体罰問題:続・私の視点/4 ラグビー神戸製鋼GM・平尾誠二さん

毎日新聞 2013年02月01日 東京朝刊

ラグビー神戸製鋼GMの平尾誠二さん
ラグビー神戸製鋼GMの平尾誠二さん

 ◇萎縮が視野狭める−−平尾誠二さん(50)

 体罰はダメと言われながらも、今の時代も昔ながらの指導があるということは聞いていた。精神的な面での特効薬になっていたのかもしれない。しかし失敗する度にきつく怒られると、大事な局面に対峙(たいじ)した時「これやったら怒られるのでは」という余計な判断基準が入り、選択肢を狭めてしまう。

 本来はチームにとって最大の利益になるプレーをどう創出するかが判断基準でなければいけないのだが、「失敗したら、俺の責任になるのでは」という迷いが少しでも入り込んだら、瞬時の判断力を求められるラグビーのような競技では致命的。経験上、失敗を恐れて萎縮してしまうと、視野が狭くなり発想が生まれず、創造的なプレーにいきつかない。

 体罰はいけないが、きつく叱って効果があるのは、できることに真剣に取り組まないため、チームに迷惑をかける選手の場合。「自分を戒めることができる人間じゃないと、伸びないよ」と気づかせることは重要だ。

 今は体罰をしていなくても、少し厳しく叱るだけでパワハラと言われてしまう。だからといって、ただでさえ人間関係が希薄になってきて、乾燥し始めている中で、ここから先は近づいちゃダメとか、こういう言葉を発してはダメとか形だけ規制してしまうと、その関係性はそっけないものになる。そうなれば指導者としての面白みはなくなり、なろうと思う人間はいなくなるだろう。

 ルールに縛られるのではなく、ルールを超える人間関係を指導者と選手との間で、いかに大局観を持って構築していくか。今の選手は素直な子が多いが、核家族化した社会で社会性が育ちにくい環境になってきている。だからこそ私はデジタルではなくアナログのコミュニケーションを大切にしている。メールより電話、電話より直接対話した方が「熱」と「本気」は伝わる。それが信頼関係を築く第一歩になると信じている。【聞き手・高橋秀明】=つづく

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 ■人物略歴

 ◇ひらお・せいじ

 京都・伏見工高で全国大会初優勝、同志社大で大学選手権3連覇。神戸製鋼では7年連続日本一に貢献。日本代表監督として99年の第4回ワールドカップを指揮。

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