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「田車除染」の効果確認 セシウム、白米10ベクレル以下

田んぼを撹拌し、泥水ごとセシウムを流した実験=昨年4月、福島県飯舘村佐須

 福島県飯舘村で、地元農家と研究者らのNPOが昨年、除草機の「田車」を使って除染した田んぼで稲を試験栽培した結果、玄米1キログラム当たりの放射性セシウムは40ベクレル以下、白米では10ベクレル以下となり、国の食品の安全基準100ベクレルを大きく下回った。研究者らは「田車方式が有効と確かめられた」と話している。

<土を撹拌し排出>

 稲の試験栽培を行ったのは、飯舘村佐須の農家菅野宗夫さん(61)と、村の除染や生業再生を支援するNPO法人「ふくしま再生の会」(田尾陽一理事長、200人)。
 田車実験は昨年4月から菅野さんの田んぼ13アールで実施。手押し式、機械式の田車を用い、土を撹拌(かくはん)し泥水ごとセシウムを排出した。
 手押し式の撹拌とテニスコート用ブラシで水をかき出す人力での排出を1回と3回行った区画、機械式の撹拌と自然排水を1回と2回行った区画に分け、各区画の土壌を測定した結果、最大81%の除染効果を得た。
 試験栽培は、独立行政法人の農業・食品産業技術総合研究機構(茨城県つくば市)と研究協定を結び、6月に苗が植えられた。

<カリウムも有効>

 セシウム吸収抑制効果があるとされるカリウムの効果も検証するため、各区画で散布した場合としない場合も比較した。
 稲は、登熟期の9月半ばと稲刈り期の10月半ばに各区画でサンプルを採取し、東京大農学部で分析。その結果、もみは採取時期と区画を問わず、20〜60ベクレルと基準値を下回った。
 玄米はいずれも40ベクレル以下。このうちカリウムを散布した稲の玄米はすべて25ベクレル以下で効果が確かめられた。特に手押し式の除染と組み合わせた場合では10ベクレル前後だった。
 白米にすると、玄米の半分以下になり、どの区画も10ベクレルを下回った。廃棄物となるもみ殻、わらも、各区画で100ベクレル以下だった。
 田尾さんは「土壌から植物にセシウムが移行する量の係数は10%といわれたが、結果は0.2〜0.3%だった。田車方式の除染効果は確か。手法を改善しながら今春、線量の異なる地域でも実験できるよう、また提案したい」と話している。
 菅野さんは「国が行う生活圏除染だけでなく、住民の生業再生こそが帰村への本来の条件だ。実験の結果を、希望と受け止めたい」と語った。


2013年01月31日木曜日


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