終わっていた。

これは、最初から基本的設計がいかに重要になりうるかを示している。

-Source: bbc.co.uk


markzu at 19:42│Comments(0)F1技術解説 | F1特集

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